特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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すまない、遅れて本当にすまない。


俺、ロイミュードを討伐します。

 捕虜(ロイミュード)を解放し、こちらの戦力が増えたのはいいが、敵のロイミュードがどれほどのものか不明なため、こちらとしては手が出しにくい。川内ロイミュードはレ級eliteだとは言っていたが、あいつの行動パターンを考える限り、単独で襲撃するとは考えにくい。少なくとも、必ずどこかに取り巻きがいるはずだ。

 とはいえ、その取り巻きが誰なのか、どのくらいいるのかは今のところ不明であり、下手に突撃すれば何もできずに壊滅することはほぼ間違いないだろう。だが、どうやって敵の情報を手に入れれば……と悩んでいると、ずっと黙っていた川内ロイミュードが「ねぇ」と声をかけてくる。いったい何の用だ?

 

「偵察ならさ、例のミニカーすっ飛ばせばいいんじゃない?少なくとも、あのミニカーの制御を奪える奴はいないと思うよ」

「そうは言ってもな、万が一ってこともあるだろ。「いない」って保証はないんだし」

 

 「それにひとり心当たりいるし……」と言いかけてやめたのだが、シマカゼがどこか同意したような目線でこちらを見ていることに気付く。俺の言いたいことが分かったからなのか、はたまた自分も心当たりがあったのか。どちらにせよ、話が通じたであろうことは確かなようだ。

 こちらの戦力も心許ないし、敵の戦力もわからないままではあるが、とにかく迎撃だ。これ以上、藤永基地を蹂躙させるわけにはいかない。シマカゼをライドマッハーの後ろに乗せてレ級eliteロイミュードのところへ向かうと、案の定というかなんというか、今回侵攻してきたであろうレ級eliteのほかに、複数のル級改flagship、タ級flagshipを配下に従え、こちらに向かってきているのが見える。だが、よく見るとその中に金剛型の四人も見える。たぶん、あいつらもロイミュードだろう。

 

「ちっ、余計な真似を……」

 

 その光景を見て、いつの間にかついてきていた川内ロイミュードが毒づく。レ級eliteに対してなのか、金剛型ロイミュードに対してなのかは不明だが、反応をうかがう限りは彼女に対していい状況でないのは確かなようだ。そして、そのまま川内ロイミュードを観察していると、はぁ、とため息をひとつついて身構える。何をする気だ?

 

()()は無理か、もう()()するしかないね……」

 

 どうやら、あのレ級eliteは破壊(スクラップ)が決定したらしい。かわいそうに、と心にもないことを心中で思っていると、川内ロイミュードの容姿が変わっていることに気付く。口元を隠したマフラー、額に巻いた鉢金、右手に逆手で握られた直刀、左手の指に挟まれたクナイ――同じものが左腿にも装備されている――と、全体的に忍者を踏襲したデザインとなっており、閉じられた瞳からは表情を窺い知ることはできないでいる。よし、これからは川内改めて、ニンジャ・ロイミュードと呼称しよう。

 新たに加わったニンジャとシマカゼを引き連れ、レ級eliteたちに向かって突撃する。レ級eliteにしてみれば、ニンジャが攻撃を仕掛けてくるのは想定外だったのか、どこか慌てたような表情を浮かべて応戦している。シマカゼはル級とタ級を相手にしているため、俺は必然的に金剛型ロイミュードを相手にすることになる。ロイミュードである以上、あいつらにも進化態はあるはずだ。

「game startデス」という金剛ロイミュードの奇妙なセリフをきっかけに、俺を取り囲んでいた金剛型ロイミュードがバックルを取り出して装備する。俺やシマカゼと同様に変身できるのか?と考えていると、それぞれ四姉妹の手にグリップガードのついたカセットらしき獲物が構えられていることに気付く。どうやら、シマカゼとのライダーごっこの前に、本格的なライダーバトルを経験する羽目になったようだ。

 

「「「「変身」」」」

 

