俺、今後の方針を考えます。
俺が綾波となってから早12日、戦力も充実してきてある問題に直面した。今後の方針が全く決まってないのだ。人類側に協力しようにも、妖精さんや潜水艦娘の人間不信のせいでそうもいかず、かといって敵対すれば袋叩きにされて全滅するのが目に見えている。敵対せず、そこそこ協力という中途半端な関係を作るには、海賊か傭兵以外の道が思いつかず、和平的にここを基地としてする方法を見いだせずにいた。
傭兵は高給取りとして有名とは聞いたが、その分保証もつかず給与も歩合制というらしい。修理費と弾薬費、燃料費を引いたら自分の手取り、という単純な計算だが、報酬を高く稼ぐには被弾を抑え、弾薬の消費を抑え、燃料の消費を抑えなければならない。あまりバカスカ使い込むと、貰った報酬を経費で食い潰してなお足りない、という負債ルートまっしぐらなシャレにならない事態になりかねない。
海賊は法に縛られず自由に過ごせるのが強みだが、法が通用しないが故に会敵次第問答無用で殺される恐れがある。海賊は発見次第殲滅してよい、という国際法を聞いたことがある。つまり、海賊は何物にも縛られない自由と引き換えに、常に命の危険に晒されるというリスクを伴う。燃料、弾薬、食料は身分を隠して買い付けるか、輸送船か正規軍の基地を襲撃して奪うかの二択になる。個人的にはあまりやりたくない。
「傭兵か海賊か、いずれにせよ俺たちにマトモな未来はなさそうだな」
――それを選んだのはあなただったはずですよ、綾波としては人類側を敵に回すようなことはしたくありません――
………綾波のやつ、珍しく自分の意思を表明してきたな。だが、人類側を敵に回さずにここを独立化させる方法なんてあるのか?だが、海賊といえど鎮守府を味方につけて行動する方法もあるはずだ。かの有名な海賊漫画では、海賊の身でありながら軍に協力している者もいたはずだ。確か、なんといったか……と思い、思考が完全にそっちに傾いていることに気付き、軽く頭を振って雑念を振り払う。
「綾波、人類に敵対せず、なんとかうまくやっていく方法あんのか?俺不安だよ……」
――何弱音吐いてるんですか、それなら敵対せずにうまくやっていく方法を考えればいいだけのことでしょう?――
「それができりゃ、苦労するかよ。その方法が見つからねぇから悩んでんだろ」
――はぁ……では、こちらから鎮守府側に出向いてみましょう。望んだ答えが手に入るかは知りませんが――
「悩んでねぇで行動しろ、ってか?わかった、やってみる」
綾波に背中を押されはいいが、やはり不安は付きまとう。鎮守府側に出向くとは綾波が提案したのだが、加賀さんのいる鎮守府でいいのだろうか?そうなると、一昼夜かけて移動せねばならなくなるし、辛いものとなるだろう。時刻は現在05:00、今から行けば、頑張って夕方、遅くとも日付が変わる前には着くだろう。妖精さんたちに、戦闘糧食のおにぎりをもらい、建造を最低値で二回回して放置して鎮守府へ出かけることにする。
「待ちなさい、私も行くわ」
「綾波さんの護衛、勤めさせて」
天城と土佐が、唐突に俺の護衛を買って出たのでどうしようかと困惑していると、「いいんじゃないですか?」と綾波が苦笑しているのがわかり、俺はその厚意を素直に受けることにする。工廠長と料理長を艤装の中に乗せ、鎮守府に向けて抜錨する。うまくいけばいいが……