ハリー・ポッターと紅白の2人   作:ヴァニフィア

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「みんな、私のことを忘れてないよね?ね?」

「ラウラ、もう始まるからはやく行くぞ。
本編に脈絡もなく飛び出す気か?」


囚われるハグリッド

「生徒は授業に行く時は待機してください。

必ず先生が教室まで連れて行きます。

トイレに行く時も…」

 

生徒たちの前でマクゴナガル先生が

これからのことについて注意している。

私はその話を聞き流しながら

ショックで虚空を見ていた。

…私は何もできないのだろうか?

ラウラと、ハーマイオニーも私がなんとかすれば

助けられたんじゃないのか…?

…いや、うぬぼれ過ぎか…みんなより

多少魔法が得意でも運動できても

どうしようもないことだろう…

元怪物も言ってたように本来人間に

どうこうできるものではないのだろうしな…

 

「…先生がたは何にも気づかないのか?

スリザリン生はみんな無事で被害者は

他の寮ばっかりだ。スリザリンの継承者に

スリザリンの怪物、なんでスリザリン生を

全部追い出さないんだ?」

 

向こうの方で、いつもクィディッチの実況をする

リーがみんなに話していた。

その話に賛成の人もいるようだ。

しかしそうとも言い切れないかも知れないのが

厄介なところだ…グリフィンドール寮以外の

生徒の仕業だと途端に犯行が難しくなる。

あの日記の強奪事件の件があるからな。

あの日記の…そう、リドルが知っていれば

部屋の場所がわかるかもしれない。

ハリーには話していなかったようだが…

もし犯人が日記のことを知ってるなら少しでも

手がかりになるそれを他人、特に

例のあの人(ヴォルデモート卿)を退けたと言われるハリーが持ってる

なんて不都合以外のなにものでもないだろう。

そういう事を考えれば日記は犯人が

持ち去ったと考えられるから、うちの寮の

生徒以外だとここに入る事から

始めなければならなくなる。

肖像画の婦人がいる限り突破は難しい。

たとえ姿を消しても婦人が開けない限り

あそこは動かないし、他の生徒と一緒に

入るとなるとその生徒とぶつかるだろう。

そんなに入り口は広くもないからな。

だからグリフィンドール生と考えるのが

自然ではある。だがそうなるとコリンや

ハーマイオニーを襲った意味がわからない…

どちらも怨みを買うようなことは

していないはずだからな。

 

(アミリア、アミリア。)

 

ん?ハリーとロン?

 

(どうした、小声で。何か用か?)

 

(ハグリッドに秘密の部屋のことを聞きに行こう。)

 

(ハグリッドのところに?だがこんなことがあっては

夜回りが厳しくなってるんじゃないか?

もうすぐ出入り禁止とか言われるような状況だぞ?)

 

(…アミリア、それはもう禁止だって

マクゴナガルが言ってたじゃないか。

…でも大丈夫だよ。)

 

(パパのあのマントを使うんだ。)

 

(…なるほど、それならなんとかなりそうだ。

姿を消す魔法では探知されないとも

限らないがそれなら大丈夫だな。)

 

(じゃあ夜、みんなが寝静まった後に

談話室に降りてきて。)

 

(ああ、わかった。)

 

 

私は部屋で考え事をしながら寝たフリをしていた。

部屋の人が寝たところでベッドから抜け出し、

静かに談話室に入ると、誰もいないように思ったが

女子寮への入り口のすぐ横から声をかけられた。

 

「アミリア、こっち。」

 

「ん、ここか?じゃあ私も入れてくれ。」

 

私がそう言うと、空間が歪んでマントが現れ、

ハリーとロンがその中に見えた。

 

「…やはりギリギリだな…」

 

「仕方ないよ。入れないよりはマシさ。」

 

中に入れはしたがやはりギリギリだった。

…去年ぎゅうぎゅうになりながら5人入ったが

足元が見えていたかもしれないな…呼び出されも

しなかったから大丈夫だったんだろうが。

…校長にはいつの間にか知られていたがな。

 

……………

 

(ぅわっ…)ガッ

 

「ハックション!(コンチクショウ…)

…む?…気のせいか…」

 

「どうかしましたか?スネイプ先生。」

 

「声が聞こえたような気がしたが…

気のせいですかな。さて次はどこを見回れば…」

 

「「「…」」」

 

スネイプ先生たちは行ったな…

 

(ロン、狭いのはわかるが

足元にも気をつけてくれ。一人でもマントから

出たら全員見つかるぞ…)

 

(う、うん、悪かったよ…)

 

