特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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加賀さん、奮闘す。


番外編:鎮守府の日常・中編

 艤装の整備に工廠ドックへと来た加賀は、飛行甲板の修復のために明石を探す。飛行甲板は夕張よりも明石に頼んだほうがいいし、何より綾波に助けられている分融通が利きやすい。艦載機の搭載スペースを削ってでも資材や食料、服や日用品を搭載できるよう具申するためには、事情を知っている明石のほうが頼みやすい。空母艦は単独で出撃することはない、護衛の戦艦や水雷戦隊が必ず周囲を囲み、航空戦の要となる空母は必ず2の倍数で編成される。必然的に二人一組(ツーマンセル)を狙ったかのような編成だが、なぜ2の倍数にこだわるのかは私にもわからない。

 

「明石、少し頼みたいことがあるの」

「ちょうどいいところに来てくれましたね、加賀さん。実は、格納庫のどの区画を削ろうかで悩んでいたんですよ」

「話が早くて助かるわ、あなたに頼んだのは正解だったみたいね」

 

 どうやら、何を頼まれるかは言う前から察していてくれたらしい。話す手間が省けた。あとは改修箇所を指定して明石に任せるだけでいい。加賀は格納庫の削る区画を指定し、その後を明石に一任して工廠ドックを去る。これで輸送任務も楽になるはずだ。後々赤城や二航戦、五航戦の面々にも改修を加える予定ではあるが、そのためには彼女たちを仲間に引き入れる必要がある。飛龍と蒼龍はいいとして、問題は翔鶴と瑞鶴だ。あの子達を仲間に引き入れれば、格段に輸送効率がアップするのだが、先は難しそうだ。

 

「あの子の説得に妖精さんたちが折れるのが先か、独断の鼠輸送がバレてあの子達が干上がるのが先か……嫌なチキンレースね」

 

 あの何もないような孤島で健気に頑張る若い命を散らせるわけにはいかない、だが、そのためにはこちらもこちらで提督を説得しておかねばならない。仮に妖精さんたちが綾波の説得に折れたとしても、こちらの受け入れ態勢が整っていなければ彼女の努力も空振りに終わってしまう。だが、まずやるべきは鼠輸送を支援する仲間集めだ。金剛型の姉妹は事情を話せば協力してくれるだろう、だが、北上LOVEな大井は難しそうだ。「駆逐艦?そんなのほっとけばいいじゃない」と言いそうだし、北上も北上で当てにならない。今の北上は大井のイエスマンでしかない、大井に押し切られてしまえば「大井っちが言うんなら仕方ないよねー」と付和雷同してしまいそうだ。

 

「問題はこっちも山積してるし、どうしようもないのはどちらも同じね……」

「加賀さん、どうかしたんですか?」

 

 綾波をどう迎え入れようかで悩んでいると、後ろから赤城に声をかけられる。赤城さんなら、事情を話せば協力してくれるはずだ。そう思った加賀は、意を決して一連のことを話し出す。

 

「………なるほど、つまり加賀はその孤島で奮戦する駆逐艦を保護したいんですね?」

「ええ、できれば、赤城にも協力してほしいんだけど、どうかしら?」

「水臭いわね、加賀。私たちふたりで一航戦でしょ?何かあったら遠慮なく言って、それが加賀のやりたいことなら全面的に協力するわ」

 

 ………どうやら、話して正解だったらしい、やはり頼りになる相方だ。加賀はその相方に「ありがとう」とだけ言い残して次は翔鶴と瑞鶴の説得に向かう加賀。あの子達を味方に引き入れれば、綾波も助かるはずだ。五航戦の部屋にたどり着いた加賀は、部屋に入るなりこう切り出す。

 

「翔鶴、瑞鶴、あなたたちに頼まれてほしいことがあるの」




加賀「仲間集めも大変ね」

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