ハリー・ポッターと紅白の2人   作:ヴァニフィア

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アイギスと大男

普段は五人の人がいる寝室、

最近はアミリア、ラウラ、アイギスの

三人で使っている部屋に、一人の少女が入った。

 

「アミリア〜、ラウラ〜、

ここにもおらんのかー?

…むう、二人していったいどこへ行ったのじゃ…

散歩から帰ってから姿を見ん…

もう夜になっておるし、帰ってきていると

思ったのじゃが…ん?」

 

アイギスの視線の先には、

透明な液体が入ったコップが置いていた。

 

「アミリアのものかの?

…ちょうど喉が渇いたしもらおうかの。」

 

……………

 

「まったく、どうしてこの時間になって

大事なことを思い出したんだ。」

 

「だからごめんってば。

どうしても、今調べに行かないと

忘れそうなことを思い出しちゃったんだから

仕方ないじゃない。」

 

「本来ならこの時間は図書室どころか

そのあたりを歩くのもまずい時間なんだからな。

今は私たちしかいないからと、

特別に許可してくれたからいいものの…」

 

「何度も聞いたってば。

もう、アミリアは変なとこ真面目だよね。」

 

「ラウラは自由すぎるんだ。

それに、このことはアイギスに伝えてないだろ?」

 

「あ、忘れてた!余計に早く帰らないとね。」

 

そうして、談話室を早足で横切り、

いつもの部屋の扉を開いた。

 

「アイギス、ごめん…ね…?」

 

「ん?どうした、ラウラ。」

 

アミリアも部屋の中を覗き込むと、

だらしない顏でベッドにもたれかかる

アイギスの姿を見つけた。

 

「アイギス、どうしたの?」

 

「ふにゃ〜…」

 

「ん?…あ、しまった。」

 

「どうしたの?アミリア。」

 

「いや…おそらく、

アイギスは酔っ払っただけだ。ほら。」

 

アミリアは空になっている

コップを逆さまに向けた。

 

「酔っ払ってるって…

なんでアミリアのベッドの棚に

お酒が乗ってたの?」

 

「一年の時にシェーマスが水をラム酒に

変えようとしてただろう?彼は爆発させたが…

私もなんとなくやってみようかと思ってな。」

 

「なんとなくでそんなの作らないでよ…」

 

「むー?ラウラ、ラウラではにゃいか〜。

あはは、ラウラがいっぱいにゃのじゃ〜。」

 

アイギスは呂律の回らない猫なで声で

ラウラに抱きついた。

 

「アミリア、コップ一杯で

ここまで酔ってるんだけど…」

 

そう言われて、アミリアはコップの中の

匂いを嗅いだ。

 

「ん…これは度数が強いな…少し失敗したか…」

 

「いや、それで済む

酔いじゃない気がするんだけど…

猫みたいでかわいいけどさ…」

 

「ラウラは暖かいのじゃ〜…」

 

「アイギスはあまり耐性がないのかもしれないな。

ずっと自然のものしか食べたり

飲んだりしてなかっただろうし。」

 

「そんなものなのかなー…」

 

「ふにゃ…」

 

「…よしよし。」ナデナデ

 

「ラウラも楽しんでないか?」

 

 

「うぁ…頭が少し痛いのじゃ…」

 

「昨日は私のせいですまなかったな、アイギス。」

 

「うむぅ…妾は何をしておったのかの…

どうも記憶がはっきりしないのじゃ…」

 

「間違ってお酒を飲んじゃったんだよ。」

 

「あー…なんとなくそんなことがあったような…」

 

「というかなんでお酒なんて作ったの…

私たちが飲むのはまずいでしょ。」

 

「大丈夫、法律的にはグレーゾーンだ。」

 

「いや、黒に近いよ。

家でなら私たちも大丈夫らしいけど

ここって家じゃないし。学校だし。」

 

「寮は私たちが生活する場所、つまり家と同じだ。

だから大丈夫だ。問題ない。」

 

「それは屁理屈ではないかの?」

 

……………

 

アミリアとアイギスは、

ラウラに連れられて城から出た。

 

「ラウラ、宿題も終わったから

文句はないがどこに行くんだ?」

 

「ハグリッドのとこだよ。

忙しくて会いに行けなかったし、

アイギスにも紹介しないとね。」

 

「ああ、なるほどな。そういえば、

そろそろ学校に来て一月近くたつが

まだ一度も会っていなかったな。

それに箒に乗った時も見なかったし

何か用事でもあったのかもしれない。

今日は家にいればいいが…」

 

とても暑い真夏の太陽の下、

三人は校庭を横切っていく。

 

「ハグリッドとはどんな人なのじゃ?」

 

「不器用だけど、優しい人だよ。」

 

