特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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いくら上層部(うえ)の首がすげ替わっても、変わらないものは変わらない。


俺、脱走艦から事情を聞きます。

 脱走艦に遅い朝食を振る舞いつつ、これから何を聞こうかと考えているのだが、一向にまとまる気配がない。原因はだいたいわかる。先程から俺の膝の上を占拠して離れない平戸と対馬のせいだ。白露と時雨がヘトヘトだったのを見かねて代わりに抱えたのだが、どういうわけかその一件が原因で懐かれてしまったらしい。

 人の膝の上で朝食を食べてご満喫なのはいいが、そろそろ離れてくれないか?いい加減足痺れてきたし、第一俺は椅子じゃない。そのことを平戸と対馬に言うと、むくれた表情を浮かべつつも素直に離れてくれた……のはいいのだが、今度は両サイドに椅子をぴったりくっつけてべったりくっついてくるようになった。………そんなに離れたくないか?

 

「はい、ここが一番、安心できます」

「なんだか不思議な感じです、司令の傍にいるような気がします」

 

 提督の傍にいるような感じ、とは言ってもらえたものの、実は海防艦の指揮の経験はない。というのも、俺がこの世界に来たのはアニメ艦これが放送されていた年で、海防艦の実装はその二年後になる。故に、艦種そのものを知らなかったはずの海防艦に懐かれるというのも変な話だが、好意を抱かれるというのは悪いことではない。もっとも、重要なのは懐かれた海防艦ではなく、脱走艦と追撃してきた艦隊との関係性のほうだが。

 

「ああ、もしかして追ってきた艦隊との関係性が気になるって感じですか?たぶん、脱走したのでただ連れ戻したかっただけなんだと思うんです」

「つまり、討伐艦隊の可能性は低い、と?」

「はい。それに、討伐が目的ならここへたどり着くより以前に()()()()()()()()()()

 

 そう言って、例の追撃艦隊の行動を予測する夕雲だが、別のモノ(藤永基地)を討伐しにきた可能性もあるのだ。もっとも、それを言うのも酷な話なので、言わないでおくが。そんなこんなで、脱走艦たちが遅めの朝食を食べ終えたのだが、ここで別種の問題が生じた。お昼を目前に、やることが全部なくなってしまった。脱走艦は迎えたし、保護の体制も十分なはずだ。あとは、この脱走艦たちの個室を用意すれば……と考えていると、暇を持て余していたのであろう第十七駆逐隊が食堂へ来ていたことに気づく。

 

「夕雲、やはりここへきたのか」

「磯風、転属先ってここだったの。『外洋泊地の補給基地』、()()()()いいところに拾われたようね」

 

 ………先日大本営から正式に命名されたばかりなのに、なんか早々に変な渾名で呼ばれてるような気がする。少なくとも、信頼されているであろうことは間違いないのだろうが。

 なお、追撃艦隊のほうだが、討伐する気はなかったようで、こちらが事情を説明すると早々に退却を始めたという。




次回、新装備開発。

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