三笠提督たちの歓迎会で盛り上がった次の日、俺はヒトマルとナナヨンに呼び出され工廠にいた。
「はい、綾波。頼まれてたAPFSDSと戦闘糧食、持ってきたよ。私がAPFSDSと
「それはF-2……じゃなくてバイパーゼロに頼むしかないだろうな。現行のメンツでガンバレ食持ってそうなのバイパーゼロくらいしかいないからな。またあとで頼みに行くか」
戦闘糧食と新型砲弾の開発のメドは立ったし、外洋泊地の支援は三笠提督たちと相談するとして、現状の悩みといえば間取りの悪い客室をどうするか、である。元々が艦隊決戦や敵基地攻略のためにやってきた艦隊をおもてなしする目的で設備がものすごく豪華なのだが、お世辞にもホテルとは言いがたいほど使い勝手が悪い。短期間滞在するだけならまだ割り切ってしまえるが、実際に住むとなればだんだん不満も募っていくというもの。
艦娘、戦車娘、戦闘機娘、戦闘ヘリ娘と、現状でも賑やかなラインナップなのに、このバラエティー豊かなメンツを満足させるには、どうしても規格を統一するとどこかから不満が噴出してしまう。「履帯に絡む」を理由にカーペットを嫌がる戦車娘を筆頭に、これからどんどん増えていくであろう不満にどう対処しようかと頭を抱えていると、ヒトマルがどこか心配そうに──というよりはやや呆れた表情で──こちらを見ていることに気づく。
「綾波、相変わらずひとりで抱え込んで。またあなたの悪い癖が出てるわ、もっと周りを頼りなさいよ」
「………すまん、あれこれ問題が多すぎてな。正直、どこから片付けていけばいいか分かんねえんだ。その点も含めて、協力してほしいんだが、いいか?」
「当然よ、そのために私たちがいるんでしょ?」
「ああ、ありがとう」
ヒトマルに一言礼を言って徹甲弾と戦闘糧食を持ってまずは明石のところへ向かおうと思った矢先、散歩気分でフライトしていたらしいバイパーゼロから無線が飛んでくる。無線の内容によると「小さな子供を抱きかかえたボロボロの駆逐艦たちが白旗を掲げて藤永基地に向かって航行している」とのことでバイパーゼロも対応に少々悩んでいるらしい。
「わかった、しばらくは周回飛行して様子を見てくれ。至急捜索隊を編成して派遣するから、バイパーゼロはその場で待機してくれ」
『OK、しばらくは様子見でいいんだね。けど、今キャッチした後方の艦隊らしい反応はスルーでいいの?なんか追撃してるみたいな感じだけど……あっ、白旗掲げた艦隊の画像、そっちに送っとくね』
「追撃艦隊か、そうでないかはわからんが、ともかく偵察の必要があるな。見つかるなよ」
『ボクを誰だと思ってるの?
「それは頼もしい、偵察任務、任せたぞ」と言って無線を切り、送られてきた艦隊の画像を見る。その画像を見ると、白旗を両手で掲げた岸波を筆頭に、自分たちも危ういのに周囲を警戒する夕雲と長波、怯える子供をあやしつつ、なんとか安心させようと苦心する風雲と巻雲、そしてその小さな子供──捜索隊に画像を見せて、海防艦と教えてもらった──を抱きかかえてやや焦りの表情を浮かべている白露と時雨。
捜索隊の派遣と同時に、艦隊を第二戦闘配備で待機させていつでも後方の追撃艦隊を迎撃できるようにする。さぁ、
海防艦、初登場。