「よく問題を起こすがな…

そのせいで私は一度死にかけたし…」

 

「死にかけたって…」

 

「いったいどういうこと?」

 

「アイギスは知ってると思うが…

例の森の中に巨大な蜘蛛、

アクロマンチュラがいてな。

ハリーから聞いた話ではその蜘蛛は

学生時代の時にハグリッドが

飼っていたらしい。それで、部屋の件が

あった時に、そいつに聞けば糸口がつかめると

ハグリッドに言われて、ハリーとロンと一緒に

三人で森に入ったんだ。そして、

そこで待っていたのは腹を空かせた

大量の蜘蛛たちだった、というオチでな…

確かにヒントは聞けたが、あの時は

本気で死んでしまうかと思ったよ。

アイギスが蜘蛛の動きを止めてなければ、

ここにはいなかったかもな。」

 

「問題といえば、ドラゴンを

飼ってた時もあったっけ…」

 

「…少し会うのが怖くなってきたのじゃが…」

 

「だ、大丈夫だよ。悪い人じゃないから!」

 

「ああ、手作りのお菓子も美味しいしな。」

 

「いや、あれを食べれるのは

アミリアだけだから。」

 

「いや、しかしあれは本当に美味しいんだぞ。」

 

「でも食べれないんじゃぁ…」

 

あーでもない、こーでもないと、

アミリアとラウラは話し込んでいった。

アイギスにハグリッドの説明をするという

目的は二人の頭から完全に抜けていた。

 

「…二人の話を聞いていても

どんな人なのか全くわからんのじゃ…」

 

……………

 

「もしもーし、ハグリッドー。」

 

「…家の中にはいないのか?」

 

「うーん、やっぱり用事で

どこかに遠出してるのかな?

肉食なめくじの駆除剤がどうとかって

いつの日だったか言ってたりしてたし。」

 

「…いや、煙突から煙が出てる。

おそらくは少し外に出てるだけだと思うが…」

 

「…あ、わわ…」

 

「ん?どうした?アイギス。」

 

アミリアとラウラがアイギスがいる

後ろを振り返ると、そこには

一人の大男とそれに怯えるアイギスがいた。

 

「あ、ハグリッドだ。」

 

「アミリアにラウラ、それとお前さんも、

どうしてこんな時期に学校におる?

まだ夏休みは終わっとらんぞ?」

 

「色々あったんだ。こっちの…

アイギスと言うんだが、込み入った事情があって

それの関係で早めに学校にきたんだ。」

 

「アイギス、この人がハグリッドだよ。

そんなに怖がらなくても大丈夫。」

 

「い、いきなり背後に立たれては

驚くのも無理はないと思うのじゃ…

こんなに大きい人であったとは…」

 

「それはすまんかった。とりあえず中入れや。

茶と、軽い食べ物でも出すぞ。」

 

招かれた三人は、ハグリッドの家の中に

入り、椅子に腰掛けた。

 

「その子は見ない顔だが、

お前さんたちの知り合いか?」

 

「あー…色々ややこしいことがあったけど、

この子は私の義理の妹だよ。

アイギスっていうんだ。」

 

「どちらが妹なのかわからん時があるがな。」

 

「う…まあしっかりしてるのは

私よりアイギスだとは思うけどさ…」

 

「そうか。俺はハグリッド、

ここで森番をやっとる。まあ暇な時にでも

遊びにくりゃええ。」

 

「あ、うん…妾はアイギスじゃ。

よろしくお願いするのじゃ…」

 

その時、火にかけていたヤカンから

大きな音がした。

 

「ああ、湯が沸いたみたいだ。

茶を淹れるから少し待ってな。」

 

「…まだ少し怖い?」

 

「いや…自分で言うのはアレじゃが

大きさの問題で少しの…」

 

「まあアイギスから見れば

二倍はあるかな。ハグリッドは

巨人族とのハーフらしいし。」

 

「魔法界は不思議なことがいっぱいじゃな。」

 

「できたぞ、三人とも。」

 

三人の前に、紅茶とサンドイッチが置かれた。

 

「ハグリッド、このサンドイッチの中身は?」

 

「イタチの肉だ。うまいぞ。」

 

そう言われて、アミリアとラウラは

気まずそうな顔をしながら互いの顔を見た。

 

「「…」」

 

「いただきます。」

 

「あ、アイギス…」

 

「…これは美味しいのじゃ。…ん?

二人は食べんのか?では妾がもらうのじゃ。」

 

「あ、ああ。…いや、半分はもらうよ。」

 

「わ、私はいいや…

けっこうお腹いっぱいなんだ。

あ、そういえばハグリッド、八月の初め頃から

私たち学校にいたけど、ハグリッドは

何か用事があったの?外にも出たけど、

ハグリッドを見なかったし。」

 

「ああ、新学期の準備でな。

いろんなところを回っとった。」

 

「新学期の準備?どうして?

