特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

13 / 121
第三水雷戦隊より、支援物資が届きました。


俺、艦娘と交流します。

――おはようございます、昨夜はよく眠れましたか?――

 

「目覚めスッキリ、と言いたいところだが、今後の基地運営を考えてて寝不足でな……」

 

 ふぁ、とあくびしつつ身体を伸ばして眠気を飛ばす。当初の予定では、妖精さんたちを連れてどこかの鎮守府に拾われるか、開拓したこの前線基地をアピールして本土から提督を派遣してもらう予定だったが、妖精さんたちの人間不信のせいでそのどちらもができなくなった。理想としては、艦隊指揮や鎮守府の運営に長けた艦娘――たとえば大淀――が仲間になってくれればいいが、そうそう都合よく遭遇(ドロップ)とはいかないだろう。

 妖精さんたちの福利厚生やら艦隊運営やらを考えつつ、綾波の制服に着替えていると、突然電話がかかってくる。発信先は工廠ドックからか、何か新しいものでもできたのか?と考えつつ電話に出ると、どこか困惑した感じの工廠長がこちらに判断を求めてくる。

 

「あやなみさん、せんじつきたさんすいせんのみなさんが「あやなみさんにわたしたいものがあるからとおしてくれ」といっているのですが、どうしましょうか?」

 

「わかった、今行く。俺が行くまで、誰一人として通さないでくれ」

 

 わかりました、と工廠長が答え、電話を切って工廠ドックへと急ぐ。一昨日助けた礼なら、島の開拓作業でチャラになったと思ったのだが、行ってみるとどうやら川内と神通の気が済まないから個人的な支援に来たらしい。川内からは綾波の制服の予備が数着と下着、神通からはリンスインシャンプーとボディソープ、それぞれの詰め替えパックがいくつかとボディタオル、那珂ちゃんからは洗濯用洗剤と漂白剤、柔軟剤の詰め合わせセットに歯ブラシと歯磨き粉をもらった。この支援には綾波も予想外だったのか、ややおたおたして礼を述べる。

 

「こ、こんなにたくさん……ありがとうございます」

「いいって、補給と修理の礼は返したけど、命拾ってくれた礼はまだ返してないからね」

「ええ、命を救っていただきながら恩返しをしないなんて『華の二水戦』の名が泣きます」

 

 ………やっぱり、神通さんは義理堅い性格の人のようだ。だが、鎮守府に所属しているはずの三水戦のメンバーがなぜここに?と首を傾げていると、今まで黙っていた吹雪が「三水戦独断の鼠輸送です」と答えたため、俺は自分のことでもないのに肝を冷やす。独断で鼠輸送って、下手したら処分されるぞ、吹雪。まぁ、追い出されたらうちで拾うからいいんだけど。

 川内型の三人に服や日用品をもらい、三水戦はそのまま帰っていく。段ボール箱を抱えて自室に戻り、荷物を置いて食堂へと向かう。今日は何かの魚を焼いた焼き魚と山盛りの白米、そして白菜の浅漬け。一品増えるだけで豪華に見えるものだな、と感心し、俺はのんびり朝食タイムにいそしむ。そういえば、昨日植えたじゃがいもは本当に収穫期を迎えているんだろうか。もし、できていたら当面の間はじゃがいも祭りになりそうだ。

 

――じゃがいもの収穫を終えたら、次は妖精さんたちの福利厚生を考えねばなりませんね――

 

「わかってる、そのためにどんな福利厚生を望んでいるか、アンケートを取る必要があるな」

 

 妖精さんたちの人間不信のせいで、人間に頼ることができない以上、艦娘だけで完結した基地運営をしていかなければならない。だが、その前に妖精さんの待遇を改善することが最優先だ。そう考えた俺は、妖精さんへの新しい待遇を考えつつ、じゃがいもの収穫に向かった。




もうそろそろ、リヤカーじゃ限界あるかも。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。