ハリー・ポッターと紅白の2人   作:ヴァニフィア

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遅くなってしまって
すまない…本当にすまない…
やっぱり動きのある描写は
表現が難しいですね…


嵐のクィディッチ

「アミリア、起きてよー。」

 

ラウラがアミリアの体を揺すった。

アミリアは薄く目を開けて窓の外を見て

逆の方向に寝返りをした。

 

「ううん…まだ空は暗いじゃないか…

もう少し寝かせてくれ…」

 

「でも、いつも起きてる時間だよ。

天気が大変なことになってるから

暗いだけだでさ。アイギスも顔洗いに行ったし

アミリアもそろそろ起きないと…」

 

少し困った声でラウラが言うと、

アミリアは改めてちゃんと外を見てみた。

いつもは綺麗な景色が見えるのだが、

今日は雨に遮られて全く見えなくなっている。

 

「こういうことか…なら起きないとな…

ひどい天気だ。ラウラ、ローブを取ってくれ。」

 

アミリアは体を起こして、軽く伸びをした。

 

「少しでもたくさん寝たいのはわかるけど

制服にシワがついたらカッコ悪くない?」

 

制服のまま寝ていたアミリアに

少し注意をしながら、トランクの上に

置かれているアミリアのローブを取った。

 

「寝相はいいほうだと自負してるから大丈夫…

だと思っている。一応シワはついてないだろ?」

 

「まあ確かについてないけど…

よいしょっと。はい、ローブ。」

 

「ん、アミリアも起きたのじゃな。」

 

ローブをアミリアが着ようとしたところで、

アイギスが部屋に戻ってきた。

 

「私が起こしたんだけどね。」

 

「まあ、それはそれとして

私も顔を洗ってくるよ。」

 

 

朝食も食べ終わって試合の直前になり、

選手たちは外を見ていた。その中の

三人も心配そうにそれを眺めた。

 

「とてつもない嵐じゃな…」

 

「アイギス…無理しすぎないようにね。

落ち着いてやれば大丈夫だから。」

 

ラウラがアイギスの肩に手をおいた。

アイギスを安心させようとしているようだが、

アミリアには、その言葉は自身にも

言い聞かせようとしているものに聞こえた。

 

「ラウラもな。少し声が震えているぞ?」

 

「大丈夫だよ…たぶん…アミリアは平気そうだね。」

 

「安心しろ。私も怖い。」

 

「ふふ、そんなこと全然思ってないでしょ?」

 

アミリアが真顔で言ったことに、

ラウラは少しおかしくなって笑った。

緊張は取れないが、少しましになった気がした。

そして、少ししてから選手たちは入場した。

 

 

「うわ、本当にうっすらとしか見えないや…」

 

ラウラが独り言をつぶやいたとき、

雨にほとんど音をかき消されているが、

試合開始のホイッスルが聞こえた。

 

(クァッフルはアミリアが取ったみたい?)

 

なんとか見えたアミリアが

クァッフルを持っているのを見て、

自分も前に出て行った。

 

(大丈夫…あまり姿は見えなくても、

アミリアなら絶対そこに…)

 

手を伸ばしながら飛んでいると、

ちょうどそこにクァッフルが飛んできた。

 

「よし、このまま前に!」

 

 

(すごい嵐…遠ざかるアミリアとラウラの姿も

確かに見えにくい…)

 

アイギスはひとまず二人に言われたとおり

こちらのゴールの近くから様子を見ていた。

 

(しかし…ふむ…雨の中とはいえ、

手が滑ることも落ちることもなさそうじゃ。

スピードを出すのは怖いが、

そこは考えて補えばいいかの…)

 

その時、グリフィンドールが

得点したらしい実況が聞こえてきた。

 

(おお、さすがはアミリアとラウラじゃな。)

 

そんなことを思っていると、

次は相手の選手が素早くパスを回しながら

こちらに来るのが見えた。

 

(二人とも活躍しておるのじゃ。

妾だけなにもしないわけにはいかんが…)

 

アイギスはそう思いながら

迫ってくる二人の間にゆっくり近づいていった。

 

「動き…考えられるタイミング…

アミリアから聞いた選手の特徴…」

 

