睦月型とひと騒動あった次の日、俺は鎮守府が騒がしいことに気付いた。どうやら、今夜何かの催し物が開催されるらしく、鎮守府全体が色めきだっているのがわかる。何が起こるんだ?夏にはまだ早いが……と考えていると、吹雪から「
「スプリング・フェスティバルですか、いったい何をするんでしょう?」
「お祭りって、だいたいやってることはおんなじだし、スマホあたりでググったら出てくるんじゃないか?」
「ググれって、そんな無責任な……」
陽炎はぶつぶつと文句を言いつつ、スマホで何やら検索している。やはり気になるんだろう、スマホを片手に握っている陽炎の表情は真剣そのものである。そして数分後、ググってようやく満足したのか、陽炎は片手に握っていたスマホを手放してベッドに転がる。現在時刻、10:00。お昼にはまだ早いし、かといって何もやることはない。ヒマなんだよなぁ、何にもやることがない時間っていうのは。時折睦月たちが「娯楽室行こう」と誘ってくれるのだが、イマイチ気が乗らず、断っている。
気がかりで仕方がないのだ、九月コンビと綾波のことが。その気がかりが解消できない限り、今夜のスプリング・フェスティバルもきっと楽しめないだろう。だが、今年のスプリングフェスティバルは今日限り、明日にはもう終わっているのだ。とりあえず、お祭りを楽しむことを今日は考えよう。菊月達のことはそのあとだ。そう俺が決心すると、そのタイミングを計ったかのようにして客室のドアがノックされる。誰だ?
「私よ、如月。入っていいかしら?」
「鍵はかかってない、いつでもどうぞ」
俺のその返答に、如月がドアを開けて客室に入ってくる。その両手に二振りの軍刀を抱えて。おそらくは、菊月の部屋から持ち出したものだろうが、なぜ菊月の部屋から持ち出した?あのまま置いておけば、奪われる心配もなかっただろうに……と考えていると、如月が俺に頼んでくる。
「私達は軍に所属する一兵卒である以上、自由な行動はできないわ。故に、そのしがらみに囚われないあなたに頼みたいの。もし、どこかで菊月ちゃんを見つけたら、私達の代わりに渡してほしいの」
「………わかった、必ず菊月に届けよう」
俺は如月から軍刀を受け取り、部屋の片隅に立てかける。前線基地行きの艦隊に荷物と共に預けてもいいのだろうが、これは如月……いや、睦月型のみんなから託された願いだ。故に、自分で持っていきたい。わがままと言われればそれまでだろうが、このわがままだけは貫かせてもらう。
「菊月ちゃんのこと、お願い」
「ああ」
俺は如月に菊月と長月を頼まれた、必ず見つけて見せる、「ソロモンの鬼神」の名に懸けても。
如月「菊月ちゃんのこと、お願い」