拳銃型20.3サンチ砲のライセンス生産の
「赤城、もう朝よ。起きなさい」
「おはよう、姉さん」
軽くあくびをしつつ、姉に髪を結ってもらう赤城。もし、あのまま計画が順調に進んでいれば、私は姉とともに海を駆けていたのだろうかと思う。もっとも、そうなると今度は吹雪たちと顔を合わせることがなくなったのだろうが。あの子達は私達の犠牲で生を得たようなものだ、だからといってどうしろという気はないが、せめて頭の片隅くらいには覚えていてほしいと思う。幻と消えた、八八艦隊のことを。
そうして姉と共に食堂へと向かい、朝食を取る。今日のメニューはBLTサンド、どうやら綾波が本土で食べたのを気に入って頼んだらしい。私にとってはさほど珍しいものではないが、この前線基地においては毎日の食事のメニューを考えるだけでも一苦労なのだろう。そう考えると、このBLTサンドもまた、一種の贅沢なのだろう。確かに、食事は重要なファクターではあるが、近辺に何もない以上、食事以外に娯楽を見いだせないでいる。それを食堂に来る途中で見た何もないがらんどうとした娯楽室を思い出して、今度来るときは何かゲームのひとつでも持ち込もうと誓う。
その後、綾波を呼び出して応接室に案内され、今回のいきさつを説明する。
「赤城さんは、なぜ急にこんなところに?こんな辺境の地、来たってなにもありませんよ?」
「20.3サンチ砲のライセンス生産のライセンス料を抱えてこんなところまで来る時点で、何の用で来たかはわかるでしょう?」
「L.ホークのライセンス生産、ですか。いいでしょう、契約は月単位で、そのライセンス料は?」
「提督は、年間単位で契約されるおつもりでしたので、毎年20万円を予定していました。ですので、月20万円でこれから出るであろうここの新型艤装すべてをライセンス生産できるようにお願いしたいです」
「ずいぶん強気に出ますね」と感心する綾波に、赤城は苦笑する。これはあくまで、鎮守府の発展と繁栄を考えた結果で、そこに個人の意思はない。新型艤装のデータを手に入れてこちらでも自由に生産ができれば、こちらは毎月20万という金額だけで最新鋭ともいえる装備が全員に行き届くのだ。そう考えれば、この出費も安いものだろう。そんなこんなで契約が完了し、あとは帰るだけ、になったのだが、どうせまた会えなくなるのだ、今は思いっきり姉に甘えよう。そう思った私は、姉を探して応接室を後にする。
………姉さんも鎮守府に来ればいいのに……
北上「レートは金額の5,000倍だよー」