特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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長門「疲労をポンと飛ばす薬はないものか……」


番外編:秘書艦長門の憂鬱・中編

「それで、頼みとは何だ?」

「はい、あの子、特Ⅱ型駆逐艦率いる前線基地への鼠輸送の許可を頂きに」

 

 ………神通も神通で面倒事を持ち込んできて……これ以上私の胃を痛めるようなことを持ち込むな。ただでさえ、工学部コンビのせいで胃痛と頭痛がひどいというのに、これ以上何を私にしろというのだ?だいたい、あの前線基地への鼠輸送など、戦略的に考えればメリットなど何一つない。道中戦闘が起こりうることを想定すれば、燃料と弾薬を無駄に消費して件の前線基地に支援しようということだ。一度死に掛けたせいで、頭のネジが吹っ飛んだか?この三水戦の旗艦は。

 

「ダメだ、そんな無駄な弾薬と燃料の消費など、認められん。第一、あんな前線基地に鼠輸送するだけのメリットなど……」

「あります、そしてそれを果たすだけの理由も責務も、あなたと提督にはある」

 

 神通、貴様何が狙いだ?あんな辺境の前線基地を支援して、我が鎮守府に何のメリットがある?神通ははっきり「ある」と言い切ったが、正直言って戦略的価値などなさそうな行為でしかない、容易に容認などできやしない。だが、そう反論しようとして開きかけた私の口は、神通の追撃によって閉ざさざるを得なくなる。

 

「あの子には、遠征中に会敵して全滅寸前だった私達の命を救ってくれた。そして、わずかな仲間とともにいつ干上がるともしれない恐怖に怯えながら日々を暮らしている。そんな彼女を見捨てるメリットがどこにあると?戦略的価値などなくていい、あそこがあの子の帰る家であってくれればいい、私はただ、それを願うだけです」

 

 ………なるほど、あの特型駆逐艦に妙に肩入れする理由は、命の恩人だからか。資材の融通はできないとしても、服や日用品、食料に関しては支援することができるだろう。提督に関しては彼女への支援はノリノリでやっているし、私もそろそろ決心せねばならないのか……

 

「………わかった、鼠輸送の件については全面的に許可しよう。ただし、現時刻以前の独断によるものについてはそれなりに罰を受けてもらう。いいな?」

「もとよりそのつもりですし、銃殺でないならまだマシでしょう」

 

 「ありがとうございます」と頭を下げて執務室を出ていく神通を見送りつつ、長門はこれからのことを考える。明石と夕張は謹慎処分が決定したし、三水戦と南雲機動部隊はこれで大手を振って鼠輸送ができるようになった。あとの問題といえば、北上、大井の雷巡コンビと、わがままな第六駆逐隊の面々くらいか。雷巡コンビと第六駆逐隊が迷惑をかけてないかと心配しつつ、長門は工学部コンビのところへ行き、指令を伝える。

 

「現時刻を以て明石、および夕張を謹慎処分とする」




夕張「横暴だ!!パワハラで提督に訴える!!」

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