特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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前書きのネタ切れた


番外編:華の二水戦の矜持・後編

「なるほど、全体的に魚介類中心のメニューですか。やはり、お肉は外部からの支援頼みで稀少なんですね」

「ええ、畜産業でもできればいいんですが。育てる家畜がいないんですね、外部から連れてこない限り」

 

 やはり、畜産業はできていないらしい。育てる家畜がいない以上、畜産ができず、この島での良質なタンパク源といえば魚か大豆製品くらいのものだろう。その証拠に、今日の食卓には肉料理がひとつも並んでおらず、何かの魚の煮つけとサラダ、端休めと思われる千枚漬が並んでいる。今日の夕食は何とかいって手伝わせてもらったわけなのだが、自分の料理のレパートリーの少なさに思わず泣きたくなる。夜戦、夜戦、とうるさい姉さんより、得意な料理といえばイワシ料理くらいな姉さんより女子力が低いなんて……

 

「………帰ったら、鳳翔さんに料理習おう……姉さんに負けてるなんて悔しい……」

「………なんか癪に障る言い方ね……那珂はともかく、私に負けて悔しいってどういうこと?」

「なっ!!那珂ちゃんそんなに女子力ない!?お姉ちゃんたちひどくない!?」

「はいはい、どーどー。怒らなーい、怒らなーい」

 

 姉さんの「那珂はともかく」に過剰反応したのであろう那珂ちゃんを綾波がなだめすかし、なんとか妹の機嫌も落ち着いたのか、再び椅子に座って夕食の続きに取り掛かる。そして何事もなく夕食も終わり、何をしようかと悩む。どうせならここの水雷戦隊を徹底的にしごきたいのだが、勝手が違う以上そうもいくまい。

 

「こんな夜更けじゃ、帰るのも危険を伴うでしょう。今夜は泊まっていってはいかがですか?」

 

 確かに、夜間の航行は敵艦隊による夜襲を食らう恐れがある。夜襲は何もこちらだけの専売特許というわけではない、敵も使ってくる恐れだってある。自分たちの取りうる戦術は、相手も使えるものと判断してかからねばならない、そうしなければこのメンバーの誰かが水底に沈んで帰ってこなくなるかもしれないのだ。避けられるリスクは最大限避ける、上からの命令がない限りは。

 そんなこんなでみんなでお風呂に入り、ひとときの休息を取る。ここは毎日こんな調子なのか?もしそうなら、きっと退屈はしないだろう。ここは正規の軍施設でない以上、彼女たちを縛る軍紀が存在せず、こうしてのびのびと日々を過ごしている。出撃や遠征は各自が自発的にやっていることで、デイリーと称して回している建造や開発も自分たちが豊かになるための行動で、あくまで自分たちのためでしかないとのことだ。

 

「ここはいいところですね、以前の提督がここを放棄した理由が理解できません」

「それはここを放棄した前の司令官に聞いてください」

 

 ここを放棄した理由がわからないと神通がボヤくと、綾波が呆れたような口調で返してくる。意訳すると「そんなこと知るか」ということなのだろう。あまりこのことには触れないほうがいいだろう。そう思った神通は、このことを頭の隅に追いやり、綾波に割り振られた艦娘寮の一室を借りて眠りにつく。

 やはり、支援体制を強化すべきだろう。




次回から第五章

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