「新しい島に来たはいいが、まずどこから探そうか」
――また、島の周囲に沿って探索してみてはいかがでしょう?そうすれば、内陸部に建てられた基地でもない限り見つけやすいでしょうし――
それもそうだな、と返し、俺は海岸沿いに探索してみることにした。今回は艤装もあるため、陸を歩く必要がない。燃料の残りは心配だが、それは帰ってから補給すればいいだろう。そうして航行しつつ探索すること一時間、コンクリートの壁とタラップを見つける。地上の部分はビル5階分上にあるらしく、そうとう登らなければならないらしい。だが、登らなければこの基地らしき場所を探索もできない。俺は意を決してタラップに手をかけ、足をかけて登る。
タラップの掴みにくさに文句を言いつつ上ること十数分、ようやっと地上に上がれた。とりあえず、という感じで周囲を見渡すと、どことなくアニメ艦これの鎮守府に近い構造をしている。敵がいない可能性は否定できないが、特に人や艦娘、深海棲艦の気配は感じられない。とにかく、ここを見て回ろう。
あちこち巡ること二時間近く、資材の山積みになった資材庫、生活感を残して誰もいなくなった艦娘寮、片付けを忘れた子供部屋のようにごちゃごちゃとした入渠施設、資料が散乱して足の踏み場のない執務室と、何かしらの混乱が起きて放棄されたことがうかがい知れる。だが、混乱が起きて放棄された、というには少々不可解な点もある。入渠施設に艦娘の衣類がそのまま放置されていたことだ。いくら混乱していたからとはいえ、素っ裸で海へ出るバカはいないだろう。
――ここもブラック鎮守府の臭いがしますね、ここの司令官だった人は相当の外道だったのでしょう――
「地上は見て回ったから、次は地下を見ていこう」
とりあえず、ここの司令官がどんな奴だったのかを考えるのは後回しだ。ここが使える基地かどうか、重要なのはそれだけだ。「工廠ドックをまだ見てませんよ」と綾波に指摘され、そういえば見ていなかったな、と思い出す。そうして工廠ドックへたどり着き、ドックの扉を開いた瞬間、ドックの奥から何かが飛んでくる。
「かんむす、きたです」
「かんむす、われらのてきです」
「かんむすなんか、おいだしてやるのです」
人間不信の次は艦娘不信か……面倒なことになった。人間不信なら、俺がなんとかできたのだろうが、艦娘不信となれば、俺がどうこうできる問題ではない。現在、綾波という『艦娘』である俺には。
「綾波、俺どうすればいい……?」
――それを綾波に聞かないでください……――
(偽)に込められた想いを知らなかったとはいえ、申し訳ありませんでした、ディムさん。