特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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作者の下には雲龍型なんてひとりもいません(謎の逆ギレ)


俺、艦娘に事情聴取します。

 襲撃してきた雲龍型と川内型を拿捕し、川内型を入渠させ、その間に雲龍型に事情聴取……もとい尋問を行うことにした。相手は海賊だ、遠慮する必要はない。とはいえ、あまり乱暴なことはしたくないのが俺の心境だ。なんてことを考えていると、綾波がL.ホークを乱射したくてうずうずしてるのがわかる。撃つなよ?尋問前に死なれちゃたまったもんじゃないんだが。

 

――殺しはしませんよ、聞きたいことなんて山ほどあるんですから。ってわけで、ちょっと身体返してください――

 

 お、おい……と言い始める前に身体の制御権を奪い返され、またもや傍観するだけの立場になってしまう。俺だっていろいろと聞きたいことあるんだぞ?綾波。まぁ、こうなった綾波を止めるのはほぼ不可能に近いのでどうしようが無駄なのだが……

 

「とにかく、聞きたいことなんて山ほどあります。どこから来たのか、なぜここを襲ったのか、誰がこんなことを発案したのか、いつからこんなことをやっているのか……まぁ、この世界の事情を知らない以上、どうでもいい案件ですが」

「艦娘が人間の絶対的味方でない、といえばわかるかしら?私達はあくまで『深海棲艦掃討』を掲げる人類と『衣食住の確保』を求める艦娘の利害が一致したから手を組んでるだけ。その気になれば、反旗を翻して人類を掃討することもできる」

「けど、それをしない理由は艦娘の絶対的な数が少ないからよ。戦争はいつの時代も数で勝ったほうが勝つ、少数の側が敵を掃討して戦争に勝つなんて、ちびっ子のヒーローものくらいよ」

 

 戦争は数を揃えたほうが勝つ、それは有史以来数々の戦争で示されてきたことだ。末端の兵のコンディションも考えれば、ひっくり返せる可能性はなくはないが、基本的な概念からいえば少数が多数に淘汰されるというのはある種自然の摂理とも言えた。そんなことを考えていると、入渠の済んだのであろう川内型が、後ろ手に拘束されて連れてこられてきた。

 

「雲龍型も私達川内型も、あのロリコン糞提督にとっては大外れだった、ってことよ。あの男、駆逐艦以外に何の興味も抱かないから」

 

 ………あのクズロリコン以外にもロリコン提督がいたとは、予想外だ。だが、駆逐艦以外をハズレ扱いして捨てていくのはいかがなものか。特に雲龍型など、大多数の提督が喉から手が出るほど欲しいはずだ。なんでそんなレア艦を平然と捨てられるんだ?俺にはそれが理解できない。

 

「つまり、私達にはもうどこにも居場所がないんです。鎮守府を追い出され、皇国を追い出され、そして世界まで追い出された私達に、生きる場所なんてないんです」

「情報聞きだしたら射殺するつもりでしたが、気が変わりました。皆さん、海賊やめて私達の仲間になりませんか?」

 

 綾波の突然の提案に、雲龍型と川内型は悩みに悩み、そしてたった一言「ありがとう……」とだけ発して涙を流す。おそらく、建造されてすぐに「お前らなんかいらない」とハズレ扱いされて捨てられ、皇国に捨てられ、そしてこの世界からも捨てられた。それなら、あちこちの前線基地や鎮守府を襲わねば生きていけないのも納得といえる。

 

「ほ、本当に……?」

「ええ、綾波、嘘は吐きません」

 

 「艦娘が人類の絶対的味方ではない」ということがわかっただけでも大収穫だ、彼女たちを拿捕したのは正解だったようだ。俺は居場所を失った彼女たちを保護しようと綾波に提案し、綾波もその提案に賛成する。そして、元海賊たちの処遇も決まり、明日に期待と不安を抱きながら眠りにつく。

 ………問題は初雪トラクターが働いてくれるかどうかだが……




次何しよう……

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