特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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楽しい宴会(パーティー)でしたね……


俺、久々に建造します。

 演習で戦術的敗退を味わった次の日、俺は久々に工廠ドックへと来ていた。ここ最近、建造がご無沙汰していたので二回くらい回して戦力増強しておきたいのと、運が良ければヒトマルの仲間を建造できるかもしれない――どちらかというと、こっちが本命――ということで、久しぶりの運試しだ。まずは、燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトを30ずつ入れて、二機同時にぶん回す。どうせなら、フツーに駆逐艦でも構わないのだが、ここはやはり、戦車の一輌も引いておきたいところだ。

 建造のタイマーが0になるまでの待ち時間、妖精さんと戯れて時間を潰し、誰が来るかを予想する。駆逐艦なら、秋月型がいいな。純粋に、対空能力の高い駆逐艦は、それだけで航空戦に優位なカードとなるし、何より、資材をより節約できることになる。今後、開発を予定している35.6サンチ六連装三式機関砲を装備させて、より高い対空能力を付加させよう。軽巡はもう十分だからいいとして、重巡は一隻もいないから是非とも欲しい。できれば、航空巡洋艦となる最上型――特に、気が軽くて親しみやすそうな鈴谷型――がいい。もっとも、出てきたのはどちらも戦車だったが。

 

「ナナヨンだよ、ロクイチ姉さん共々、よろしくね。災害派遣?任せといて!!」

 

 何やら気合の入った挨拶で自己紹介し、ぐっと胸の前で腕を構えるナナヨン。この天真爛漫といった戦後第二世代の国産戦車を眺めつつ、俺はもう一方の戦車に注目する。こちらは、戦車砲の形状からして、おそらくは戦後世代の戦車ではないだろう。全体的にずんぐりした印象は見受けられないため、どっかの生意気なちびっ子隊長が大層ご贔屓にしている「頼れる同志(かーべーたん)」ではないだろう。俺はそんな疑問を抱えつつ、カーキ色の戦車砲を肩に装備した黒服の戦車娘に名前を聞く。

 

「ところで、名前は?」

「Ⅵ号戦車、ティーガーⅠ。そういうそちらは?」

「吹雪型駆逐艦一一番艦、綾波」

 

 互いにそれぞれ自己紹介を済ませ、工廠ドックを後にする。戦車がほしいとは若干思っていたが、なんで2輌とも戦車なんだ?せめて、どちらかは艦娘でもよかったはずだ。そんな若干の不満を抱えつつ、今度は開発にチャレンジしてみる。最低値の資材を放り込んで10回ぶん回して結果を待つ。はてさて、何ができるのやら。そうしてできた開発物は、やはりというかなんというか、相変わらずぶっ飛んでいたせいで新参のナナヨンとティーガーを唖然とさせてしまう。まぁ、そうなるな。

 ひとつ目は羽のない扇風機、この暑い南国においては、何よりもうれしいアイテムだ。早速、三笠提督に使ってもらおう。ふたつ目は浄水システム、いくら食料や資材があったところで、水がなければ早々に干上がってしまう。特に、雨が期待できそうにないのでなおのことこのシステムはありがたい。浄水システムに関しては、あとふたつみっつ欲しいところだ。三つ目は海水を汲み上げるポンプ、先程の浄水システムと組み合わせて水不足解消に役立てよう。

 四つ目は貯水タンク、ずいぶん大きいが、どれだけ入るんだ?容量をあとで妖精さんに聞いておこう。五つ目から九つ目までは、社長砲、レールカノン、バトルライフル、とっつき、スナイパーキャノンと、普通の装備ばかりだったせいで気が緩んでいたのだろう。その最後のひとつに、さすがの俺もビビった。N700系新幹線、確かに、移動は便利になるだろうが、こいつどこを走る気だ?線路なんてなかったはずだが……と考えていると、妖精さんがどうやって走るかを説明してくれた。どうやら、時の列車よろしく自動で線路を敷設しながら進むらしい。わけがわからないよ。

 とりあえず、新しく来た戦車娘をヒトマルに会わせるべく、俺は羽のない扇風機を抱えて工廠ドックを後にした。




ナナヨン「あいー!!」

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