新規格の艤装が完成した次の日、俺は初雪トラクターの調子を見るためにドックへと向かっていた。せっかく造ったのだ、動かなければ資材の無駄遣いになる。それに、動いてもらわねばまた中腰姿勢で稲刈りせねばならず、腰に負担をかけることになる。欠陥を見つけ出して改善し、初雪トラクターを卒業してもらわねばならない。
「とらくたーのえんじんのけっかんがはんめいしたのです」
「えんじんのしうんてんをわすれていたのです」
「エンジンの試運転忘れちゃいかんだろ……」
どうやら、動かなかった原因は妖精さんのイージーミスらしい。ちなみに、20.3サンチ砲については、現在量産が進んでおり、この前線基地の艦娘の分なら実戦配備ができるほどに数が揃っているとのことだ。専用のホルスターと予備の弾倉を用意させてみんなに配ろう。陽炎あたりなら喜んでバカスカ撃ってくれるはずだ。これで白雪の言う「主砲で弾幕を張ります」を現実のものとできる。けど、弾幕といわれるとどっかの白目のない艦長しか思いつかんのだが……
――その人じゃ、たぶん左舷の弾幕が薄くなりますよ?――
「最終的に左舷のエンジン狙われてるからなぁ……と、まぁ、どっかの艦長はいいとして……今日中にその欠陥直る?明日には投入したいから」
「きょうじゅうになおしてみせるのです」
「かならずなおしてみせるです」
「頼もしいな、任せたよ」
妖精さんのやる気に期待し、工廠ドックを出ようとすると、突然聞きなれない音が響く。なぜこの基地で
――海賊ですか?こんなところ襲っても燃料と弾薬の無駄でしょうに……――
「一時的でいいから拠点が欲しいんだろう、ともかく、迎撃準備に入るぞ」
俺はそう言い、L.ホークを両手にグリップして上空の艦載機に乱射、なかなか効果はあったらしく、総数の半分は鉄屑に変わるが、やはり弾幕が薄いらしく、次々にすり抜けてこちらに侵攻してくる。リロードも2秒近くかかるようでは対空戦では致命的な隙になる、だがどうすることもできない……と悩んでいると、急に弾幕が濃くなるのを感じ、周囲を見渡すと、できたばかりの20.3サンチ砲を両手に構えて対空砲火を放つ仲間たちがいた。
「艤装がないので海へは出られませんが、地上から対空砲火を放つことはできます」
「対空戦闘は任せて、あなたは敵空母と敵軽巡洋艦を叩いてきなさい」
「悪い、あとは任せた」
「艤装がない」ことを理由に海に出られない仁淀たちのサポートを受けつつ、俺は敵空母に肉薄して砲弾の雨を両手から降らす。雲龍と天城の巻物、葛城の弓を打ち抜いて艦載機の発艦能力を奪い、次いで川内型に詰め寄って砲弾の雨を降らせてハチの巣に――特に神通に関しては徹底的に――する。
「艤装持ってる子は海へ出てきて、こいつら曳航するから」
雲龍型は艦載機を発艦させられないためか、素直についてきてくれたが、川内型はハチの巣にされたショックで気絶したため、背負って連れていく羽目になった。
「話は基地で聞きます、ここを襲った理由、聞かせてもらいましょう」
雲龍「不覚ね、こんな旧式の駆逐艦にいいようにやられるなんて……」