特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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(・ワ・)「あやなみさんのおやくにたつのです」


俺、艦娘を助けます。

「艦娘の死体を埋葬した次の日に生きた艦娘を助けることになるとは、RPGでもこんな立て続けにイベントは起こらんぞ」

 

 明石を助けて艦娘寮の一室に寝かせ、漂流していたせいで胃腸も弱ってるだろうと思い、ぶつくさ文句を言いつつおかゆを作る。梅干しや玉子でもあれば、多少は彩りもよくなったのだろうが、あいにくとそんな贅沢品はここにはない。ないものはないで、我慢してもらおう。事情を話せば、明石も納得してくれるはずだ。

 お盆にできたてのおかゆの入った鍋を乗せ、明石を寝かせた部屋へと運ぶ。部屋を出ていくときは寝ていたが、まだ寝ているのか、もう起きているのかはわからないが、何も食べずにいては身体も弱ってしまうだろう。一応ノックしてから入り、おかゆの入った鍋を乗せたお盆を手近なテーブルに置く。どうやら、もう起きていたらしい。

 

「ところで、ここがあなたの住んでいるところ?」

「ええ、広くていいところですよ」

 

 続く明石のずいぶん広いお屋敷なのね、という目一杯の皮肉をスルーし、木製の茶碗におかゆをよそっておなじく木製のレンゲを添えて渡そうとして……思いとどまる。長い間漂流していたのなら、あまり負荷をかけさせるわけにはいかないだろう。それに、個人的にやってみたかったこともある。

 

「はい、明石さん。あーん」

 

 まさか、こんな小娘に「あーん」されるとは思ってもみなかったのだろう。どこか釈然としない表情で「あーん……」と返す。俺はそんな反応が面白く、その開いた口にぐいとレンゲをねじ込む。すると、唐突にレンゲをねじ込まれたからか、おかゆが予想以上に熱かったからか、目を白黒させている。その後、何とかおかゆを飲み込み、あからさまに不愉快そうな表情でぶーたれる。

 

「まったく、私も艦娘やってきてそれなりに長いことなるけど、こんな屈辱初めてよ。駆逐艦に「あーん」されるなんて、工作艦として恥ずかしいわ」

 

 その後もひとりぶつくさ文句を言い、あとは自分で食べると言って俺の手元から茶碗とレンゲをひったくる。愚痴とともに時々おかゆをこぼしつつ、なんとか完食すると、今度は眠気が襲ってきたのか、あくびをして眠りについてしまう。今までほとんど寝てなかったのか、安心して緊張の糸が緩んだのかはわからないが、とにかく寝てくれたのは確かだ。

 寝ている明石の部屋から出て、俺はスマホ片手に工廠ドックへと向かう。スマホを持って行った理由はふたつ、ひとつはこのスマホをベースにタブレット端末を作ってほしいこと、もうひとつは今のスマホをそっくりコピーして潜水使用を付加した発展型を作ってほしいことのふたつだ。資材の点が不安だが、鋼材に関してはタブレットの分に関しては十分あるだろう。

 

「たぶれっとたんまつ?でーたあればつくれるです」

「そのために、あやなみさんのあいぼうかりるです」

「そのあいだ、あやなみさんはすなはまでしょくりょうやしざいをかくほしてきてほしいのです」

 

「わかった、タブレットに関しては頼んだよ。さっきより、だいぶコンテナも流れ着いてるだろうし、また拾いに行ってくるよ」

 

 行ってくる、と妖精さんたちにスマホを渡して再び砂浜に舞い戻り、流れ着いたコンテナがないかどうか探し回る。今度は燃料のコンテナ四つ、弾薬のコンテナふたつ、鋼材のコンテナひとつ、ボーキサイトのコンテナ五つと、資材を大量に獲得した。こんな調子じゃ、明日の朝にはこの海岸は打ち上げられたコンテナだらけになっていることだろう。

 その後、小麦のコンテナひとつと缶詰のコンテナ五つを獲得し、前線基地跡地まで戻る。どうやら、タブレット端末の開発は明日までかかる見通しとのことだったため、そのままスマホを預け、夕食の準備に取り掛かる。なお、またもおかゆを食わされた明石がジト目で俺を睨んでいたことはここに併記しておく。




(・ワ・)「すまほは、いいものなのです」

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