特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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すまない、非常に遅れた。


俺、田んぼを整備します。

 畑での収穫と修復を終えてから90分後、昼食を済ませた俺たちは、次に田んぼへと向かい、田植えをすることに。ちなみに、今回初雪トラクターは入院(メンテナンス)のため、お休みである。もっとも、俺は田んぼの修繕がメインのため、使う機会はなかっただろうが。

 

「うう……何故私がこのようなことを……」

「なんで手で植えなきゃならないのさ……トラクターとかないの?」

 

 畑の収穫はノリノリで対応していたくせに、田植えとなった途端にあからさまな表情でぶーたれる鈴谷型重巡洋艦。おう、畑仕事も田植えも大して変わんねーだろ。文句言うなら、お前ら飯食わさねーかんな。働かざる者食うべからずだ、わかったか。

 俺は心中でそう呟き、文句タラタラな鈴谷型を無視して田んぼの修繕に向かう。あとで知った話だが、ここの田んぼはひとつにつき1ヘクタール――平方メートル換算で確か10,000くらい――はあるらしく、今回の農業島開拓の際に20のスペースを用意したそうだ。そのうち破壊されたのが、ふたつ。三式弾で焼き払われるよりは幾分かマシなのだろうが、それでもつらいものはつらい。まぁ、泣き言を言ったところで詮無いことなので、とっとと直していきますか。

 俺は田んぼの修繕をしつつ、前回襲撃してきた中にいた金剛型ロイミュードに思考を傾ける。あの後知った話なのだが、金剛型ロイミュードが腰に装着したバックルの名は「ゲーマドライバー」というらしく、それとゲームカセット型のアイテム「ライダーガシャット」を装着して変身するらしい。ライダーガシャットはそれぞれ、金剛が横スクロールアクション「マイティアクションX」とSFロボットバトル「ゲキトツロボッツ」、比叡がファンタジーRPG「タドルクエスト」とリズムビート「ドレミファビート」、榛名が近未来FPS「バンバンシューティング」とフライトシューティング「ジェットコンバット」、霧島がルール無用レーシング「爆走バイク」と見切りチャンバラアクション「ギリギリチャンバラ」、そして全員で共通しているのが狩猟ハンティング「ドラゴナイトハンターZ」と、合計9つのガシャットを有している。

 彼女たちがどうやって生まれ、現在の境遇になっているのかは不明な点が多いが、今のところ味方になる気配はなさそうだ。しばらくは様子を見つつ、そのうえで判断しよう。そんなことを手を動かしつつ考えていると、いつの間にか田んぼをひとつ修繕し終えていたらしい。この仕事の速さに自分でも驚きつつ、次の問題に思考を傾ける。次の問題、それは戦闘糧食についてだ。

 現在のところ、戦闘糧食といえば握り飯が主流らしく、それに加えて何かおかずがついてくる、というのが定番なのだそうだが、こういう日差しの強い南方の海域では握り飯などすぐに腐って食えなくなってしまうし、反対に北方の寒い海域では肝心の握り飯が凍り付いていざというときに腹ごなしができなくなる。だとすれば何が最適か、答えは簡単、長期保存に適したビスケットだ。一度ビスケットを焼いて、粉々に砕き、そしてブロック状に押し固めれば、食べやすく、そして疲れた身体にも負担のかからない戦闘糧食が出来上がる。無論、ブロック状のビスケットだけでは少々心許ないため、アルミパウチのゼリーもつけよう。それぞれ、味のバリエーションや食べやすさに関しても考えねばならないが、そこは間宮さんたちが来てからの課題だ。こればかりは、俺ではどうしようもない。

 現在開発の難航している艦砲用APFSDS弾の問題もあるため、余計課題が増えた気がしなくもない。そんな山積みの問題を抱えつつ、田んぼの修繕を終え、田植えを済ませた鈴谷型たちと共に、本島へと帰るのであった。




次回、いつもの番外編。

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