ハリー・ポッターと紅白の2人   作:ヴァニフィア

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「私が前回やった補習についての説明が
不必要になってるじゃないか…」

「アミリア、
ネタバレはあまりよくないのじゃ。」

「二人とも〜、もう始まるよ。」


夏休みのホグワーツ

「シリウス…彼があんな所に捕まるなんて

今でも信じられない上に脱獄だなんて…」

 

夜遅く、ダールトと一緒に

家に帰ってきたアリシアは、

疲れた表情で呟いた。

 

「母上、この人を知ってたんですか?」

 

「ええ…同級生だしねぇ…」

 

「では父上も?」

 

「ああ。やつはイタズラばかりしていたが、

あんな事件を起こすわけないはずなんだ。

私も現場を調べたかったが、調査よりも

魔法省は事件を隠すことに注力したから

私は結局現場は見る暇もなかった。

そこに駆けつけた闇祓いは

状況だけ見てシリウスを捕まえたらしい。」

 

「今でも父上はそれを調べようと?」

 

「いや…調べようにもあいつは

アズカバン、目撃者に魔法使いはおらず

いても記憶を消されたマグルの人だけ…

調べようにももう何もできないさ。

そこだって跡形なく元どおりだしな。」

 

「さて、アミリア、そろそろ寝なさい。

今日手紙を出したなら

明日には迎えが来るのでしょう?」

 

「あ、そういえば…

じゃあ父上、母上、おやすみなさい。」

 

そう言ってアミリアは階段を上がっていった。

 

 

次の日、学校に行く予定の三人は、

アミリアの家で、荷物をそこにおいて

最後の確認をしていた。

ラウラの両親は仕事だったが、

アミリアの両親は家にいた。

 

「姿あらわしで迎えに来るって?」

 

「そう手紙に書いておったのじゃ。」

 

「姿あらわしかぁ…

あの感じ少し苦手なんだけどな…」

 

「アイギス、いつ頃来る予定なのか

手紙には書いていたの?」

 

「お昼前には来てくれるそうじゃ。」

 

「うーん…お昼ごはんやお茶の一杯でも

用意しておくべきかしら…」

 

「そこまで考えなくても

いいんじゃないかな。忙しいらしいから

なかなかゆっくりもできないだろうし。」

 

「でも、私たちが知らない人が来て

客人にお茶も出さない家だなんて思われたく

ないじゃない。」

 

その時、不意に家の呼び鈴が鳴り、

アリシアは急いで玄関のドアを開けに行った。

 

「あぁ…もう来ちゃった…

はーい、どちらさま…で…」

 

やってきた人物を見て、アリシアが

その場で固まって、震え始めた。

 

「アリシア、どうしたんだ…

あれ?もしかしてマクゴナガル先生?」

 

「ええ、そうです。

お久しぶりですね、ミスター・フラム。

それと、今はミセス・フラムですね、アリシア。」

 

「あ、あわ…ダールト…た、助けてくれ…」

 

「アリシア、少し昔の素がでてるぞ…」

 

「あ…コ、コホン…

ええっと…お、お久しぶりです…先生…」

 

「子供たちから話は聞いていますね?」

 

「はい、大丈夫です。わかっています。

…アリシア、背中に隠れるんじゃない。」

 

アリシアはダールトの後ろに隠れて

震え続けていた。

 

「…母上?」

 

「だ、大丈夫よ…大丈夫だから…」

 

「あんなアリシアさん、初めて見るんだけど…」

 

「妾だけでなくラウラもなのかの?

見てる限りアミリアも見たことないようだの。」

 

「別に怒るわけではないのですが…

後ろめたいこともないでしょうに…とにかく、

そちらの三人は準備ができていますか?

伝えた時間より来たのがはやかったので、

できていないのであれば少し待ちますが?」

 

「すいません、マクゴナガル先生。

最終確認がまだできていなくて…」

 

「では、少し待たせてもらいましょう。」

 

マクゴナガルがそう言うと、

突然アリシアは無言でその場から離れて、何故か

台所で紅茶を淹れてそのまま飲もうとした。

 

「アリシア、先生に出すならともかく、

飲んでる場合じゃないだろう…」

 

「母上、少し落ち着いてください…」

 

「わ、(わたくし)はしっかりと

落ち着いて…い、いましてよ?」

 

聞きなれない言葉使いで

そう言うアリシアの手は小刻みに震え、

ティーカップから紅茶がこぼれていた。

 

