特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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まだ六時台だからセーフ


番外編:八八艦隊のバディ・後編

「ねぇ、姉さん。私の望んだ結末って、いったいなんなの?」

「それはついてくればわかるわ」

 

 先程から姉に「私の望んだ結末」をしきりに聞こうとしているのだが、姉は「ついてくればわかる」の一点張りで何も話そうとしない。ついてくればわかるとは言うが、多少は説明してくれてもいいのではないか?肝心なところで不親切だ、教えてくれたっていいだろう。軍港に行って何が見られるのか、何があるのか、姉は何一つ教えてはくれない。その後も、何度となく聞いてみたものの、やはり答えてくれず、私はだんだんイライラしてくる。

 そうこうして姉についていくこと数十分、ようやっと軍港にたどり着いた。だが、見えるのは海と空と水平線だけで、特に変わったものは見られない。まさか、こんなものを見せるためにこんな所へ連れてきたのか?と訝しんでいると、自身の後方から次々に発艦した艦載機が飛んでいくのが見え、後ろを振り向く。すると、雲龍型の三人が巻物と和弓を駆使して艦載機を飛ばしているのが見える。訓練か?とも思ったが、それは次に聞こえてきた爆音で否定される。

 

「えっ……あなた、まさかこれがあなたの言っていた「面白いこと」なの?」

「姉さん、何が見えるの?私にも見せて」

「………赤城、本当にいいの?あれを見るだけの覚悟はある?」

「ええ、何が見えようと、私はそれを受け入れるだけの覚悟はあるわ」

 

 その後も十分ほど言い争い、ついに折れたのか双眼鏡を渡してくる。そうして姉の見ていたであろうほうを見ようとするが、ズームしっぱなしで渡されたせいで、どこを見ていたのかがわからず、ズームを戻すところから始めることになった。ズームを戻し、姉が見ていたであろうと頃に双眼鏡を向け、そこで信じられないものを見る。その視界の先で、相方の加賀が全身を炎に包まれて経っていた。海上に立ったままよけず、逃げず、これではまるで……()()()ではないか!!

 そもそも、「私の望んだ結末」と加賀さんが標的艦になることと、何の因果関係があるのだ?両者の間に因果関係はないはずだ、私はただ、姉といたいだけで、そこに加賀さんは何の関係もないはずだ。なのになぜ、加賀さんは雲龍型の艦載機の標的艦にならねばならないのだ?そこからして意味が分からない。だいたい、姉と加賀さんを天秤にかけただけで、どうしてこうならなければならない?その疑問は、ずっと隣にいて、何かに納得したかのような表情を浮かべた姉が解説する。

 

「私が生き残るってことは、順当に考えれば空母として改装される。そうなると、御役御免になった加賀さんは……どうなるかわかるでしょ?」

「姉さん、何が言いたいの?私には姉さんが何を言いたいのかさっぱりわからないわ」

「なら、ハッキリと言ってあげましょうか?あなたは自らのエゴで相棒(パートナー)()()()のよ、私欲しさにね」

 

 ち、違う……私は、そんな結末望んでない……姉さんには、ただそばにいてほしかっただけで、決して加賀さんがいらなくなったからではない。だが、こうして動揺している間にも、加賀さんには雲龍型の放った雷撃隊や急降下爆撃隊が次々と彼女に対して水面下の雷や大空の鉄の雨を容赦なく浴びせていく。止めなければ、そして助けなければ。今もこうしている間にも、加賀さんは緩やかに十三階段を昇って行っている。艤装、艤装……と探している間に、最悪の展開が訪れる。

 

「さて、行きますか。特大のやつ、ひとり一発ずつよ」

「親子爆弾、ですか。何もこんな時に性能実験せずともいいでしょうに」

「まぁまぁ、これも大事なことだよ。艦載機仕様の集束爆弾なんて、珍しいじゃん」

 

 私が姉をどうやって助けようかと考えている後ろで、呑気に何か談笑しているのが聞こえてくる。いったい何を話しているのだ?早く助けに行かないと、沈んでしまうではないか!!そう思い、赤城は海へ出ようと艤装を周辺から探すが、どこにも見当たらず、ただ相方が蹂躙される姿を眺めるしかできない。そして、やっと自分の艤装を見つけて装着した次の瞬間、大型の爆弾が加賀さんの頭上に降り注ぎ、中から無数の小型爆弾が撒き散らされて加賀さんの頭上に降り注ぎ……爆炎が彼女を飲み込んだ。

 

「加賀さぁぁぁぁぁぁん!!」




赤城「………なんで、こんなことになったの……?」

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