アイギスはぶつぶつと呟きながら

様子を伺っていたが、片方のチェイサーの手から

クァッフルが離れた瞬間、スピードを上げ、

そのままキャッチした。

 

(これからどうすればよいのか…

二人にパスするにしても投げる速さが

遅いせいでカットされてしまうじゃろうし…)

 

悩みながら全速で前に進んでいると、

横からブラッジャーが

すぐそこまで飛んできていた。

 

「っ⁉︎」

 

「アイギス!」

 

そこにアミリアが突っ込んできて、

アイギスを抱えて共に降下していった。

 

「す、すまん、アミリア!」

 

「謝る必要はない。アイギスは十分に

活躍してるよ。あとは任せてくれ!」

 

アイギスはアミリアにクァッフルを渡して、

再び少し後ろに下がった。

そこに、ラウラがやってきていた。

 

「アイギス、気をつけてね!

フレッドとジョージはいるけど、

ハリーも守らないといけなかったりで

今みたいにブラッジャーから

咄嗟に助けられない時もあるから!」

 

「うむ、わかったが…アミリアは

一人で前に行ったのかの?」

 

「とりあえずはアイギスのサポートに

行ってくれって。心配するなってさ。」

 

 

クァッフルを受け取ったアミリアは

一人で相手のゴールの方に向かった。

そこに、さっきまでクァッフルを持っていた

二人のチェイサーが挟み込んできた。

 

(ここで手間取るわけにはいかない…!)

 

アミリアは追いつかれないように

スピードをできるだけ上げた。

その時、前からも相手のチェイサーがきていた。

 

(後ろのチェイサーとスピードはほぼ同じか。

なら、止まるわけにはいかないな…!)

 

そのまま直進して、前のチェイサーとあと少しで

ぶつかるようなところで

まず、クァッフルを真上に高く投げ、

次に箒の上に立ち、ジャンプした。

アミリアは相手の選手を飛び越え、

下を通り抜けていた箒の上に再び飛び乗った。

それが見えていた人からは歓声が上がったが、

本人は内心ヒヤヒヤしていた。

 

(雨で滑って落ちるかと思った…

まあ、それはともかくとして

スピードが同じならば

チェイサーたちに追いつかれることはない。

あとはゴールに入れるだけだ…)

 

ゴールまで約20メートルほどを

切った時、横からブラッジャーが飛んできた。

相手のビーターが打ってきて

妨害して来たらしい。

 

「そんなもの…!」

 

アミリアは落ちないように手に力を込めて

ブラッジャーが来た方と反対側に一回転し、

元の体制に戻りながら

その勢いのままクァッフルを投げていた。

不意をつかれた相手のキーパーは、

そのクァッフルを取ることはできなかった。

 

「ふぅ…なんとかなったか…」

 

アミリアが安堵して息を吐くと、

周りから大きな拍手が聞こえてきた。

曖昧に手を振って自分の陣地に戻り、

次のプレイに備えた。

 

(それにしてもあんな曲芸のようなことを

する羽目になるとは思っていなかった…

予想よりも連携が取れている。

今年のハッフルパフは例年より

弱いわけではないということだな…)

 

 

しばらく試合が進むと、

ウッドがタイムアウトを要求し、

試合が中断された。

 

「ハリー、大丈夫?」

 

「メガネが曇って見えないんだ。

スコアはどうなってるの?」

 

「大丈夫じゃ。今はこちらが勝っている。」

 

アイギスが説明していると、隣で

ウッドが多少焦っているように言った。

 

「だが今は早くスニッチを取らないと

試合が夜までもつれ込むぞ。」

 

その時、ハリーの後ろに

マントを被ったハーマイオニーが現れた。

 

「ハーマイオニーか。ちょうどいい。

ハリーのメガネに、防水の魔法を

かけてあげてくれないか?」

 

「ええ、そのつもりで来たの。

ハリー、メガネを貸して。」

 

「お願い…」

 

「インパーピアスー防水せよー。はい!」

 

「ありがとう、ハーマイオニー。」

 

その後ウッドが少し話して、

タイムアウトの時間が終わり試合が再開した。

 

 

試合が再開して、しばらくたったとき、

辺りが不自然に冷えてきた。

 