「すいませんマクゴナガル先生…

学生時代を思い出してこんなことに

なってるのかもしれません…

とにかく、こちらへ。アミリアたちは

先生を待たせてるんだからできるだけ急いでな。」

 

ダールトがアリシアの代わりにマクゴナガルを

家に上げて椅子に座るように勧め、

アミリアたちに声をかけた。

アミリアたちはそれに従って用意を始めた。

 

 

「じゃあ気をつけてな。

アイギス、困ったことがあったら、

アミリアたちや先生方にも相談するんだぞ。」

 

「わかったのじゃ。」

 

「では行ってきます、父上。」

 

「お母さんとお父さんにも

言っておいてください。」

 

「ああ、わかってるよ、ラウラ。

では先生、また一年間この子達と、

それとこの子もお願いします。」

 

「ええ、わかりました。あー…

アリシアにも息災でいるよう伝えておいて下さい。

自室で震えているようですからね…

では行きましょう。三人とも荷物を持って

私に捕まりなさい。」

 

そう言われ、三人は自分のトランクと、

アミリアはルニルのカゴを持ち、ラウラは

リューナクを抱き抱えてマクゴナガルの

手にそれぞれ触れた。

 

「では、行きます。」

 

「みんな、元気でな。」

 

ダールトが告げたところで三人の視界がブレ、

体が浮くような感覚になり、数秒たつと、

大きな音と共に地面に着地したような感覚になり、

 

「ふぎゃ!」

 

アイギスはその衝撃で転んでしまった。

 

「むう…今のは…?」

 

「大丈夫か?アイギス。

まあ、初めての姿あらわしなら仕方ないさ。」

 

「ううん…やっぱり慣れないな…

フルーパウダーが使えればいいのに…」

 

「警備上、仕方ないことなのです。

さ、アイギスと言いましたね?

ここがホグワーツの敷地の中へ続く扉です。

…ようこそ、ホグワーツへ。」

 

そう言って、マクゴナガルが

城壁の扉…ではなくその隣の勝手口を開けた。

 

「…大きい門からじゃないんだ…」

 

「数人入れるだけなら、こちらの門を

わざわざ開けてはいられませんからね。

では、ここから少し歩きますよ。

ああ、この中に入ればもう魔法は使えますから、

荷物を軽くするのがいいでしょう。」

 

「むぅ…妾はこのままの重さか…」

 

「心配するな。私がかけておくよ。」

 

全員が扉の中に入ったのを確認してから

マクゴナガルは鍵をかけた。

その間に、アミリアとラウラは

荷物に魔法をかけた。

 

「では出発しましょう。

歩いているうちにこの夏の補習について

説明していきましょう。

とはいえ、あなたが三年生として

入学…いえ、違う魔法学校から

転入ということになるのですが、

そのためにしなければならないのは

八月終盤にあなたに課せられる試験に

合格すればいいだけです。

本来ならあなたを入学させることも

躊躇われることではありますが、校長から

ちゃんと話は聞いています。

あなたの事情が事情ですし、

いきなり人の世界に放り込まれて

不安でしょうから…

わかってると思いますが、そのことはあまり

人には言いふらさないように。

先生方でも知っているのは私と校長だけですし。

それから、試験は二年生相当の試験を課すので、

一ヶ月のみの補習…それも、先生方が

あまり見れない状態ではかなり厳しいでしょう。

それでもよろしいのですね?」

 

「はい、もちろんじゃ…です!何があっても

二人と一緒にいるために頑張ります!」

 

「では、補習に関していくつか注意があります。

そちらの二人にも関係がありますので、

しっかり聞いておくように。

まず、一年生の時に行った飛行訓練ですが、

これには課題を設定していません。

ただ、魔法使いとして乗れないと困りますので、

乗れるようにはしておくこと。…そうですね、

二人が箒を持ってきているようなので

それを使わせてもらいなさい。

学校の箒は少し危ないですからね。

そして、変身術と魔法薬学は、

実技をしたい時は必ず私を呼ぶこと。

こと二つは特に危険なのであなたたちだけで

実技を行うことを禁止とします。

今までの記憶を無くしたり

キメラにはなりたくないでしょうからね。

また、実技をする前にしっかりと

理論を頭に入れておくように。

私もできるだけ声をかけられた時に

対応できるようにしておきます。

その他の科目に関しては特に制限を

かけることはしませんが、

薬草学の実技など、季節の関係でできないものも

あるので注意しなさい。それと、

寝泊まりする部屋は去年まで

二人が使っていた部屋を使うといいでしょう。」

 

