本土行きたい、きっかけは俺のそんなセリフだった。
「本土に?何しに行くの?」
「この基地のことで、何か問題でも?」
それにいち早く食いついてきたのは、陽炎と不知火だ。俺が本土へ行くと聞いて、何をしに行くのかが気になったのだろう。陽炎は俺が本土へ行く理由が気になり、不知火は前線基地に何か問題でもあったのかと聞いてくる。もともと、この前線基地は俺が不当に占拠し、独自に占拠している状態なので、本土側としては反抗しうる危険因子を野放しにしているような危険な状態である。本土側としては、見過ごすわけにもいかないだろう。
ここを正式に俺たちのものにするのも重要な課題だが、個人的にもっと気になることもある。それは、九月コンビと綾波の失踪理由だ。彼女たちが消えた理由を、なんとしても知りたい。消滅なら消滅で、脱走なら脱走で、それなりに理由があるはずだ。理由のない悪意はあったとしても、理由のない脱走はないはずだ。なぜいなくなったのか、それが知りたい。
「本土か……行きたいなぁ」
「せっかくです、ここの独立運営を許可してもらうついでに、本土を旅行してみたいです」
陽炎も不知火も、おそらくはただ自分が本土に行きたいだけなのだろう。陽炎と不知火の個人的な事情を差し引いても、俺は何としても本土に行きたい、いや、行かねばならない。ここを円滑に運営するためには、本土側の承認が必要になる。独立した鎮守府としての運営権確保、鎮守府諸島の要塞化、九月コンビと綾波の捜索、やることは山ほどある。個人的事情から今後にかかわる重要なことまで。
指揮系統を担う鎮守府側の妖精さんの説得は成功した、あとは大本営からどうやってここを使う許可をもらうかだ。正攻法で攻めたところで、一蹴されるのがオチだろう。今までの功績といえば、本土側の鎮守府の艦娘の救援とロリコン提督の悪事を炙り出したことくらいで、他にめぼしい戦果を挙げたとは言い難い。だが、ここでの生活サイクルを築き上げるためにも、なんとしてもここの運営権を確保せねばならない。
――あまり無理はしないでくださいね――
「わかってる、俺だってそうそう無理はしたくない」
「綾波さん、急に誰と?」
「いや、気にしないでくれ」と言うと、不知火はそれ以上追及せずに黙っている。根掘り葉掘り聞いてこない分、彼女との付き合いは気が楽でいい。本土へ行ったら、不知火とデートしつついろいろと娯楽品を買い漁ってみるのもいいだろう。そう思った俺は、不知火を本土行きへ誘ってみる。
「不知火、明日からしばらく、本土のほうへ行かない?」
ジオ・フロントもどきでも造ってやろうかと考えてる今日この頃。