特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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5話目にして、やっと生きてる艦娘登場。


俺、航行の練習をします。

「なんか、思ってたより難しいな……これならアニメで吹雪がバタバタ倒れてたのもうなずける」

 

 ハイパーズを埋葬した次の日、俺は14サンチ単装砲を片手に海上に立てるか試してみたところ、靴に航行能力が付加されていたため、ついでに海上航行の練習を始めたのだが、これがまた難しい。わかりやすく言えば、子供が玉乗りをしてるような感じで、とにかく不安定なのだ。まずは海上航行の前に海上に立てるようにならなければならないらしい。

 そんなこんなで苦戦すること一時間、ようやく海上に立てるようになった。たったこれだけをするためにめちゃくちゃ腹が減った、慣れるまではしばらくこれが続きそうだ。昼食は釣った何かの魚と、どこにあったのかは知らないが、山盛りの白米。つーか、あるなら早く言え。おかずなしでもそのままでOKですって、ごはん大好きな黄色い子も言ってたし……って、何言ってんだ俺。

 そんなこんなで昼食を済ませ、妖精さんたちと今日の予定を考える。どうやら、主砲の口径は艦娘にはあまり関係がないらしく、妖精さん曰く「P8からL.ホークに持ち替えるような感じ」とのことだが、ストッピングパワーの違いが少々どころじゃない気がするのは気のせいか。砲雷撃の訓練はしばらくお預けになりそうだが、いつになるのやら……

 タンパク源の観点で言えば、魚はいいものなのだろうが、さすがに毎日毎日魚だけでは一月と持たずに飽きてしまうだろう。牛や豚とまではいかなくとも、動物の肉は食いたい。………当然だが、人間はノーサンキューだ。いくらなんでも、カニバリズムなどをやってしまえば、本当の意味で人間をやめてしまいそうで怖い。砂浜に、食料のコンテナでも流れ着いてないかなぁ。………死体も流れ着いてそうで怖いが……

 

「弾薬のコンテナ三つ、鋼材のコンテナふたつ、燃料とボーキサイトはなしか。トラックでもあれば、便利になるんだけどなぁ……」

 

「とらっくはないですけど、りやかーはつくってみたです」

「きちょうなこうざいつかって、りやかーつくったです」

「がんばって、あやなみさんのおやくにたつのです」

 

 俺のぼやきに対し、同伴していた妖精さんたちがリヤカーを作っていたことを自慢げに報告してくる。どうやら、リヤカーの金属部分に昨日手に入れたばかりの貴重な鋼材を使って開発したらしい。不法侵入者呼ばわりされてからたった一日で打ち解けるとは、俺も予想外だ。とりあえず、この資材を前線基地跡地に運び込もう。そして、また砂浜に来て食料のコンテナがないか探そう。

 とりあえず、弾薬と鋼材を資材庫になおして再び砂浜へと赴くと、今度は艦娘が打ちあがっていた。また死体か?と眉を顰めて近づくと、工作艦『明石』であることがわかった。かわいそうに……と前線基地跡地で弔うため、リヤカーに乗せようと抱きかかえた瞬間、明石が小さくうめき声をあげて目を覚ます。まだ生きてる!?生きているのなら、助けないと。

 

「あれ……?私確か、輸送船護衛してて……」

「気がついた?」

「あなたは……」

「話はあとで、まずは私の住んでいるところへ行きましょう」

 

 その後も何か言いたそうな明石を黙らせ、リヤカーに乗せて前線基地跡地へ向かう俺。見る限り、目立った外傷はないが、内側はどうなっているかわからない。それに、旨く行けば装備の改修のやり方も教えてくれるかもしれないし、恩を売っておくのは悪くないはずだ。だがしかし……

 

「昨夜この近海で戦闘なんてあったか……?」




ハイパーズが草葉の陰で嘆いている気がするが、多分気のせい。

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