特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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超久々の日刊更新。


番外編:命の恩人・中編

 マーシャル諸島周辺海域に到着し、調査のため艦載機の高度を下げたのはいいが、今のところどの島からも何の反応もない。本当に何もないのか、あるいは息を潜めているのか。どちらにせよ、この全域を調べねば終わらないのも確かだ。そう思い、私は手近にあった島に接近する。どうやら、この島も小規模な基地が建設されてはいるが、人の気配は見当たらない。建設途中で放棄された基地なのか、あるいは提督が失踪した基地なのか、そのあたりは詳しく調べてみないとわからない。

 その後も――大小の違いはあれど――ちらほらと放棄された基地を発見し、無事に帰艦。妹たちと共に三笠提督に先の映像を報告書代わりに提出して終わり……かと思いきや、そうでもないらしく、今度は出撃依頼を頼まれる。だが、マーシャル諸島までは勘弁してくれ。あそこへは今から行ったら時間が足らない。そんなことを考えていると、こちらの意図を酌んだのか三笠提督が苦笑しつつ「それはないから安心していい」と言ってくる。

 

「先ほど、トラック泊地から救援要請が入ったの。救援要請とはいっても、戦闘絡みではないわ。「食糧足らないから、そっちの食糧分けてくれ」って内容よ。要は、食糧支援を頼まれたってわけ」

「まったく、本土は何やってんのさ。味方の基地干上がらせるわ、無駄に基地作って捨てていくわ、やる気あんの?」

 

 葛城のボヤキももっともである。だいたい、うちよりずっと稼働歴の長いトラック泊地が、本格稼働してほんの数日にも満たない藤永基地に泣きついてくること自体異常だ。葛城の言う通り、やる気がないとしか思えない采配、あそこにいるのも、同じ味方のはずなのに。

 そんな愚痴をよそに、雲龍型で何をどのくらい持っていくのかが決まる。私は米と小麦、天城は各種野菜、そして葛城は新型の艤装。艤装については、ライセンス契約ではなく、貸与(レンドリース)という形になっており、食糧と新型艤装の弾薬を支援する代わりに、年間10万円の契約料を支払ってもらう手筈になっている。

 各自が支援のための荷造りを終え、トラック泊地へと進路を取る。今回の護衛は川内型、おそらく何もすることがなく、退屈していたのだろう。艦載機は荷物を積むために全機降ろした。なので、索敵は川内型の放った水偵が頼りとなる。その後は何事もなくトラック泊地へと着いたのだが、だいぶ時間が遅くなってしまったようだ。現在時刻、18:00。このままでは、無事に帰れそうもない。

 だが、三笠提督からは「無事に帰れそうもないなら、トラック泊地に泊まっていってもいい」と許可をもらっているため、今回はそれに甘えさせてもらうとしよう。おっと、連絡連絡……




Q.なんでトラック泊地が藤永基地のことを知っていたの?

A.トラック泊地などの外洋泊地では、正式稼働前から期待の眼差しを送られていた。

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