特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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どうやら、艦娘も一枚岩ではない模様。


俺、新艤装を手に入れます。

「艤装の適正値、つまり適正さえあれば駆逐艦でも艦載機の運用や弾着観測射撃ができると?」

「ええ、適正さえあれば駆逐艦が艦載機を飛ばしたり戦艦や空母が雷撃戦に参加したりできるわ。ちなみに、私には改装前の「戦艦加賀」の適正があるわ」

 

 ほかの適性については知らないけど、と付け加えてタブレットに釘付けになった加賀さんを横目で眺めつつ、俺は適性検査の結果を待つことにする。その間、退屈なのでスマホで時間つぶしをしていると、ふとここの電力がどこから供給されているのか気になってきた。風車はなかったから風力発電ではないし、火力発電というわけでもないだろう。火山はないから地熱発電もないし、水力発電にしても供給できる電力が足らなすぎる。手の空いている妖精さんにそれとなく聞いてみると、水力発電と波力発電で基地運営に必要な分を賄っていると答えてくれた。

 だが、いくら水力発電と波力発電で賄っているとはいえ、本格的に基地が稼働した場合、確実に電力が足らなくなる。水力と波力以外で、効率よく電力を生産できる発電施設は欲しいところであるが、そんな都合のいい施設があったものかと考え、ひとつの答えに行きつく。そうSF世界ではすっかりお馴染みのあの施設、核融合炉である。ウランとプルトニウムを使う核分裂炉よりは比較的クリーンで安全性にも期待が持てる未来技術ではあるが、当然ながら管理運営も困難を極め、いまだ研究段階で足踏みしているのが現状である。

 そんな核融合炉を実用化できないものかと妖精さんに持ち掛けてみたところ、本土の鎮守府から妖精さんを派遣してくれるのなら運営も容易になると返ってきた。………ちょっと待て、お前ら核融合炉造れんの?そうだとしたら、もはやチートどころじゃない気がするんだが。そのうち、かの有名な宇宙戦艦をホイホイ量産とかしそうで怖い。せめてイージス艦娘と戦車娘の量産程度で勘弁してほしいと願うばかりである。もし、核融合炉を生産できる技術があるとわかれば、それがきっかけで人間同士の戦争に発展する恐れがある。それだけは絶対に避けたい。

 

「にんげんは、せんそうをやめられないいきものなのでしかたないのです」

 

「そうは言うがな、知性のせいで滅びるまで分かり合えないとか悲しすぎるだろ。核融合炉の技術は秘匿するとして……って、問題がまた増えたじゃねぇか」

 

 現状でさえ、ここを異端視する比叡と霧島のような思想を抱いた艦娘がいるとわかったうえに、本土の支援を受けられないとなったら俺たちは間違いなくこの孤島で干上がる。どうすればいいのやら、と悩んでいると、新しい綾波の艤装が完成したと報告が入る。その新しい艤装とやらを見に行くと、見覚えのある飛行甲板と弓、そしてやたらとデカい主砲を三基備えた戦艦の艤装が並んでいた。あとで聞いたのだが、艤装の適正値で二番目に高かったのが加賀さん、三番目が北上、四番目が大井、五番目が大和だったという。

 

「一に綾波、二に加賀さん、三四にハイパーズ、五に大和、ってか?」

 

 やや皮肉交じりに聞くと、妖精さんはふんすと鼻息とともにふんぞり返って答える。いや、威張んな。

 

「ところであなた、この「スマートフォン」と「タブレット」っていうやつの、簡易量産型でもいいからいくつか手土産に持って帰りたいんだけど、いいかしら?」

「構いませんよ、スマホとタブレットなら友好の証として差し上げます。………私の相棒はあげませんが……」

 

 さすがにあなたの相棒を取り上げる気はないわ、と理性的な面を見せ、スマホとタブレットの簡易量産型をもらって帰っていく加賀さんご一行。俺はできたばかりの艤装を眺めつつ、ふとあることを思い出す。

 艦載機の飛ばし方聞くん忘れた……




土佐「ついていきたかった……」

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