特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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だいたい射的でムキになって金が消える俺。


番外編:スプリングフェスティバル・後編

「お嬢ちゃん、射的やっていかない?」

「いいんですか?片っ端から狙い撃ちますよ?」

 

 射的しようと屋台に行ったところ、屋台のおっさんに呼び止められたため、彼に呼ばれるままに屋台へ向かう。とりあえず、10回やるかと10回分の代金を払ったところ、「お嬢ちゃんには特別に三倍の量で遊ばせてやるよ」と上から目線に三倍の量のコルクを渡される。おそらくは「こんな小娘ごときにうちの景品が落とせるわけないない」と高をくくっているのだろう。………頭にきました。こうなったら、目の前の景品全部かっさらっていかんと俺の気が済まん。

 

――綾波もちょっと頭にきました、全部狙い撃っていただいていきましょう――

 

「そうね、大物を狙っていきましょ」

 

 「ねぇ、今私のセリフパクった?」と隣で射的をやっていた蒼龍が聞いてきたが無視し、俺は一段目の右端から順々に狙い撃ち、小物の景品で肩慣らしする。よし、準備運動はこんなもんか。そろそろデカ物を狙い撃ってかっさらう準備をしておこう。陽炎にあのクマさんぬいぐるみをプレゼントしたら喜ぶだろうか、などと考えつつ、俺はクマさんぬいぐるみを狙い撃つ。今まで何十、何百というコルクの雨に耐え続けてきたであろうクマさんは、真正面から飛んできた一発のコルク弾の前にあっけなく倒れ去ったのだが、俺はその結果を見届けることなくクマさんから向かって右のパンダのぬいぐるみと左のホワイトタイガーのぬいぐるみを間髪入れずに狙い撃つ。結果はもちろん一撃必中、当然である。

 その後も屋台のおっさんも、重くて安定感のあるものを並べたり的を小さくして狙いにくくしたりとあの手この手でコルクを浪費させようとするのだが、そのどれもが空振りに終わり、並べた景品を置いたそばから狙い撃たれてかっさらわれていき、だんだん苛立ってきているのがわかる。だが、やめるつもりはない。残弾はあと20発、まだまだ狙える。すると、とうとうネタが切れたのか、これ以上狙い撃たれたくないからか並んでいる大物の景品が全部軍艦のプラモになっていた。その中には、駆逐艦『綾波』のものもある。………あれだけは絶対にほしい、たとえ全弾使い果たしてでも。

 

「お嬢ちゃん、うちの大物はもうこれで全部だ。三倍なんかにするんじゃなかったよ、ったく……」

「それは、軽々しく三倍にした過去の自分を恨むことです」

 

 大物の景品を全部全部かっさらわれてかわいそうとは思わなくもないが、同情してやる気は毛頭ない。全部狙い撃って、かっさらうだけだ。そしてその通りに狙い撃ち、片っ端からかっさらっていった。あー、楽しかった。

 そして、getした大量の景品を客室に置きに戻り、そこで合流した陽炎と不知火とともに、金魚すくいやヨーヨー釣り、スーパーボールすくいにコリントゲームと、様々なゲームを楽しんで回った。ちなみに、大量の景品を抱えて客室に戻ると、同じように的屋のおっさんを泣かせて大量の景品をかっさらってきた陽炎と不知火と出会い、互いが互いの顔を見つめあって唖然とした表情を浮かべていたのは別のお話。




その後、景品は全部三水戦の手で前線基地へ輸送されました。

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