特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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二挺拳銃、いいねぇ、しびれるねぇ。(スーパー北上様並みの感想)


俺、新艤装を試します。

「遅かったですね」

「ああ、ゴメン。新規格の艤装の開発をやっておきたくてさ」

 

 「新規格の艤装」に陽炎が「えっ?どんな艤装?」と食いついてくるが、今はお米の収穫が大事なので軽くあしらう。物資輸送用のトロッコはすでに完成しているため、田んぼまでの道のりは徒歩で行くことになった。歩いていくのが嫌なわけではないが、できれば何か足が欲しいところだ。たとえば、バイクとか。今度妖精さんに頼んでみよう。

 そうして、特に会話らしい会話もなく俺たちは田んぼへとたどり着き、草刈鎌を片手に作業を開始する。ちなみに、稲刈り用のトラクターだが、試運転してみたところエンジンに欠陥を抱えていたことが発覚し、再調整のためにドックに引きこもっているという。某潜水母艦曰く「初雪みたいなトラクター」とのことだが、それは彼女に対して失礼だろう。あの子は本気を出すのが他の子より遅いだけで、決して引きこもりというわけではないだろう。

 

――初雪はともかくとして、この稲をたった三人で刈り取るんですか。お昼までに間に合いますかね?――

 

「陽炎と不知火に、その気があればな」

「バカにしないでくれる?やる気なら十分よ」

「手早く片付けて、昼食に間に合わせましょう」

 

 そういうと陽炎と不知火は気合を入れて稲刈りを始める。だいぶ気合入ってるな、と感心していると綾波から「サボってると、あなただけお昼抜きですよ」と言われ、俺も稲刈りを始める。さすがにお昼抜きは嫌だ、新規格の艤装の試験運用もできれば今日中に済ませたいし、できることならそのまま量産ラインに乗せたいところだ。「艦種を問わない新規格の主砲」となれば、鎮守府側は必ず食いついてくるだろう。規格が統一されるということは、すなわち整備性や量産性の向上につながる。

 さらにいえば、艦種制限のせいで搭載を見送られてきた空母系統にとってはこの上ない朗報となる。赤城と加賀はそうでもないが、ほかの空母の対空砲は豆鉄砲も等しい口径の小さい砲以外を搭載できず、護衛に駆逐艦や軽巡洋艦を随伴させねばならなかった。だが、この主砲が完成して量産ラインに乗せることができれば、空母も自前の主砲を携行することができ、対空攻撃の強化、ひいては自衛のための砲を手にできることになる。

 

――とはいえ、テストもできていない現状では皮算用でしかありませんよ。まずはテストして、そして実戦に耐えうるものでないか見極めないと――

 

「相変わらず痛いところを突いてくるな、綾波」

 

――テストもできていないよくわからないものを、実戦配備するわけにはいきません。艦娘として、ここは譲れません――

 

 それもそうか、と綾波の突っ込みに一人納得し、稲刈りを続ける。稲刈りを始めてから数時間、ようやくすべての稲を刈り取り、現在時刻は11:30。もうそろそろお昼といった時間だ。陽炎も不知火も、やっと中腰姿勢から開放されたからか、身体を伸ばしたり腰を叩いたりして疲れた身体を癒している。………どうやら、マッサージチェアも必要らしい。これも申請しておかねばならんな。

 

「料理長、今日のお昼のメニューは?」

『おさかなのたつたあげと、ながねぎのおみそしるなのです』

 

 ………ネギはいつ収穫したんだ、という突っ込みを脇へと追いやり、俺たちは食堂へと向かう。何かの魚の竜田揚げと長ネギの味噌汁、そして白米。相変わらずだが、料理長には本当に頭が上がらない。どこか誇らしげな料理長に思わずMVPをあげたくなる。人数も増えてきて賑やかになった食堂の和気藹々とした雰囲気を楽しみつつ、竜田揚げと白米を頬張る。昼食を済ませ、ドックに行くと、頼んだ新艤装がもう完成していた。しかも、どういうわけか頼んでもいないのに二挺のうちの片方のマガジンリリースボタンが左手の二挺拳銃仕様になっている。………「二挺拳銃仕様は私の趣味だ、いいだろう?」とは言いたいが、なんでわかった。

 

「いっちょうではだんまくもはれないのです」

「それに、にちょうけんじゅうはかっこいいのです」

「それでは、さっそくてすとにうつりたいのです」

 

 二挺拳銃の素晴らしさをわかっているとは、この妖精さんはロマンをわかっているらしい。話が分かるというのは、いいことだ。「ロマンもいいですけど、実用性を無視しないでくださいね」と漏らす綾波の苦言はさすがに無視できず、わかってるよ、とだけ答えて目の前の的に向けて両手の拳銃を構える。まずは連射速度、拳銃をベースとした以上はここが悪いと話にならない。まずは片手での連射速度を確認するため、右手、左手の順で標的を狙い撃つ。連射速度については問題ない、これなら二挺拳銃(トゥーハンズ)でも十分対応できるだろう。

 次に再装填(リロード)の速度。戦場ではたった一秒の油断やミスが死に繋がる。故に、リロードの速さは無視することのできない要素となる。ちょうど弾薬が切れたところだ、リロードのほうも確認しておこう。マガジンリリースボタンを親指で押し込み、弾倉の抜けた20.3サンチ砲に予備の弾倉を装填する。1.8秒、これなら隙を見せずにリロードもできる。ちなみに、薬莢と空の弾倉は回収しなくていいとのことだ。

 これなら、今から量産しても実戦配備できるだろう。近々、他の口径の主砲も携行式の火器に改修してもらおう。今後の火器の量産方針も決まり、妖精さんたちにその旨を伝え、俺は工廠ドックを出る。

 ………よくよく考えたら20.3サンチ砲でL.ホークなんだから、12サンチ砲となるとデリンジャーになるんじゃ……




駆逐艦に武骨なデカい拳銃って、ギャップがあって可愛いよね。

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