特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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「死んでたと思ったら、実は生きてた」って言うのは、この手の作品じゃよくある話。


俺、ネタばらしします。

 拳銃を乱射しつつ振り回される飛行甲板をかわし続けて早数分、この猛攻をどうしようかと考えていると、突然赤城が飛行甲板を投げてきたため反応が遅れ、脳天に直撃する。飛行甲板が直撃したショックでぐわんと視界がブラックアウトし、その隙を突かれてさらに両腕と腹を撃ち抜かれる。さらに襲い来る焼け付くような痛みに耐えつつなんとか反撃しようとするが、鼻先に拳銃の銃口があるため、それができない。

 

「加賀さんの仇……!!」

「仇も何も、加賀さんは……」

「うるさい!!」

 

 ………やっぱり話を聞いてくれる雰囲気ではなかった……けど、おとなしくさせられる雰囲気でもない。だが、このまま黙って殺されるのを待ってるほど呑気な性格もしていない。そもそも、クラスター爆弾を浴びて大破炎上したのは確かだが、まだ死んだとは決まってないのだ。応急修理要員(ダメコン)さえあれば、轟沈を一度だけ回避できるのだからそっちの線で考えてもいいはずだ。ダメコンで助かってました、なら万事解決じゃないか。

 

――それでなんとかなるなら苦労はしませんけどね――

 

「それを言うな、俺もどうにかなるとはさすがに思ってないんだから。一応渡しはしたが、発動するかどうかは別問題だろ」

 

――発動したにしては、帰ってくるのが随分と遅いですね。いったいどこで油を売ってるんだか……――

 

「段ボールにでも隠れてるんじゃないか?加賀さん以外とお茶目なところあるから案外――」

「さっきからひとりで何をぶつぶつ言ってるの!?」

 

 どうやら、赤城にはひとりごとに聞こえるらしい。加賀さんがナチュラルに反応したから、みんなそうなのかと思っていたが、そうではないらしい。その線でいくと、加賀さんは()に気付いていながらあえてそ知らぬふりをしているのだろう。そうでなければ、早々に指摘してきたはずだ。そんな加賀さんの優しさに感謝しつつ、俺は赤城に言い放つ。

 

「赤城さんは加賀さんではなく、天城さんを選んだ。天城さんを選べば必然的に加賀さんはお役御免になる、ただ加賀さんが的になって沈むだけなんですよ。あなた(赤城さん)自己満足(エゴ)のせいでね」

「私のエゴ……!?ふざけないで!!私はただ八八艦隊のみんなが揃うのを望んだだけよ!!」

「それがエゴだって言ってるんですよ、欲張るから罰が当たったんです」

「うるさい!!ワシントン海軍軍縮条約のおかげで生を受けたような補助艦艇風情が!!駆逐艦に代わりなんかいくらでも――」

「赤城、それ以上言うなら私は妹と共にここへ残るわ。それでもいいのね?」

 

 頭に血が上って喚く赤城をクールダウンさせたのは、彼女の相棒である加賀さんだった。それにしても、帰ってくるのが遅かったな。何をしてたんだ?

 

「遅かったですね、加賀さん。確か、女神は渡していたはずですが?」

「悪いわね、赤城さんに死んだと思わせなければいけない以上、女神の発動を遅らせる必要があったのよ。それに、ずっと隠れてるのが大変だったわ」

「加賀さん……確か死んだんじゃ……」

「このくらいしないと、あなたのシスコンが治らないと思って、綾波と協力して一芝居打ったのよ。舞台演劇の役者めいたことをするのは初めてだから、少し楽しかったわ」

 

 そう、この一連の標的艦作戦は、加賀さんの発案だ。「赤城さんのシスコンがひどい、叩き直したいから協力してほしい」と頼まれ、即興で作戦を立案したため、クラスター爆弾の性能実験はほぼおまけに近い。ひとつ問題点があるとすれば、このことをふたりだけで内密に進めたことか。そこを除けば、この作戦はおおむね成功と言えるだろう。そんなことを加賀さんの胸に顔を埋めてわんわん泣きじゃくっている赤城を横目で眺めながら考える。

 ………少しやり過ぎたか?




綾波「身体のあっちこっちが痛いです……」

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