その後、校則などの細かい説明が続き、

最後に苦々しい顔をして

もう一つ注意を話し始めた。

 

「…そして最後に、大変遺憾ですが、

シリウス・ブラックの脱獄の件を受け、

ホグワーツにディメンター…アズカバンの看守を

配置することが決まりました…

今はまだ配置されていませんが、

来週には先ほどの門などに配置されるでしょう。

この辺りの森も、そもそも立ち入り禁止ですが、

今年は特に城から離れすぎないように。

私からの説明は以上です。

教室や施設の場所などはこの二人に聞きなさい。」

 

「そうですか…ディメンターが…

先生、授業で温室に向かう時などに

パッタリと出くわすなんてことは…」

 

「校長が敷地内へのディメンターの立ち入りを

拒否しました。なので、

敷地内で遭遇することはないでしょう。

ただしホグズミードでは夜間に徘徊することに

なっているので、ホグズミード週間の際に、

あまり遅くまで滞在せず、

夕暮れ時になる前には城に戻るように。」

 

 

三人は階段を上ってグリフィンドール寮の前に

辿り着き、マクゴナガルから聞いていた

合言葉を言って中に入った。

 

「…なんなのじゃ…あの階段は…

真っ逆さまに落ちそうになったぞ…」

 

「この学校の階段やら扉やらは

色々と…あー、特殊でな…アイギスが

落ちそうになった一段消える階段以外にも、

何か特別なことをしないと開かない扉…

まあある意味秘密の部屋も

その一つではあると思うがそんなのが

たくさんあるんだよ。こればかりは

実際に見なければ分からないだろう。」

 

「危ないけど、どうしてこうなったのか…

原因がわかってれば普通のにするだろうし…」

 

「まぁ、とりあえず荷物を置いて

少し整理したらすぐにでもはじめよう。

本来は無理なことを通さなければならないから、

圧倒的に時間が足りない。

…少しマクゴナガル先生に

相談してもいいかもしれんが、

しばらくやって経過を見てからだな。」

 

「何から始めるか決めてるの?」

 

「そうだな…アイギス、何をしてみたい?」

 

「せっかくじゃから、魔法を使ってみたい。

妖精の魔法という教科の

実技をしてみたいのじゃ。」

 

「わかった。じゃあ魔法史からだ。」

 

「⁉︎」

 

「アイギスがやりたいと言った教科は

別の教科を頑張ったご褒美、ということに

しようと思ってな。どうせ全部やるんだ。

その方がモチベーションも上がるだろう。」

 

「むう…確かにそうなのじゃが…」

 

「アミリアの勉強法って厳しいよね…」

 

「そうは言ってもな…これは私が

父上から魔法を教えてもらっていた時と

同じやり方だぞ?私はこれ以外に

効率がいい方法はわからない。」

 

「…まあ確かに無茶をしなければならない以上

モチベーションが大事ではあるのはわかるが…」

 

「あ、ちなみに魔法史は

ラウラもアイギスと一緒に勉強しろよ?」

 

「なんで⁉︎」

 

「なんでって…そりゃあ成績が

酷いからじゃないか。下から数えて

片手で足りるところだろう?」

 

「うっ…わかったよ…アイギスも

頑張るんだから私もしないといけないよね…」

 

「そうと決まれば始めるぞ。

まずは一年生の教科書からだ。」

 

ベッドの上に教科書を数冊開いて、

アミリアは何が起きたのか、

理由はなんだった、と解説していった。

 

 

日も傾いた頃、ガランとした大広間の

真ん中に置かれた小さな机の周りに座って、

三人は夕食を食べていた。

 

「こんなに集中して勉強したの

初めてかもしれないな…

結局休憩とかもほとんどなかったし。」

 

「………」

 

アイギスは驚愕の表情で

アミリアを見ていた。

 

「ん?どうしたんだ?アイギス。」

 

「…いや、食べ過ぎではないか?」

 

「そういえばアイギスって

アミリアがご飯食べるとこって

あんまり見たことなかったっけ。」

 

「いつもこうなのかの?」

 

「いつもってほどではないけど、

ホグワーツにいる間はこうだね。

家では多少セーブしてるみたいだし。」

 

「美味しいからいいじゃないか。

アイギスも食べればいい。」

 

「…いったいアミリアが食べたものは

どこに入っていくのじゃ…?」

 

