「あやなみさん、あやなみさん。けんぞうのしすてむがふっきできたので、あたらしいなかまをけんぞうしたいのです」
「そうだな、いつまでも俺ひとりじゃ戦力的に乏しいどころの話じゃないし、建造回して仲間を増やすのは悪くない判断だな」
三水戦からの支援を受けてから二日後、工廠ドックから建造システムが復帰できたという報告が入り、俺はドックへと向かう。資材を確保するための遠征要員や、ここを守るための防衛要員、いずれにせよ人出は欲しい。大和とか贅沢なことは言わんから、戦力増強がしたい。
とりあえず、最初の建造だからあまり資材を放り込むわけにはいかないだろう。初めての建造だから、資材はオール30で回そう。運がよければレアな子が建造できるはずだ、たとえば夕張とか。
「資材は入れたし、あとは回すだけか」
――綾波が出たらどうしましょうか?――
「そん時は那珂ちゃんよろしく解体だな」
なんせ解体のアイドルって呼ばれてるくらいだからな、何の問題もないだろう。さて、どんな子が出てくるのやら。駆逐艦?軽巡洋艦?重巡洋艦?いずれにせよ、新しい仲間を歓迎するのだ。派手に迎えてやろう。そうして待っていると建造時間が終わったらしく、扉が開く。
「随分待たせたようね、私はヒトマル。狙った獲物は逃さないわ」
「ひとまる?いえ、しらないこですね」
お前はどこの赤城だと妖精さんに突っ込みたい衝動を抑え、件のヒトマルを観察してみる。右肩にはやや大型の単装砲が一門あるだけで、ほかに火器といえば左手の機関銃くらいなものか。火力的な面では少々不安になりそうだ。背中に背負っている主機からはアンテナが伸び、高度な通信機器を備えているであろうことがわかる。ゲームのほうでは未実装の艦娘が先行実装されたか何かだろう、と思っていた。彼女の靴を見るまでは。革製のロングブーツの下にある
「ヒトマル、お前もしかして……
「ええ、戦車よ。身体が小さい分、小回りが利くの。潜伏なら任せて、そういうのは得意分野よ」
………艦を造ったら戦車ができた……今の俺は肉じゃがの材料を渡したはずなのに麻婆豆腐を作られた時のような心境である。なんでドックから戦車娘ができるんだよ……百歩譲って補給艦や給油艦ならまだ納得もできよう、だが、初建造でできたのが戦車ともなればなんとも言えない気分になるのは俺だけじゃないはずだ。とりあえず的な感じでもうひとつのほうも最低値で回してはいるが、今度はイージス艦でも引き当てそうで怖い。不安を抱いて開いた扉の先にいたのは、俺の予想をはるかに超える子だった。
「加賀型戦艦二番艦、土佐よ。あなたと共に、暁の水平線に勝利を」
………喜んでいいのか?これ。
ヒトマル「初期案じゃ、私そのものに水上航行能力付加して出そうとしてたみたいよ」