特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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これ実は昨日の18:00に投稿予定だった遅刻分。


番外編:秘書艦長門の憂鬱・後編

「そんな、横暴です!!」

「ちゃんと理由を説明してよ!!」

 

 明石と夕張に謹慎処分を言い渡すと、予想通りというかなんというか、テンプレどおりの抗議を返してきた。だが、文句を言われたところで仕方ないものは仕方ない。資材を浪費するふたりが悪いのだ。文句なら過去の自分に言ってくれ。

 

「文句なら過去の自分に言え、と言うつもりだったが……条件をやろう」

「条件……ですか?」

「ああ、私とてそこまで鬼ではないし、あまり厳しくされるのも嫌だろう。今日の分の謹慎は覆せんが、明日から『既存の装備三つ開発と引き換えに実験兵装開発一回』を許可しよう」

 

 私とて、そこまで横暴なことはしたくないし、明石と夕張を失えば工廠ドックが回らなくなる。鼠輸送については神通が直談判に来たため許可は出したが、それ以前の独断でやっていた分については罰則を与えた。こちらも何かしらの罰則を与えねば、増長して本当に鎮守府を干上がらせかねない。

 

「明日のノルマは、試製35.6サンチ三連装砲を三基だ。三基開発につき一回開発ができる、悪い話ではないはずだ」

 

 既定の数値既存の装備を開発さえすれば、それに応じて実験兵装を開発できる。彼女たちにとって、これほどおいしい話はないはずだ。今回は試製35.6サンチ三連装砲三基で一回だが、開発してもらう装備によっては数を増減する必要はある。そして、たっぷり悩んでいたのであろう明石と夕張は、顔を上げて返答する。

 

「わかりました。明石、既存装備の開発を最優先とします」

「了解、夕張、既存装備を最優先に開発します」

「よし、明日から頑張ってくれ」

 

 長門はそう言い、明石と夕張のいる工廠を出て、再び執務室へと戻る。提督は大淀が心配なのか、執務室にはおらず、執務机には誰もいない。その執務机には数枚の書類が投げ出されており、そこには件の前線基地への支援計画が書かれている。だが、何を支援するのだ?資材はこちらも逼迫しているが故に、残念ながら支援はできない。だが、食料や日用品なら支援はできるだろう。そう思いつつ長門は書類を手に取り、その内容を見る。

 どうやら、日用品や食料を中心に支援する計画のようで、提督は私が悩んでいるときから支援する気満々だったらしい。なるほど、そうなると今日の神通の直談判は彼女にとっては最終確認のようなもので、秘書艦への通達のようなものだったのだろう。もっとも、神通自身は提督が前線基地への支援計画を立てていたことを知らずに頼みに来たのだが、それを長門が知ることはなかった。

 

「ただいまー、艦隊が帰ったよー」

 

 間延びした北上の声が聞こえ、沈んでいた長門の思考が現実に呼び戻される。無断出撃した雷巡コンビと第六駆逐隊が帰ってきたのか。こっちもこっちで、きっちりとお仕置きせねばなるまい。

 

「遅かったな、何をしていた」

「最初はボコボコにして見下してやろうと思って大井っちと第六駆逐隊連れて前線基地行ったら、逆にたったひとりの特型駆逐艦にフルボッコにされてスッキリ目が覚めたよ。今まで演習でも実戦でも負けることなんかなかったからさ、昨日初めて負けた悔しさってやつを知ったよ。結局あたしも大井っちも、環境や状況が恵まれてただけで、あたしたち自身に特別な能力(スキル)なんてなかったんだって思い知らされたよ。嫌というほどね」

「そうか、負けを経験して、いい勉強になったな。だからと言って、無断出撃の罰が覆ることはないぞ」

「そこまでは期待しないよ、旗艦はあたしだからね、あたしが全責任を負うよ」

 

 「いいや、連帯責任だ」と突っぱね、北上旗下の水雷戦隊に十日間の謹慎処分、及び各自20枚の反省文の提出を命じ、北上を下がらせる。今回の処分は北上を通じて大井や第六駆逐隊にも伝わるだろう。暁も「一人前のレディ」とやらを名乗るのなら、もっとしっかりしてもらいたいものだ。北上は今回の敗北を「いい勉強になった」と前向きに捉えているようだが、大井たちはどうかはわからない。仕方ない、ここは神通に頼んで甘ったれた根性を叩き直してもらおう。

 

「華の二水戦の実力、期待してるぞ、神通」




綾波に刀持たせたいけど、菊月(偽)のパクリになりかねんからまずいかなぁ、と悩む今日この頃。

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