特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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長門「頭が痛い、胃も痛い、誰か助けて」


番外編:秘書艦長門の憂鬱・前篇

 北上と大井が第六駆逐隊を連れて勝手に前線基地に行った次の日、長門は不機嫌の中にいた。それもそのはず、第三水雷戦隊や南雲機動部隊がかの前線基地に鼠輸送をしているだけではなく、明石や夕張と手を組んで何やら怪しい装備を開発しているようだが、何を作ってるのかは秘書艦である私にもわかっていない。見えた範囲でわかったことといえば、浮遊する謎の球体やブースターのついた柱、さらには膝に固定するシールドなど、いったい何に使うのかがさっぱりわからない。

 「盾括り付けて膝で殴れ」などと意味不明なことを言っている暇があるなら、もっと鎮守府の役に立つものを作ってほしいものだ。明石と夕張(マッドサイエンティストコンビ)の考えていることは常人である自分にはさっぱり理解ができない。実用性を重視する自分にとっては、ロマン武器というものが全く理解できない。ロマンを追及するくらいなら、もっと実用性を追求しろと言いたい。ロマンなんかより実用性だ、それをわかれバカ共。

 

「まったく、自分の趣味のために資材を無駄遣いして……」

 

 長門ははぁ、とため息をついて本来大淀がいるはずの席を見やる。普段なら、そこで大淀が通信に耳を傾けているはずなのだが、ここ最近の誰かさんたちの資材浪費事件のせいで胃潰瘍を患い、今は療養のために自室でおとなしく寝ている状態である。おかげで私も頭が痛い、そのうち胃薬も手放せなくなりそうで怖い。いったい何でこんなことになったんだ?

 

「長門、あなたこそ休んだらどうなの?」

「私が休むわけにもいかんだろう、それにこれ以上資材を浪費させるわけにもいかん」

 

 そう、私が止めなければあいつらは際限なく資材を浪費してろくでもないものを量産するに違いない。どうせ作るなら、三式弾や徹甲弾を開発してくれ。「VLSが出るまで、絶対に開発はやめない」などと言っている暇があるなら、高性能な電探のひとつでも作れと言いたい。そもそもVLSとは何だ?横文字を並べ立てられてもさっぱり理解ができん。もっと理解できる言葉で説明しろ。

 

「これでやめないようなら、解体も検討せねばならんな」

「いくら鎮守府のためとはいえ、ちょっと横暴じゃない?」

「こうでもせんと、資材の浪費は止まらんだろう。現時刻を以て明石、及び夕張を別命あるまで謹慎処分とする」

 

 そう、これでいいのだ。これは鎮守府のためだ、何も間違ってはいない。こうでもしなければ、資材が枯渇して運営が成り立たなくなる。あのふたりには頭を冷やしてもらおう。そう思い、明石と夕張に謹慎処分の命令を下すために工廠ドックへ向かおうとすると、ドアの前に立ち塞がるようにして神通が立っており、その神通が唐突に口を開く。

 

「長門秘書艦、折り入って頼みたいことがあります」




神通「頼むなら、今がチャンス」

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