(何…?この寒気…あの…列車の時の…)

 

アミリアにクァッフルをパスした後、

ラウラは身震いし、周りを見渡した。

しかし、大雨に阻まれて、

変わったものは特に何も見えなかった。

 

(今は目の前に、集中しないと…

相手は、待ってくれない…)

 

 

「…ラウラ?」

 

アイギスは、ラウラが

少し顔色が悪いと思った。

周りを見てみるが、試合が

シーカー同士の競争になっていること以外、

変わった所はない。

 

「…む?」

 

ふと見つめた、観客のいない塔の上に、

黒い影が見えた気がした。

しかし、まばたきをして

もう一度見た時には姿は消え、

かわりにたくさんの黒い影が空を飛んできていた。

 

「あれは…ディメンター…⁉︎」

 

 

(ラウラはどうしたんだ?)

 

アミリアはゴールをいれて戻ってくる途中、

箒の上でぐったりしているラウラが見えた。

今にも箒と一緒に落ちそうな様子を見て、

急いで戻ろうとした。

 

「何…⁉︎」

 

すぐ横をディメンターが通り過ぎていき、

アミリアはさらに急いだ。

アイギスもラウラの近くに移動しようとしている。

 

「ラウラ!」

 

その時、ラウラの体から力が抜け、

箒と一緒に落ちていった。

 

「アイギス!箒を頼む!」

 

アミリアは自分の箒から飛び降り、

少しして、落ちていたラウラの所まで追いついた。

ラウラの目はうっすら開いているが、

意識は朦朧としているようだ。

 

「上がれ…上がってくれ…!」

 

ラウラの箒をつかみ、

空を飛ぶように念じる。

なんとか落ちるスピードは緩やかになったが、

近くにディメンターが近づいてきた。

 

「ここから…ラウラから離れろ!

エクスペクトパトローナムー守護霊よ来たれー!」

 

杖を構え、呪文を唱えると、

杖から白い霧が吹き出し、それが当たり、

ディメンターは驚いたように逃げていった。

アミリアはラウラを抱き締めながら上にして、

地面に当たらないようにし、自分は

下敷きになるような状態の体制のまま

高度を下げていき、地面に落ちた。

 

「ぐっ…ぅ…」

 

背中を打ったアミリアは少し呻いたが、

落ちる速度は落ちていたので大した怪我もなく、

少ししてすぐに立ち上がることができた。

気がつくと、競技場のちょうど真ん中あたりに、

ダンブルドアが立っていて、

ディメンターは一匹もいなくなっていた。

 

「ラウラ…ラウラ!」

 

アミリアは大きな声で

横になっているラウラの名前を呼んだ。

 

「…ぁ…アミ、リア…?」

 

呼びかけられて少しして、

ラウラがアミリアの名前を呼んだ。

 

「とりあえずは、なんともないようだな…」

 

「あ…私…」

 

「大丈夫だ。安心しろ…今は休んでくれ。」

 

「…ありがと、アミリア…」

 

ラウラは少し笑顔になってから、

アミリアに抱きつきながら眠った。

 

「アミリア、無事かの?」

 

「ああ、大丈夫だ。

私にもラウラにも怪我はない。

今は安心したみたいで寝ている。ハリーは?」

 

「箒から落ちてしまったようじゃが、

校長が助けたのじゃ。

いま担架に乗せて医務室に運ぶらしい。」

 

「そう、か…」

 

「おーい!アミリア!アイギス!」

 

その時、ジョージとフレッドが近くに来た。

 

「ラウラも落ちたのが

見えたけど大丈夫なのか⁉︎」

 

「うむ、大丈夫なようじゃ。」

 

「だが、少しショックを受けたらしくて

いまは眠っているんだ。怪我はないから部屋で

安静にさせておくつもりだ。」

 

「ああ、わかった。

そうだ、ハリーの箒を見ていないか?」

 

「それなら見たぞ。

確かあっちの方にすごい速さで飛んで行った。」

 

「そうか、わかった。行こう、ジョージ。」

 

「起きたらしんぱいしてたって

伝えといてくれ。な。」

 

「わかったのじゃ。」

 

 

「…ぅ…ん…ここは…部屋…?」

 

