「雲龍、そういえばそのデカい島ってどんな感じなんだ?映像とかあればわかりやすいんだけど」
「映像ですか?こちらになります。っていうか、なんかキャラ随分変わりましたね……」
いや、今そこ問題じゃない、と突っ込もうとしてやめ、俺は雲龍から渡されたタブレットの映像を見る。どうやら、整地の心配はいらないらしい。島の中心部を四角くコンクリートで整地され、周囲をドーナツ型に森が覆っている。いったい何を造ろうと思っていたのかは不明だが、整地された土地の広さから見てかなり広い基地を建設する予定だったのだろう。だが、整地だけされて放棄された土地を見ると、何もない空き地のようで少し寂しい。もっとも、現に空き地なんだから間違ってはいないが……
「整地の心配はなくなったけど、問題は核融合炉をどのあたりに造るか、なんだな。ベタな考えでいけば、真ん中に建てるのが一番なんだが……」
「けーぶるでのばすので、どこにたててもおなじだとおもうのです」
「けんせつのためのしざいは、すでにつみこんであるのです」
「あとは、しまにいってかくゆうごうろのしせつをつくるだけなのです」
「よし、事を進めるなら早いほうがいい。遅れれば遅れるだけ、周囲に感づかれてやりにくくなる」
前線基地のお留守番を雲龍型に任せ、俺たちは建設予定地の島に向かって航行する。島へ着くなり、妖精さんたちが張り切って作業を始めるが、あまり気合い入れすぎるなよ?無理したら倒れるんだから。それに、妖精さんたちが必死に頑張っているのに、俺がただ指を銜えて見ていることなんてできない。図面片手に、現場監督でもやらせてもらおう。そうして作業を始めてから半日、そこには剥き出しの核融合炉が数十基ずらりと並んでいた。こうして核融合炉が並んでいる姿は圧巻の一言であるが、もっとすごいのはこれだけの数の核融合炉を立った半日で完成させた妖精さんの力だろう。毎度思うけど、妖精さんの力ってスゲー。
「あとは、たてものをつくってかんせいなのです」
「けど、まだひはいれないのです」
「そうでんしすてむがまだできてないのです」
つまり「載せる車のない高性能エンジン」のような状態というわけか、今の核融合炉は。次は送電システムか、と思い、どこをどう掘って地下を造ろうかと考えていると、妖精さんが発電施設建設と並行してある程度掘っていてくれていたらしく、かなり深くまで掘られていた。現在深度2,000m、不眠不休で頑張れば三日で送電システムが完成するのだが、俺としては妖精さんにそんな無茶はさせたくない。無理をしてもいい結果は残せない、休めるときは素直に休むべきだ。
俺は雲龍たちにしばらく前線基地の留守番を頼み、潜水艦や水雷戦隊に休息を取らせるよう指示して妖精さんたちとともにひと眠りする。正直言って、これでこの世界の何が変わるのかはわからない。だが、自己中な欲望にまみれた人間と自分たちの優位性を信じて疑わない艦娘、俺たちが何とかしなければ確実に世界は戦火に呑まれて滅亡する。たとえ結果に手が届かなくとも、やれるだけのことはやっておきたい。そうして意識が完全に落ちる直前、綾波の声を聞いた気がした。
――たまには、綾波のことも頼ってくださいね。
次回、またまた番外編。