特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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悩んだ結果、神通さんに決定。


番外編:華の二水戦の矜持・前篇

 綾波のいる前線基地への鼠輸送の許可を長門秘書艦に貰いに行ってから今日で一週間、資材と日用品、食料の支援の目途がようやく立った。ちなみに、ハイパーズと第六駆逐隊は謹慎期間が三日残っているため、今も自室で待機している。無断出撃の分の謹慎期間だ、それはキッチリ消化してもらおう。そして、資材と日用品と食料のコンテナを三水戦のそれぞれに分けて積み込み、旗艦の神通が最初に出撃ボタンを踏む。

 

「第三水雷戦隊、旗艦神通、行きます」

 

 艤装を次々と流れ作業で装着し、綾波のいる前線基地に向けて航行する。加賀さんたちは一昼夜かけて行ったと言っていたが、この早朝ならば夕暮れ時には着くだろう。今回第三水雷戦隊に与えられた任務は、前線基地への支援物資の輸送。これが成功すれば、綾波たちの生活もぐんと楽になるだろう。そう思っていると、吹雪が何か言いたげな表情でこちらを見ていることに気付く。何の用だ?

 

「神通さん、私思うんです。加工済みのお肉送るより、畜産業始められるようにすればいいんじゃないでしょうか?」

「吹雪、あの子に本気のサバイバル生活強いる気?農業、水産業、畜産業と始めたら私達いらないじゃない」

 

 「そ、それもそうですね……」とバツが悪そうな顔をして下がる吹雪。別に私は怒ってるわけではない、ただ支援の必要性がなくなることを不安に思っただけだ。少なくとも、今のところあの子は私達の支援を楽しみにしているはずだ。農作物や魚介類は自力で採れるからいいとして、動物の肉はその辺に生えてくるわけではない。「お肉のなる木」とかあったら赤城さんは喜ぶのだろうか、と考え、むしろ切り倒しそうだな、と思う。と、そんなどうでもいいことを考えていると、夕立が退屈そうにしているのがわかる。今は任務中だ、気を引き締めてもらわないと困る。

 

「なんか、敵も来なくて退屈っぽい」

「いいじゃない、退屈なのは平和の証拠だよ」

 

 姉の川内の言い分もご尤もだったのか、そのまま何も言わずに引き下がる夕立。食い下がって来ないだけ、幾分かマシなほうだ。夕立は自信過剰というよりは、どちらかといえば戦闘狂というべき感じなので、夕立に関してはこれでほっといてもいいだろう。睦月は何もいうことがないのか、ただただついてくるだけに徹している。そうして進むこと半日以上、ようやく前線基地が見えてきた。

 

「こちら、第三水雷戦隊、旗艦神通です。入港の許可をお願いいたします」

 

『しょうしょうおまちください……にゅうこうをきょかします』

 

 現在時刻、18:00。これで第一関門はクリアした、あとは支援物資を渡して帰るだけだ。さすがに泊めてもらうのも悪いだろうし、とんぼ返りになるだろう。姉さんたちには悪いが……

 

「行きましょう、綾波さんが待っています」




綾波「確か、来客の予定はなかったはずなんですが……」

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