ハイパーズがドックの中のものを物色して気に入ったのであろうものを片っ端からパクっていく事件から数時間後、ようやく昼飯の時間となった。食事当番に立候補してくれた仁淀は、いったい何を作ってくれるのか、今から楽しみだ。そんなことを考えつつ、俺たちは食堂へと入る。今日の昼食のメニューは、何かの魚の焼き魚とじゃがいもとニンジンの煮物、いんげんのゴマ和えに白菜の浅漬け。初期のころと比べたらずいぶん豪勢なメニューとなったな、と感心しつつ箸を握ると、ハイパーズと第六駆逐隊が不満そうな顔でいるのが見えた。何が不満なんだ?
「この魚何?毒とかないよね?」
「毒はないにしても、なんかパサパサして美味しくない」
北上の不安はご尤もな意見なのであえて言わせたが、大井のほうに関しては我慢してくれとしか言いようがない。その魚、この前線基地で釣れるんだけど、何の魚かは俺もよく知らないんだよ。ただ、北上も大井も、この前線基地の食糧事情を把握してか、それ以上何も追求してこなかったあたり、少しは大人なのだろう。だが、洋食が出てくると期待していたのであろう第六駆逐隊はあからさまに不機嫌な態度でご飯を掻き込んでいるのがわかった。おいおい、勝手に期待して落胆せんでくれ……
そんなこんなで昼食も終わり、何をするわけでもなく来たのであろうハイパーズに演習を挑むことにした俺。こっちから挑んだ以上、燃料と弾薬はこちらで負担することを条件に演習に付き合ってもらったが、どうも演習相手が俺ひとりなことがよほど不満らしく、――特に第六駆逐隊の面々は――不機嫌そうな顔をしている。
「寄ってたかって一杯の駆逐艦を袋叩きにするなんて、レディのすることじゃないわ」
「勝てるときに勝つ、それが戦いさ。卑怯だろうとなんだろうと、勝てばそれでいいのさ」
「たったひとりで挑もうなんてことを、雷達が間違ってるって教えてあげなきゃ」
「そうなのです、駆逐艦の火力なんて、たかが知れているのです。数に頼まれたら倒されるのは常識なのです」
おいプラズマ……もとい電、おめーも駆逐艦だろうが。ハイパーズは駆逐艦ひとりくらい楽勝と思っているのか、どうやっていたぶって遊ぼうかと相談しているのが聞こえてくる。おう、ソロモンの鬼神なめんなや。舐めプでかかって返り討ちにされる恐怖ってやつをたっぷりと味あわせてやる。
――ソロモンよりずっと楽な編成です、ですが、魚雷が増えた分厄介ですね――
相手が戦艦じゃない分楽だとばかり思っていたが、雷撃が増えるのは確かに厄介だな。とりあえず、取り巻きの第六駆逐隊をとっとと片付けて、本命のハイパーズを仕留めるとしよう。さて、やりますか。と響のセリフを心中でつぶやき、俺は倒すべき敵を探す。………見つけた、まさか第六駆逐隊全員で固まって航行しているとは思わなかったな。だが、これはチャンスだ。雷撃でとっとと片付けてしまおう。
「酸素魚雷、一斉発射よ!!」
「それは吹雪のセリフよ!!」という綾波の突っ込みを無視し、俺は第六駆逐隊に向けて雷撃を放つ。すると、運がいいのか悪いのか、第六駆逐隊は響を残して撃沈判定を下される。逆上して突っ込んできたところをかわし、ハイパーズの放った雷撃から身を守るための盾として使う。近くにいたお前が悪いんだ、仕方ないだろう?その後、盾としての役目を終えた響を捨て、ハイパーズへと突貫する俺。牽制のつもりで砲撃を放つが、まさか直撃するなどとは思っておらず、さすがのこの戦果には大井もビビっているようだ。その後、勝ち目がないと悟ったのか、大井が白旗を掲げて演習が終わる。大井を沈め損ねたので、A勝利といったところか。
その後、盾にされた響がぎゃあぎゃあ文句を言ってうるさかったり、ハイパーズが狙撃のコツを教わりに来たのだが、それはまた別のお話。
次回はまたまた寄り道して長門視点