特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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スプリング・フェスティバル開幕


番外編:スプリングフェスティバル・中編

 如月に菊月と長月の捜索を頼まれ、菊月の半身ともいえる軍刀を託された俺は、如月にそのふたりの話を聞いてみることにした。別に、聞いたからといってどうこうなるわけではない。単に興味がわいたからだ。如月たちから見て、菊月と長月がどんな子なのか、どんな風にみられているのか、少し気になったからだ。

 

「なぁ、如月。如月たちから見て、菊月と長月ってどんな子なんだ?」

 

 立て掛けた軍刀のうちの短いほうを再び手に取り、両手で握ってその感触を確かめながら如月に質問をぶつける。どんな子かわからなければ、いくら見つけたところで本人かどうかの確証が取れず、結局見捨てることになる。そうしないためにも、少しでもどんな子かを知っておかなければならない。俺だって、それなりに付き合いがあればわかるのだろうが、今回探してほしいと頼まれた子は一度も会ったことのない睦月型駆逐艦。特徴もわからねば、探しようも見つけようもない。

 

「菊月ちゃんも長月ちゃんも、私たちを守りたい一心で我流で剣術学んで、ふたりで強くなって……ふたりの共通点として、左手親指と人差し指の間に小さく裂傷痕があるの。探すときは、それを目印にするといいわ」

 

 なるほど、左手の裂傷痕が目印か。だが、どんな傷だ?と考えていると、如月が「こんな傷よ、これを目印に探して」と左手を掲げて見せる。おそらく、左手の裂傷痕はこの鎮守府に所属する睦月型共通の傷なのだろう。そんなこんなで如月と駄弁っていると、いつの間にか夕方になっていることに気付く。時刻は17:00、スプリング・フェスティバルがもうすぐ始まるはずだ。菊月のことも大事だが、今は楽しむことのほうが大事だ。

 

――戦い続けていては、身も心も擦り切れます。このあたりで、少し休んでもいいでしょう――

 

 確かに、綾波の言う通り、戦い続けていては身も心も擦り切れて壊れてしまうだろう。人も兵器も、時には休ませないと壊れてしまう。つかの間の休息(オフ)だ、目一杯楽しませてもらおう。俺はそう思い、財布とスマホを片手に急ピッチで建てたとは思えない屋台巡りを始める。おっ、わた飴。買っていこう。そうしてそれからりんご飴にたい焼き、大判焼きにベビーカステラと、ふと気が付けば、あれこれ買いすぎて両手が塞がってしまっていた。もうそろそろ、焼きそばとかたこ焼きとかそういうのを買わんといかんな。一度、このおやつは客室に置いていこう。

 ガッツリ買いだめたおやつを置いていき、焼きそばとたこ焼きを買って、たこ焼き片手に焼きそばを啜りながらあちこちを巡る。射的、くじ引き、金魚すくい。やりたいことはいっぱいある。どれ、ひとつずつやっていくか。そう決めた俺は、残った最後のたこ焼きを放り込み、空のパック片手に射的の屋台へと向かう。

 商品片っ端から撃ち落とすけどいいよね?答えは聞いてないけど。




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