第三水雷戦隊を前線基地跡地に招待し、艤装の修理と入渠を勧めると、神通はどこか申し訳なさそうな表情を浮かべているのが見える。おそらくは、会って間もない駆逐艦にここまで便宜を図ってもらって心苦しいのだろう。休みたいといっていた川内も伏し目がちなことから、本当に申し訳ないと思っているのだろう。
「すみません、本当に……」
「構いませんよ、せっかく命拾いしたんです、今は生きていることを喜びましょう」
それでもなお謝ろうとする神通に対し、今生きていることを素直に喜ぼうとなだめ、お風呂に入ろうと提案する。最初に食いついてきたのは夕立だ、目をキラキラ輝かせてはしゃいでるのを見て、神通が額に手を当てため息をつく。同様に川内と那珂ちゃんも苦笑しているため、教育に苦労しているであろうことが予想できる。
そんなこんなでみんなでお風呂に入り、昼食の準備ができたと妖精さんから連絡が入ったため、俺達は食堂へと向かう。ひとりのときだと特に感じなかったのだが、意外と広いな、ここ。今度自転車でも作ってもらおう。
「あやなみさん、おひるができたのです」
「さんすいせんのみなさんもたべていってください」
「ぎそうのしゅうりと、ねんりょうだんやくのほきゅうに、ちょっとじかんがかかりそうなのです」
「ありがとうございます、こちらとしては無償で修理と補給を受けるわけにはいかないので、何かお手伝いを引き受けたいのですが……」
義理堅い性格なのか、受けた恩義に対してキッチリ礼を尽くそうとするところは、まさに『華の二水戦』にふさわしい。とはいえ、手伝えることといえば、砂浜での資材集めくらいだろうと考えていると、妖精さんの意外な一言にすすっていたうどんを噴き出してしまう。
「みんなでしまをかいたくして、はたけをつくってほしいのです」
「っ!!………何言ってんだ、リヤカー引いて資材集め程度でいいじゃないか……」
――何やってるんですか、汚いですよ……――
「いや、妖精さんが突拍子もないこと言い出すからつい……」
「あの、綾波さん。誰と話してるんです?」
突然俺が誰かと会話する風に口を開いたため、隣にいた吹雪がきょとんとした表情で尋ねてくる。俺はとりあえずなんと答えようか悩み、適当にあしらっておく。そうして昼食も終わり、俺達は島の開拓のため、斧やらシャベルやらを持って予定ポイントへと向かう。道を切り開いた場所以外はいまだに鬱蒼とした森が広がっており、開拓の手が回ってないことを雄弁に物語っている。
「つまり、ここの木を切って道を作って、地面耕して畑作ればいいんだよね?」
「はい、みんなでやれば、さぎょうもはかどるのです」
シャベルを肩に担いだ川内が、作業内容を妖精さんに確認すると、妖精さんはうなずき、作業が捗ることを喜ぶ。ちなみに、作業分担としては川内がシャベルで地面を掘って大まかな道を作り、神通が細かく均してリヤカーが通れるようにする。那珂ちゃんが斧を、睦月がノコギリを振るって木を切り、吹雪と夕立が切った木を前線基地跡地まで運ぶ。ちなみに、俺は出来立てのチェーンソーを振るって木を切る役だ。
木を切って空間を作り、地面を掘って道を作り、耕して畑を作る。全員が黙々と作業していたため、一通りの作業が終わるころには日が落ちそうになっていた。寝るときとお風呂に入るとき以外、肌身離さず持ち歩いているスマホで時間を確認すると18:30とあった。道理で腹も減るわけだ。
「ねえ、これで終わり?畑も道もできたし」
「さんすいせんのみなさん、ごきょうりょくありがとうございます」
「よければゆうしょくもごちそうになっていってください」
「いいえ、さすがにそこまで甘えるわけにもいきません。私達からもうひとつお礼として、綾波さんの艤装を開発して提供したいのですが、よろしいでしょうか?」
神通の「お礼」にはかなりの魅力を感じるが、さすがにそこまでしてもらうわけにもいくまい。データだけもらって、自分で開発させてもらおう。そう思った俺は、やんわりと断り、艤装のデータだけもらって艤装開発に打ち込むことにした。
三水戦の一行と別れ、工廠ドックに入って綾波の艤装の開発に入る。艤装開発のやり方は明石に習ったので、できないことはないはずだ。
――あまり、根を詰めすぎないでくださいね――
「わかってる、限界なようなら言ってくれ。飯食って風呂入って寝るから」
そうして、その後数時間、艤装開発に打ち込み、やっと綾波の艤装が出来上がったのだが、22:00を回っていたため、予定していた艤装のテストができず、宣言どおり飯食って風呂入って寝る羽目になった。
もっと展開早いほうがいいかなぁ?