陽炎と不知火にぶつくさ文句を言われ、やっとお昼をちょっと過ぎたころに解放されて昼食にありつけた。どうやらふたりは、置いていかれたことよりも黙って行かれたことに不満を感じていたらしく、そこについてぶつくさ文句をぶつけてきていた。確かに、黙って行ったことは悪いとは思っているけど、どうしてもふたりきりで話し合いたいことがあったんだから仕方ないだろう。なんて言っても、今のふたりには分かってくれそうにもないが。
「そういえば、この鎮守府全然見て回ってないよな」
――そういえば、この鎮守府で知っているところといえば埠頭と客室と入渠施設、そして執務室に資料室に食堂くらいですね。艦娘寮は行ってないので、ここに所属している艦娘に会える可能性はありますね――
よし、今日の予定はこの鎮守府の探検に決まりだ。まずは艦娘寮に行ってここにいる艦娘に会ってみよう。もしかすると、ここに菊月と長月、綾波が所属していた可能性もあり、そのいなくなった部屋からいなくなった理由や足跡が辿れるかもしれない。もっとも、可能性の観点からでしかなく、ここに所属していない可能性もある。だが、艦娘寮に行って、何か得られるかもしれないことを考えると、行ってみるのは悪くないのかもしれない。
そうして俺は艦娘寮に行き、まずは綾波の部屋を探す。数分ほどして綾波の部屋は見つかり、長門に借りた合鍵を使って部屋に入る。中は平々凡々としていて、特に個性を感じさせるようなものは見つからない。日記でも見つかれば、何かわかるのだろうが、そういう類は見つからなかった。日記つけてそうな感じはしたんだが、意外とものぐさなんだろうか、とか考えていると、急に片頭痛が襲ってくる、立っていられない。
――な、なんですか……急に頭痛が……それに、綾波の知らないはずの記憶が……――
「ここで過ごした記憶か?だが、そんな覚えはないぞ……」
もう立っていることもできない、とにかく寝よう。そう思った俺は、手をついていたベッドにどさりと寝転がり、大の字になる。………なんだったんだ、今のビジョンは……俺の知らないはずの記憶、俺の知らないはずの艦娘たち。このビジョンはいったい……と考えていると、突然綾波が身体の制御権を奪い返してあちこちを探し回る。急に何をしてんだ、コイツ。
「なんだか、ちょっとだけ思い出したんです。確か日記は……ありました、ここです」
急に探し回ったと思ったら、日記を探していたのか。ほかには何かないのか?
「アルバムでもあれば、もっと足跡をたどれると思うのですが……ああ、ありました」
日記に続いて、次にアルバムを回収した。日記の最後は「かゆうま」とか書いてあるんだろうか、と考えつつまずはアルバムのページをめくる。そこには綾波と仲間たちが楽しそうな笑みを浮かべて四角く切り取られた写真の中に納められている。アルバムには特に他愛もない写真ばかりしかなかったため、日記になら何かあるのだろうと考えていると、いつの間にか18:00を過ぎていたようだ。俺、どんだけ綾波の部屋にいたんだ?
「とりあえず、夕飯を済ませてお風呂に入って、明日に備えましょう」
――それもそうだな、明日からも頑張ろう――
俺はそう言い、夕食を済ませてお風呂に入り、明日の予定を考えつつ眠りにつく。明日は大本営に赴くべきか、鎮守府の探検を続けるべきか、そこが重要だ。
妙高に眼帯つけたらカッコいいかなぁ、とか思う今日この頃。