特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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なんとか、畑までの路線は開通。


俺、トロッコに乗ります。

 タブレットを片手に――スマホじゃ画面が見にくかったため、タブレットに切り替えた――作業を開始して一時間近く、ほんのわずかな距離ではあるが線路ができた。あとはこれを伸ばして畑まで持って行けばいいのだが、これがまた難しい。常に車軸の固定されたトロッコを転がす以上、レールは常に平衡を保っていなければならず、当然常にまっすぐな一本道というわけでもないので少しずつ曲げて緩やかなカーブを作っていく必要がある。ゆるすぎると曲がらないし、きつすぎると曲がり切れずに脱線する。線路敷くのも大変なんだな、鉄道会社の皆様、いつもご苦労様です。

 畑までの道のりはシャベルで掘っているが、地ならしはすべてヒトマルに一任している。まさか、ここへきて無限軌道(キャタピラ)がこんな風に役に立つとは思わなかった。ちなみに、今の彼女はキャタピラで掘った地面の上を走破しつつ背中に括り付けたトンボで地面を均す作業に従事してもらっている。建造されて以降、何もすることがなくてふてくされていた彼女に与えられた初の任務に、心なしかウキウキしているようにも見える。そういえば、ソ連では戦車をトラクターとして活用していたとどこかで聞いたな。今度からは土木作業に従事してもらおうか。

 

「畑までの道のりはできたわ、あとは線路を敷いていくだけよ」

「速いな、ヒトマル。トンボ外して、次は畑のほうを耕してくれる?」

 

 俺のその指示に、「りょーかい」と軽く返すヒトマル。畑のほうは任せて、線路を敷く作業に戻ろうとすると、もうお昼過ぎになっていることに気付いた。さて、作業を一時中断して昼飯にでもするか。それはそうと、今日のメニューはなんだったか、と考えていると、なぜかそうめんが出てきた。なんでも料理長曰く「本当はそばを打ちたかったがそば粉がなかったため断念し、かといってうどんも飽きただろうからもらったばかりのそうめんを湯がくことにした」とのことだ。それはいいのだが料理長、薬味のネギがないのだが……

 

「めがいたくなったのであれはきらいです」

 

 それは玉ねぎだろ、とツッコみたい衝動を抑え、黙々とそうめんを啜る。いったいどれだけ湯がいたのかは知らないが、だいぶ量はあったはずだ。だが、戦艦ふたりと元戦艦ふたりのおかげか、一本も残すことなく完食できた。ちなみに、ここで赤城と加賀さんとはお別れだ。またいずれ会おう。

 

「今日のところは畑までね、明日からも同じことをすると思うと少し憂鬱ね」

「なんでです?」

「炎天下での作業、嫌なのよ」

 

 おう、文句言ってんじゃねーぞモヤシ戦艦、と土佐に心中でツッコみつつ、作業することさらに数時間、やっと畑までの路線が完成した。ちなみに、肝心のトロッコはすでに完成しているらしく、今畑まで運んできてくれているとのことだ。それにしてもトロッコか……一回やってみたかったことがあるんだよな。っていうか、乗ってみたい。

 

「これ、乗ったら楽しいかな……」

「せっかくの路線開通記念です、綾波さん、みんなで一回ずつ乗りましょう」

 

 何やら無駄にキラキラした不知火の提案により、俺たちは開通したばかりのトロッコでスリル満点のジェットコースター気分を堪能した。ちなみに、一番はしゃいでいたのがそう見えない不知火であったことは併記しておく。




けど、当面リヤカーがお役御免になることはなさそう。

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