 金剛から順に、エクゼイド、ブレイブ、スナイプ、レーザーの四人に変身したロイミュードが、一斉に俺に襲い掛かってくる。シマカゼや川内(ニンジャ)の援軍は期待できそうにない以上、ここは自力で踏ん張るしかない。

 

「金剛、比叡、榛名、霧島。ひとっ走り付き合えよ」

 

 俺のそのセリフと同時に、ゲーマーライダーたちが一斉に襲い掛かってくるが、イマイチ歯ごたえというか、はっきり言ってしまえば強くないのだ。まさか、これが本気じゃないだろうな……といらぬ心配をしていると、「ああ、やっぱりか」とでも言わんばかりの反応を返してくる。どうやら、お楽しみはこれからのようだ。

 

 それぞれが「大・変・身!!」、「術式、level2」、「第弐戦術」、「二速」と、思い思いの掛け声とともにバックルのレバーを開く。すると、さっきまでわちゃわちゃ動いていた二頭身くらいのSDキャラたちが、突然七頭身くらいのリアルキャラに変身したのだ。これには俺も、さすがに驚かざるを得ない。………どう見てもバイクにしか見えない霧島も含めて。そんな光景をボーっと眺めていると、レーザーに乗ったエクゼイドが、ハンマーと剣を組み合わせた手持ち武器を構えてこちらに向かってきているのが見える。これで実質三対一か、しかし数の上での不利は覆せそうにはないようだ。

 

「よそ見している場合ですか?私はこっちですよ!!」

「ったく、お前らと遊んでるヒマはねぇってのに……」

 

 悪いがブレイブ、遊び相手が欲しいなら他をあたってくれ。俺はお前らと遊んでるヒマはないんだ。あのレ級elite艦隊を処分しないと、藤永基地が蹂躙される。もし、そうなったら……と心中に焦りを抱えつつ戦っていると、ブレイブの反応が変わる。おそらくは、こちらの事情を察したのだろう。エクゼイドのところへ向かい、何やら相談をしている。このまま敵対したままでいるのか、路線変更してこちらの味方となるのか。

 

「Hi destroyer、協力playデス」

「いきなり攻撃してきといて勝手なこと言って……」

「ごめんね、私らつい昨日あたりに今の身体手に入れたばかりだから……」

 

 どうやら、自分たちのこともこちらの事情もさっぱり分かっていないらしい。だが、それはそれで好都合と言える。うまくいけば、こちらの戦力となりうるかもしれないからだ。そう考えた俺は、金剛型ロイミュードと共闘することにした。ふと見ると、ル級とタ級の軍勢はすでにシマカゼによって屠られている。あともうひと押しだ。

 

「さぁ、ラストスパートだ」

「これでしばらくは、お前らロイミュードもおとなしくなってくれるとありがたいんだがなぁ……」

 

 そんな詮無いことを愚痴りつつ、俺たちは必殺技の発動体制に移る。俺はヒートキックマッハー、シマカゼはクリムゾンスマッシュ、金剛型ロイミュードはそれぞれクリティカルストライク、川内ロイミュードもまた、何やら必殺技を放つ体制に入っているようだ。

 

「マ…待テ、僕ヲココデ倒セバドウナルカ……」

「ああ……お前さん破壊(スクラップ)されるらしいぞ」

「まぁ、安心しなよ。()()したあんたの代わりを()()()()()から」

 

 川内ロイミュードのその言葉に恐れをなしたのか、レ級eliteが逃げようとするがもう遅い。金剛型ロイミュードの連続クリティカルストライクに始まり、川内ロイミュードがクナイを投擲して動きを鈍らせ、最後は俺とシマカゼによるダブルライダーキックでとどめだ。背後から聞こえる断末魔の叫びと爆発音をBGMに、俺は今後の予定を考える。

 明日、何しよう……




書きたいことは山ほどあるのに、ちっとも筆が進まないのは俺だけでしょうか。

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