特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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艦これ界のチート要素って、妖精さんじゃないかと思う今日この頃。


俺、妖精さんと出会います。

 一夜明けて次の日、俺は日の出とともに目が覚めた。時刻は05:00、総員起こしとやらの60分前だ。マップで調べる限り、経度は日本と同じ位置にあるため、時間も日本と同じでいいのだろう。よくよく考えたら、昨日から何一つ口にしていない。そもそも、艦娘が何を口にすればエネルギーを補給できるのか、それがまだわかっていないのだ。人間と同じものを口にしてエネルギーを補給するのか、燃料や鋼材を口にしてエネルギーを補給するのか、そこからしてよくわからない。

 とりあえず、工廠ドックに行って食料を取るための道具を探しに行こう。斧があれば木を切れるし、銃があれば高い木の果実を撃ち落としたり野生動物を狩ったりできる。それに、道具があるということは、身を守るための武器を手にしたということになる。うまくいけば、綾波の艤装が手に入るかもしれない。そう思い至った俺は、工廠ドックへと向かい、森の中を探索するための道具を探しに向かう。

 

「さて、来てみたはいいが、やっぱり暗いな……スマホのバッテリー残量にも限度ってものはあるし、どうしようか……」

 

「でんき、つけるです」

「だれか、きたです」

「ふほうしんにゅうしゃです」

 

 暗い工廠ドックの入り口で光源をどうしようかと悩んでいると、ドックの奥から何やら声が聞こえてくる。全長が人間の十分の一くらいの小人が、とてちてと歩いてきてこちらへ来るのがわかった。どうやら、俺は不法侵入者扱いを受けているらしい。いや、不法侵入したのは間違いないからその認識は間違ってはいないが、何故か平仮名で喋っているようなのっぺりとした口調に違和感を覚える。だが、意思疎通(コミュニケーション)が取れるというのはいいことだ。

 突然ドックの電灯が灯り、思わず眩しさに片手で目元を覆う。一分ほどして目が慣れてきて、近づいてきた小人を見やると、中黒ふたつと片仮名の「ワ」で表現できそうな顔をした小人がこちらを見ていた。確か、この小人たちはなんといったか……そう、『妖精さん』だ。『艦これ』において、建造や開発、艤装の操作を行う小さな仲間。公式のメディアミックスや二次創作などでは様々に味付けをされており、その個性や容姿、性格なども様々である。

 

「しんにゅうしゃさん、なんのようです」

「すかーとのぽけっとに、へんなものあるです」

「とおしてほしければ、それをわたすのです」

 

 どうやら、ここを通るためにはスマホを渡さないといけないらしい。壊すなよ、とだけ言って相棒(スマホ)を渡すと、何やら楽しそうにスマホをお神輿よろしく担いでどこかへと消えていく妖精さんたち。残された妖精さんを肩に乗せ、探索のための道具を探そうと妖精さんの案内に従ってドックを見て回る。シャベルや斧などの土木作業の道具や、対人用のライフルとその弾薬など、これを手に入れただけでもここへ来た価値はあったと思う。

 手に入れた道具や銃器を艤装よろしく装備してドックを巡っていると、気が済んだのか飽きたのか、先程の妖精さんたちがスマホを担いで戻ってくる。だが、行きと帰りで何やら妖精さんの集団が増えているような気がするが気のせいか?しかも、よく見ると担いでるのはスマホだけじゃなくてなんかでかい木箱まであるし。いったい何を持ってきたんだ?綾波の艤装か?もしそうなら、ありがたい。行動の幅が広がる。だが、残念ながらそれは艤装ではなかった。

 

「じゅうでんけーぶる、つくったのです」

「よびのばってりーも、いくつかつくったのです」

「これは、いいものなのです」

 

 ………最後の妖精さんが、どっかの骨董品好きな大佐になっていたのは気にしないでおこう。だが、ものの数十分程度でスマホを解析して充電ケーブルと予備のバッテリーを開発してしまうなど、ジェ○ンニも真っ青な仕事の速さである。しかし、この提督も艦娘もいないこのうすら寂しい場所で、いったい何を楽しみにやってきたのであろうか。

 木箱の中には、スマホの充電ケーブルと予備のバッテリーのほかに、探照灯を改修したと思しきヘッドライトとヘルメットのセット、少々軽めの防弾チョッキとアーミージャケットとパンツのセット、サイドパックのウエストポーチがふたつと、なかなか豪華なラインナップとなっている。これなら、森の中を探索できるだろう。用意してくれた妖精さんには感謝せねばならないな。

 妖精さんたちにお礼を言ってドックを離れ、作ってもらったばかりの充電ケーブルをスマホに差して充電する。これで、バッテリー切れの心配はないだろう。当面はこの前線基地跡地にお世話になるのだ、周辺を開墾しておかねば、飲まず食わずで餓死とかいうシャレにならない冗談をやらかしてしまう。それだけはごめんだ。

 俺は弾倉の残弾数を確認し、ライフルを両手で抱えて鬱蒼とした森の中へと飛び込んでいった。

 

「綾波、抜錨!!って、これ妹のセリフか……」




良質なタンパク源が魚くらいしか思いつかん。

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