特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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北マリアナ諸島の自治権は大本営からもらったものの、その全容を把握しているわけではなかったりする。


番外編:命の恩人・前編

 海賊から足を洗って早一ヶ月、手に入れた平穏な時間を心優しい仲間たちと謳歌しつつ、今は綾波さんや三笠提督の依頼を受けつつ穏やかな日々を過ごしている。綾波さんは優しいので無茶な依頼(オーダー)はしてこないが、その当人が全く休んでいる印象を受けない。というより、働きすぎだ。少しは休んでもいいだろうに。

 

「綾波さん、少し働きすぎな気がします。少しくらい、自分のために休んでもいいと思います」

 

 そう呟くのは、同じく元海賊の神通。どうやら、彼女も綾波さんの過労を心配しているらしく、なんとか休んでもらえないかと悩んでいるようだ。黙々と生真面目に働いているのはいいのだろうが、休まなくては身体を壊す。少しくらいは自分に甘えてもいいのではないだろうか。

 そのことを綾波さんに相談してみると、たっぷり悩んだのちに「わかった雲龍、今日一日たっぷり遊んでくる」と返してくる。どうやら、今日一日はお休みになったようだ。おそらく、遊び相手は――どこで無くしたのかは知らないが――()()()()()()()()()島風だろう。仮面ライダーとやらでやたらと盛り上がっていたため、おそらく遊ぶ内容も仮面ライダーに関連したものになるのだろう。

 そんなことを考えていると、どんな内容で遊ぶのか決まったのであろう綾波さんがいそいそと準備を始めているのが見える。おそらく、同じ話題で盛り上がれる友達が見つかって気分が舞い上がっているのだろう。完全に顔に出ている。

 そんな綾波さんを横目で眺めつつ、今日の予定を考えていると、三笠提督から周辺海域の探索を頼まれる。この北マリアナ諸島は、北のパハロス島から南のロタ島で構成される南北に伸びた元アメリカ合衆国所有の諸島で、まだ探索の済んでいない島が未だいくつもある。周辺諸島と海域を探索し、活動の範囲が広がれば今後のプラスになるはずだ。そう思って艦載機を飛ばそうとして、三笠提督に止められる。どうやら、今回調査してほしいのはマリアナ諸島周辺の海域ではなく、マーシャル諸島周辺の海域らしい。

 しかし、マーシャル諸島か……そこに何があるというのだ?だが、三笠提督の依頼とあらば受けないわけにはいかない。そう思い、気持ちを切り替えて艦載機をマーシャル諸島海域へと飛ばす。何かあれば役に立つし、何もなければ、それでいい。そうして艦載機を飛ばしておよそ二時間余り、ようやくマーシャル諸島周辺海域へとたどり着いた。だが、この高度からは何も見えない。もう少し下まで下がる必要がありそうだ。

 このあたりに何があるのかは正直言って何も知らない、パラオよりも西の海域で生まれ、そしてすぐに追放されたがゆえに、マリアナよりも東の世界というものを私たちは見たことがない。もっとも、基地を乱立してその度に中途半端に放棄し続けてきた皇国の間抜けな行動については三笠提督や綾波さんから聞かされており、どうやら藤永基地(ここ)もまた、そのひとつだったらしい。

 何か見つかればいいのだが、などと心中で呟きつつ、私は艦載機の高度を下げた。




現在雲龍が東方の海域を、天城は西方の海域を、葛城は南方の海域を調査中である。

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