ハグリッドって森番でしょ?」

 

その時、アミリアは学校に来る前に

本屋で苦労をしたことを思い出した。

 

「…ハグリッド、暴れる本に

何か覚えがあったりするか?」

 

「暴れる本?いや、やつは暴れたりはせんぞ。

背表紙をなぜりゃええ。そしたら、

おとなしくなる。」

 

「それって、あの怪物の本?

じゃあ、魔法生物の先生って…」

 

「ああ、俺だ。…いけねぇ、

本当は秘密にしときたかったんだが…

まあええか。ハリーたちには

内緒にしといてくれ。驚かせたいからな。」

 

「それはよかったじゃないか。おめでとう。」

 

「うん、おめでとう!頑張ってね!」

 

「ああ、楽しみにしとってくれ。

ところで、ロックケーキもあるんだが、どうだ?」

 

「あ、ハグリッド、私がもらいたい。」

 

「む、妾ももらいたいのじゃ。あー…」

 

「あ、アイギス、ダメ…」

 

「ん…⁉︎」

 

アイギスは、

クッキーを噛んだ状態のまま固まった。

 

「…」

 

「ア、アイギス…?」

 

「…大丈夫か?」

 

「…」ジワ…

 

しばらくそのままだったアイギスの目が、

みるみるうちに涙で濡れていく。

 

「アイギス、泣かないで!」

 

「す、すまねぇ、

かなり固く焼いてあるのをいい忘れてた…」

 

「ハグリッド、一応医務室に連れて行くよ…

歯茎が腫れるかもしれないしな…」

 

「うう…歯が…」

 

「本当にすまんかったな…」

 

「ハグリッドは気にしないでよ。

じゃあ、また新学期に落ち着いたら来るね。」

 

そうして、三人はハグリッドの

家から出て、医務室に急いで向かった。

マダム・ポンフリーが口酸っぱく

注意したのは言うまでもない。




「さてと、まず今回の本文で
説明がいるところはイギリスでの
飲酒についてだろうか。」

「ああ、アイギスが飲んで
大変なことになってたね。」

「水だと思って飲んでみたら
いつの間にか記憶が飛んでいたのじゃ…
気がついたら朝になっておった。
…なぜかラウラに抱きつかれた状態で。」

「イギリスでは、バーなどで
食事もするならば一六歳から
酒を飲んでも大丈夫だ。
ただし、種類は限られるし、
1990年代当時だがな。
…さて、これを見て不思議に思う
人もいるだろう。私たちの歳はまだ
一六歳に達していないてはないか、と。
アイギスに至っては外見十歳だしな。」

「おい、アミリア。」

「イギリスの法律では、
両親の同意があれば家の中に限り
飲むことを五歳から許される。
…まあその歳から飲む人はあまり
いないと思うがな。」

「でも学校の寮だからねぇ…
やっぱり黒じゃない?」

「まあ、気にするな。とりあえず、
こんな法律があるそうだ。だから
私が酒を飲もうとしていてもノーカウントだ。
実際飲んだのはアイギスになったがな。」

「まあ、可愛かったからよかったけどね。」

「いったい妾はどうなっていたのか…」

「それと、読者の皆は少し思うところが
あるのではないかな?
茶番期間が長くないか、とな。」

「確かにそうかもね…
そろそろ十話にたどり着くからねぇ…」

「とりあえず安心してくれ。
次回から多分…多分本編にはいるから。」

「何故多分を二回言ったのじゃ?」

「大事なことだろうに。」

「…なんか、すっごく不安なんだけど…」

「作者が頑張ることを祈るしかないな。
そろそろテストだとか言っていたが。」

「なんでテスト前に作品を書いてるのよ…」

「さぁな。ラウラと同じで
勉強が嫌いなんだろ。化学の実験の
予習が面倒だとか思ってるらしいしな。」

「小説を書くという文系よりの趣味なのに
理系なのじゃな…」

「友人からも趣味がおかしくないか、
とか突っ込まれたとかなんとか。」

「いや、作者さんの話聞きたい人とか
いないような気がするんだけど…」

「まあ、それもそうか。じゃあ、長さもあれだし
この辺りで締めておこうか。」

「まあ、今更な気はするがの。
確かにこれ以上長くなると
グダグダになってしまうじゃろうし、
この辺りが潮時じゃろうな。」

「じゃあ、終わりだね。」

「「「見てくれてありがとう
ございました!次回も見てください!」」」

「ちなみに、さっきの事情から
投稿遅くなる可能性もあるらしいが、
許してやってくれ。」

「ストックとか書いておけばいいのに…」

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