特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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たまにはマジメに行動。


俺、艦隊行動に参加します。

 スプリング・フェスティバルから一夜明け、鎮守府には元の軍事施設としての緊張が戻りつつあった。そんな夜明け前の鎮守府を俺はふらふらと歩く、片手に菊月の愛刀を握りしめて。こうして鎮守府内をぶらついていたらこのこんがらがった思考もスッキリするのかと思ったが、そうでもないらしく未だにもやもやしている。菊月が今どこにいるのか、長月が今どこにいるのか、そしてなぜいなくなったのか、わからないことだらけでイライラする。

 

「あいつら、どこに行ったんだ?仲間見捨てていくような薄情な奴らじゃないはずだ」

 

――ええ、そこが解せません。今回は寝床と食事を提供してくれているお礼もかねて艦隊行動に参加してみましょう――

 

 お礼もかねて、と綾波は言っているが、どちらかといえば菊月を探すついでという感じがする。だが、いずれは艦隊行動を共にする仲間も増えてくる以上、こうして誰かと組んだ時の動き方も覚えておかないといけない。そういう意味でも今回の艦隊行動参加は意味があるのだろう。だが、菊月と会える保証がない以上、艦隊行動を覚えることに重点を置いたほうがいいのだろう。

 朝日が昇り、起床ラッパが鳴り、鎮守府が目覚める。起床ラッパになじみのない陽炎と不知火を叩き起こして食堂へと向かい、シリアルを手に取り席を確保する。すると、大井と北上が開いている席を探していたのか、右往左往していたので片手を挙げて呼び、空いている席に座らせる。ハイパーズはどうやら今日はトーストを選んだらしく、ほかにはミニサラダがある。

 

「綾波、こっち来てから連チャンで遊んでばっかりいるけどさ。前線基地ってそんなにハードな生活なの?」

「楽そうに見えて、結構ハードですよ。自給自足ですし、まだまだ不便な点はいっぱいありますし」

「自給自足ってのは大変でしょうね、せめて天気さえわかればその日どんなことをすればいいのかがわかるんでしょうけど。気象電探作ったらどうですか?」

 

 いや、大井っち。そう簡単に言うなよ……開発といい建造といい、完全にランダムでしか出てこないものを期待しろと?そんなことをしていたらいったいいつ電探ができるのやら。だが、大井っちの言う通り、天気がわかればその日の行動も決めやすくなる。その日が快晴ならば、お布団を干すこともできるし、雨ならば基地の中でゴロゴロ過ごすことになる。だが、電探がホイホイ開発できる保証はないため、俺は若干言葉を濁して返す。

 

「検討してみます」

「天気わかんないと大変だよ?電探優先して開発するのもありじゃない?」

「確かに、北上さんの言う通りですね。天気に限らず、基地の目となる電探は重要な設備でしょう」

 

 その後も、ハイパーズに電探の重要性を説かれ、どうやって電探を狙って開発しようかという問題を増やして朝食が終わる。そして今回の目的である艦隊行動参加を果たすため、執務室に向かう。理由はもちろん、今回の出撃編成に加えてもらうためだ。だが、部外者である俺たちをそう簡単に艦隊編成に加えてくれるとは思えない。だが、何もしないでゴロゴロ過ごすのはどうも性に合わない。ヒマなのは嫌いだ。

 

「出撃したい?なんでまた……」

「前線基地では、出撃よりも遠征の指示や畑仕事が多かったため、私自身が出撃したことがないんです。そこで、連度の高い艦隊に随伴艦として出撃することで経験を積みたいんです」

「そうか……綾波自身は出撃したことがないのか。ならば、いい経験になるだろう」

 

 なんとか長門秘書艦の許可ももらい、艦隊編成に参加させてもらうことになった俺。早速出撃を、と思い、あることを思い出す。

 ………俺の使える艤装あんの?




次回、初出撃。

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