特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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すまぬ、遅れて本当にすまぬ。


綾波、来訪者交流編
俺、シマカゼを案内します。


 テンリュウたちと別れ、シマカゼと出会った次の日、俺はシマカゼと互いに自己紹介をしていた。名刺でもあれば、政治家や会社員みたく、名刺交換で簡単に済んだのだが、あいにくとそんな上等なものは持ち合わせていない。今後は必要になるのだろうか、などと少々くだらないことを考えつつ、俺はどこから案内を始めようかひとり悩む。この前線基地を支えているのは畑やら田んぼやらだし、事実、そちらに力を入れて開拓を続けてきたため、案内するならそっちがいいだろう。

 そんなことを考えつつ、俺は畑までの足を要請しようとして、なぜか三笠提督に呼び出される。いったい何の用なんだ、とついていき、一枚の書類を渡される。

 

「藤永基地?」

「ええ、今日正式に命名されたの。大本営からの通達で、正式に基地としての運営が認められたけど、自治権はすべてこちらにあるそうよ」

 

 「せっかく作った畑を、潰さなくてすみますね」と言えば、「それもそうね」と微笑んで返してきたため、この決定はお気に召したのだろう。三笠提督の話によれば、一週間後に大淀・明石・間宮・伊良湖を派遣するとのことであった。明石はともかく、大淀は仁淀がいるせいでほぼお役御免に等しい状態になるのが今から予想できる。仁淀を後方のオペレーターとして、大淀を前線の指揮所として運用すれば、なんとか仕事はできるはずだ。特に、間宮と伊良湖の増援はうれしい。メシは重要だ。

 その後、あれこれと三笠提督と言葉を交わしていて、ふとシマカゼを待たせていたことを思い出し、三笠提督に別れを告げる。しばらく待たされて退屈だったのか、だいぶふてくされてるシマカゼをなだめつつ、ふたりで畑へと向かう。向かった先の畑では、天龍姉妹が取れた野菜をトロッコに積み込んでおり、川内型はまた新しく野菜を植えている。さて、現在俺とシマカゼは農業専用の島にいるわけだが、これをどうやって本島に輸送しているのか気になり、それとなく聞いてみると、どうやら地下12,000Mまで掘った連絡通路――輸送手段は貨物列車……って、いつ作った――を使って輸送しているとのことだ。相変わらずだが、ここの開発のぶっ飛び具合に自分でもビビる。

 地下の輸送路線を見に行きたい気分ではあったが、この後もいろいろとみて回らねばならなかったため断念し、次の地点へと向かう。次は田んぼか工廠か、どちらに案内しようかと悩んでいると、料理長から昼食の準備ができたと連絡が入る。よし、続きは昼飯の後だ。




前線基地、正式に命名。

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