「私にもそれはわからないけど…

永遠の謎だよ。どうしてこれで太らないのか…」

 

「前にも言ったじゃないか。体質もあるだろうと。

それに、正直これぐらい食べないと

力が出なくてな。

変に控えて体調を崩すのも嫌だし。」

 

「大人の男の人でもこんなに食べないよ…」

 

「こっち二人の分を合わせても

アミリアが食べた量の方が多いのじゃ…」

 

 

「では、夜の授業を始めるぞ。」

 

「授業って言っても教えるのは私たちじゃない。」

 

「まあ、形も大事だと思うから言ってみた。」

 

「それで、何をするのじゃ?」

 

「まぁ、アイギスが思っていたよりも

魔法史の飲み込みが早かったからな。

…ラウラよりも。」

 

「う…どうしてアイギスはそんなにできるの…」

 

「昔のことなら妾は生きておったからの。

その時何をしてたかというのと

つないで考えればわかりやすい。」

 

「じゃあ…えっと…」

 

ラウラは閉じていた魔法史の教科書を

めくって、適当な出来事を指差した。

 

「これ!国際魔法戦士条約についての

この部分の記述。これは何年?」

 

「確かその時は…1289年じゃな。」

 

「…うわ…当たってる…」

 

「その時はパイプの中を探検するのに

夢中になっておったよ。」

 

「アイギスにとっては暗い過去なような

気がするんだが、大丈夫なのか?」

 

「昔のことだし気にしとらんよ。

なに、思い出なんてこれから作ればいい。」

 

「そうか。じゃあとりあえず

今からやることはアイギスの希望だった

妖精の魔法についてだ。実技はさすがに

理論を覚えてからやらないと

危ないからまだしないが。」

 

「イタズラ程度の魔法らしいが

それでも危ないのかの?」

 

アイギスのその言葉に、

一年生の時の授業を思い出した二人は

苦笑いをこぼした。

 

「…呪文を唱え間違えて

爆発を起こした人がいてね…

アミリアが盾の魔法で割り込んだから

そこまで大きな怪我はなかったけど。」

 

「…魔法とは怖いものなのじゃな…」

 

「確かに失敗したら危ないのが多いけど、

素敵な魔法だって、すごい薬だって

たくさんあるんだよ。頑張ってやろう!」

 

「…そうじゃな。それでアミリア。

理論からだそうじゃが、何の呪文からじゃ?」

 

「ああ、まずは物を浮かす呪文だ。

これは理論は単純だから頑張れば

すぐにでも使えるぞ。」

 

三人はそうして、わいわいと

真夜中まで勉強した。




「ということで、原作ではほぼ
触れられていない夏休みでのホグワーツだ。」

「というか魔法薬学も
マクゴナガル先生が見るの?
まあスネイプ先生は厳しいから
少し嫌だけど…」

「マクゴナガル先生は変身術の
先生と言っておったの。」

「スネイプ先生は魔法薬の
材料を集めに買い出しやら
収集やらで忙しいという設定だ。」

「材料なんてダイアゴン横丁で
揃いそうなものだけど?」

「学校で使うものならそうかも
しれないが、私的に何か
作るのなら物によっては
非売品かもしれないだろう?」

「ダイアゴン横丁にはドラゴンの
肝まで売っておったが…」

「一応ドラゴンの生息地は
魔法界では結構知られているからな。
危険な生物の居場所は魔法省で
管理されているし、
グリンゴッツにも警備で
ドラゴンがいるそうじゃないか。
割と身近な存在だよ。…見たいとは
あまり思わないがな…」

「ドラゴンって可愛いと思うけど…」

「アミリア、ラウラは何を
言っておるのじゃ?」

「気にするな。いつものことだ。」

「そういえば私たち箒を持ち込んだけど
許可とかとってたっけ?」

「校則で一年生は持ち込み禁止だが
それ以外は特に何も言われてないからな。
クィディッチの選手にしか許していない
つもりでも明言してないのが悪いのさ。」

「それに、妾もちゃんとした箒に
乗ってみたいしの。シューティングスター
というのは酷いものなのじゃろ?」

「うん。流星のように地面に
落ちていくって揶揄されるくらいには。」

「それもあってアイギスに教えるなら
ちゃんとした箒がいいと思ったのもあるんだ。
ま、とりあえず今日はここまでで。」

「また急じゃの。」

「本文の割に後書きが長いと
退屈する人もいるだろう。そういうわけで、」

「「「見てくれて
ありがとうございました!」」」

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