「なぁ、綾波。毎日二回の建造は許可してくれてもいいよな?」
――ええ、毎日二回。それ以上は許可しません――
加賀さんからの相談を受けた次の日、戦力を増強しようと建造を回そうとして綾波に交渉したところ、なんとか一日二回の建造を許可してくれた。まるで提督と秘書艦の関係だな、と苦笑しつつ、俺は最低値で回す。はてさて、誰が来るのやら。駆逐艦や軽巡洋艦ならいいなぁ、と勝手に期待しつつ、開いた扉の先にいる艦娘を眺める。
「ようやく海に出られるのね、胸が高鳴るわ。………今浮桟橋とか言ったの誰!?出てきなさい!!」
………もしかしなくても、コイツ赤城の姉のほうの天城か?それとなく聞いてみると、そうだと返ってきたので、天城型巡洋戦艦であることが確定した。………っつーか、なんでここ未成艦やら戦車やらがポンポン出てくるわけ?そのうちイージス艦も出てくるんじゃないか?そんな不安を抱えつつ、もうひとつの開いた扉を見やると、またも未成艦とご対面することとなった。
「大淀型軽巡洋艦二番艦、仁淀です。作戦指揮は不慣れですが、頑張ります」
………また未成艦か……だが、軽巡洋艦なだけまだマシといったところか。遠征要員として、しばらく頑張ってもらおう。そう思い、仁淀を旗艦として資材集めに奔走してもらうため、周辺海域へと出撃させた。遠征で安定した資材を確保できれば、今後の基地運営も楽になるだろう。そう思って待っていると、仁淀艦隊が資材とともにどういうわけか潜水艦を七隻拾って帰ってきた。………捨ててきなさい。
――いや、潜水艦は犬猫じゃないんですから。助けてあげましょうよ――
「………それもそうか……助けてやるか」
現状潜水艦娘のメンタルがアレだからなぁ……と目の死んだ潜水艦娘を眺めつつ、仁淀達が拾ってきた潜水艦娘をどうしようかで悩む。拾ってきたのは伊58、伊168、伊19、伊8、伊401、呂500、U-511の七隻を拾ってきた。その全員がげっそりとやつれており、頬はこけ、目の下の隈がくっきりと目立ち、さらに手足に至っては華奢を通り越してヒョロヒョロであり、もはや自立できるかどうかすら怪しい。こいつら、もしかして……
「なぁ、綾波。こいつらもしかして……」
――ええ、間違いなくブラック鎮守府の所属だった潜水艦でしょう。そうでなければ、あんなにやつれてなんかいません――
「とりあえず、こんなんじゃ口も利けんだろ。妖精さん、
「入渠」と聞いて、ガタガタと震えて逃げ出そうとする潜水艦を引っ掴んでリヤカーに乗せ、修復材の溶け込んだ湯船に次々に潜水艦を放り込む。そうして放置すること十分近く、なんとか元気になってくれた彼女たちを代表して、伊168がお礼をする。
「助けていただき、ありがとうございます。だいたい予想はできると思うんですが、私達、ブラック鎮守府から逃げてきたんです。潜水艦を資源回収の道具扱いして、駆逐艦に至っては……もう思い出したくもないわ」
自分たちの鎮守府のことを思い出し、顔を真っ青にしてガタガタと震える伊168。どうやら、ほかの潜水艦も同じ考えなのか、涙目になって鼻を啜っている。しかもU-511に至っては「もうやだ、ドイツ帰りたい……」としか言っておらず、せっかくはるばる日本まで来たのに日本にトラウマを抱いてしまったようだ。
「………綾波、こいつら助けるぞ」
――もとよりそのつもりです、部屋を用意して、ゴロゴロしてもらいましょう――
そうだな、と俺は答え、拾ったばかりの潜水艦の処遇に思考を傾けることにした。
U-511「もうドイツ帰りたい」