襲撃してきた海賊を仲間にした次の日、俺はある問題にぶち当たった。所属する艦娘が増えたせいで、電力の需要が供給を上回ったのである。要するに電力不足というやつだ。もうそろそろ、大型の発電施設をどこかに建設でもしないと今度は電力不足で干上がりそうだ。電球や蛍光灯は妖精さんが作ってくれるからいいが、電力だけはどうしようもない。どこかに発電施設を建設できるだけの広い土地のある島でもあればいいが……
「そろそろ造るしかないのか?核融合炉」
――資材の面で不安ですが、そこはみんなで頑張ってまた集めましょう――
資材はまた集め直せばいい、ただそれだけのことだ。もっとも、電力不足も心配だが、鎮守府側の支援を受けられなくなるのも困る。そのためには、昨日量産化体制に入った20.3サンチ砲を本土の鎮守府に売って支援体制を強化せねばならない。現物はもとより、設計データも渡さねばならない。無論、重要なところはブラックボックス化して。
――核融合炉を開発するのはいいんですが、そんな広大な土地があるんですか?この島は基地と田畑で手一杯ですよ?――
「なら、探せばいいさ。今は雲龍たちがいる、艤装は修復できたし、艦載機も補充は済んだ。この島に来てからの初仕事だ、精一杯頑張ってもらおう」
潜水艦や水雷戦隊は少しでも資材を確保するために遠征に出かけたし、ヒトマルは農作業に従事している。戦艦組は周辺海域の哨戒にあたっているし、俺は量産された20.3サンチ砲を箱詰めして本土の鎮守府に売るための準備をしている。これを本土の鎮守府に売って、その見返りとして支援を要求する。GIVE&TAKEな関係を結んでおけば、後々こちらとしても有利に動くはずだ。もっとも、いつ売りに行くかが問題だが、それはそれで考える必要がありそうだ。
――雲龍さんたちは、あなたのことを知らないでしょうからあなたが交渉に出向いたら混乱するでしょう。ここは綾波にお任せください――
「ああ、頼む」と言い残して、俺は綾波に身体の制御権を明け渡す。そして、綾波が仕事内容を説明し、雲龍たちが周辺海域の捜索のため、艦載機を飛ばす。発艦させてから一時間近く経った頃、発電施設を建設するのに向いた大きな島を発見した。大きさも申し分ないし、それぞれの島からも距離的に遠くない。発電施設を置くにはちょうどいいところだろう。島と島の移動は現時点では海上を航行するしかないが、いずれは海底トンネルを掘ってそちらから移動ができるようにしたい。幸いというかなんというか、ここの海域の深度は軒並み10,000mを超え、トンネルを破壊しようにも爆雷も届かず、潜水艦も潜れないところに海底トンネルや電力供給ケーブルを建設できれば、電力の心配はいらなくなる。
「かくゆうごうろ、かいはつするのです」
「そのまえに、まずはかいたくなのです」
「そういえば、開拓がまだだったんだな。まずは広い土地を作るところから始めるとしよう。戦艦組を呼び戻してくれ」
「りょうかいなのです」
ここからが試練のスタートだ、気を引き締めていかないと……
(・ワ・)「みんなでがんばってきちをおおきくするのです」