「目が覚めたか?ラウラ。」

 

ベッドの上で起き上がったラウラに、

アミリアは話しかけた。

 

「あ、アミリア。」

 

「何があったか覚えてるか?」

 

「えっと…大丈夫、覚えてる…

私、どのぐらい寝てたの?」

 

「そうだな…まだ一時間も経ってないよ。

アイギスもハリーの箒を探すのを

手伝っているだけだ。もう帰ってくるだろう。」

 

「よかったー。何日も眠ってたとか言われたら

困ってたとこだよ。

あれ?どうしてハリーの箒が?」

 

「ああ…同じように落ちて気を失ったんだ。

医務室に運ばれたが校長が助けて

怪我はなかったようだから心配しなくても

大丈夫だろう。」

 

「いま戻ったのじゃ…」

 

その時、アイギスが少し

落ち込みながら扉を開いて入ってきた。

 

「お疲れ。箒はどうだった?見つかったか?」

 

「あの暴れ柳というのがあるじゃろ?

あれに突っ込んだらしくての…

残念ながらバラバラになってしまった。」

 

「そんな…ニンバス、壊れちゃったの?」

 

ハリーのクィディッチにおける

相棒であったニンバス2000が

壊れてしまったことに、

思わずラウラは声を出した。

 

「ラウラ…うむ、もう修復も無理じゃろうな…」

 

「ハリー…落ち込むだろうね。」

 

「ラウラは、自分の心配をしたほうが

いいとは思うがな。倒れていたんだし。」

 

「ああ、ラウラ。無事に目が覚めて

よかったのじゃ。今、目が覚めたのかの?」

 

「うん、ついさっきね。」

 

アイギスは安心してため息をついた。

 

「前よりはマシみたいだな。

…ん?何か引っかかることでもあるのか?」

 

アミリアは普段のラウラと微妙に

違うような気がしてそのことを聞いた。

 

「そうだね…まあ、何か夢みたいなの

見たような気がする。また曖昧だけど。

誰かと話してたような…」

 

「前は赤ん坊視点らしいと言っておったが

次はそうでなかったのじゃな。」

 

「うん、たぶんね。ただの幻とか、

そんなだとは思うんだけど…」

 

ラウラはいつもと違って難しい顔で考えた。

 

「まあ、あまり悩むなよ?」

 

「どうして?気にならない?」

 

「まあ、気になりはするがラウラが

大丈夫なら私はいいんだ。

悩むなんてラウラらしくないし、

元気なラウラが好きだからな。」

 

「それは告白か何かかの?」

 

「ひぇっ⁉︎」

 

ラウラの口から変な声が出た。

 

「茶化さないでくれ。

それだけ、大事に思ってるということだ。

とりあえず今日のところは

疲れてるだろうし、ラウラはゆっくり

休むといい。私もアイギスもここにいるよ。」

 

「…うん、わかった。ありがとう、二人とも。」

 

ラウラは静かに礼を言ったあと、

またベッドに入った。




「アミリアが何やらよくわからん
動きをしておったの。」

「アミリアは小さい時から
アリシアさんに教えてもらってたり、
そもそも運動神経もいいからね。
本気になれば、十分にクィディッチの
代表選手になれると思うよ?私は。」

「さすがにそこまでは甘くはないだろう。
それに、選手になるつもりもないしな。」

「クィディッチが好きなら
憧れだと思うのじゃが?」

「遠征とかがあって自由な時間が
数日だとかの単位でなくなりそうなのでな。
やりたいことがたくさんあるから
そこまで時間を取られることは
あまりしたくはないんだ。」

「なるほど、そういうことか。」

「そういえば今回の私の夢、
回想シーンとかないんだね?」

「少しメタいことを言うと、
ラウラがはっきりと認識できなかったから
描写のしようがない、ということだ。
夢を見て起きたあと、覚えてないことが
あるのと同じだよ。」

「ああ、そういうことね。
オッケー、わかったよ。じゃあ、
今日はこの辺にしておこうか。」

「うむ。では、また次回じゃ。」

「質問などは募集中なので
聞いてくれればできる限りで作者が答えるぞ。
今回は分かりにくい表現が
かなり多かったと思うからな。」

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