それにしてもやはり警備が厳重だな。

さっきのでもう三組目だ。どの先生も

真剣そのもので見回りをしているようだ。

…ロックハートはヘラヘラしていたがな。

まだ危機は去っていないというのに…

今更だがなぜ校長はあんなのを…

 

(よし、やっと外だ。

ハグリッドのところまでもうすぐだよ。)

 

(…いや、まだ油断はできないな。

温室の方にも先生がいるみたいだ。)

 

(…ううん、この距離なら大丈夫だよ。

近くに来ないうちに急ごう。)

 

私たちはハグリッドの小屋の明かりに、

少し小走りになりながら向かっていった。

そして到着すると、ハリーが扉をノックした。

 

「…誰だ?どこにいる?」

 

「僕たちだよハグリッド。」

 

「おお、お前さんたちか。

…3人ともこんなとこで何しちょる?」

 

ハグリッドが扉から出てきたが、

手には石弓を持っていた。来たのが私たちだと

わかるおすぐにおろしてくれたが。

 

「ハグリッド、それなんなの?」

 

「ああ、ハリー…これは…もしかすると…

いんや、何でもねぇ。何でも…

まぁ座れや。茶でも入れるわい…」

 

ガチャガチャ、…ジャバッ、シュー…ガッ、パリン!

 

…ハグリッド、何があったんだ?

…外?外を気にしているのか?

 

「…ハグリッド、手伝おうか?」

 

「いんや、大丈夫だ。座っててくれ…」

 

大丈夫そうに見えないから手伝いたかったんだが…

 

「…ハーマイオニーのこと、聞いた?」

 

「…ああ、聞いた。たしかに…」

 

…うん、外を見ているようだな…

やはり前の時に犯人にされたのは確からしい。

どうやら誰か来るのを恐れてるようだしな。

…それでハグリッド、このカップはなんなんだ?

この熱湯しか入っていないティーカップは…

心の中でハグリッドに突っ込んでいると

扉がノックされた。ハグリッドは

用意しようとしていたフルーツケーキを

落としてしまい…いや、そんなこと…

 

「させるか…!」

 

(アミリア!ケーキのことはいいから早く!)

 

なんとか落ちる前に回収したケーキを、

私は仕方なく、仕方なーく、一旦机の上に置いて、

ハリーとロンがいるところに駆け寄って

一緒に透明マントの中に入った。

ハグリッドはわたしたちがマントを被るのを見て、

さっきの石弓を持って扉を開けた。

 

「誰だ…?」

 

「こんばんは、ハグリッド。」

 

「お、こ、こりゃダンブルドア先生。」

 

扉の前には校長が立っていた。その後ろには

もう一人、誰かがいるようだ。

 

「すみませんだ、その…」

 

「いや、大丈夫じゃよ、ハグリッド。

お邪魔してもいいかね?」

 

「へぇ、大丈夫で…」

 

そう言って校長ともう一人…

魔法省大臣のコーネリウス・ファッジだった。

 

(あれ、パパのボ…)

 

(ロン、静かに!気づかれるぞ!)

 

驚いて声を上げそうになったロンが

喋り出す前に、それより小さく、聞こえないように

先んじてロンに注意をした。

ハグリッドはやはり大臣が来るんじゃないかと

思っていたみたいだな…顔色が悪い。

 

「ハグリッド…状況は良くない。

すこぶる良くない…

来ざるを得なかった…マグル出身者が4人に

前と違う例外だが純血の子もやられた…

もう始末に負えん。本省がなにかしなければ…」

 

その大臣の言葉に、私は酷く落ち込んだ。

今のラウラのことは…忘れられなくても

思い出したくはなかったのだ。

 

「お、俺は、決して…

ダンブルドア先生様、俺は決して…」

 

「コーネリウス、わしはハグリッドに

全幅の信頼を置いておる。

それは、わかってほしい。」

 

「しかしアルバス、ハグリッドには不利な

前科がある。このまま何もしなければ

学校の理事たちがうるさい…」

 

「ハグリッドを連れて行ったところで

何の役にも立たんじゃろう。」

 

校長の目は真剣そのもので、

何があってもハグリッドではないと、

そう確信しているようだった。

 

「私の身にもなってくれ…

省が何か手を打ったと報告しなければいかん…

ハグリッドでないとわかればここに

何の咎めもなく戻ってこられる。

私にも立場が…ハグリッドを連行せねば…」

 

「俺を、連行…?いったいどこへ…」

 

ハグリッドは大臣の連行という言葉に怯えた。

 

「短い間だけだ…罰ではない、ハグリッド。

念のためだ…他の真犯人が捕まれば君は

十分な謝罪の上、釈放される…」

 

「ま、まさか、アズカバンじゃ…」

 

ハグリッドは今にも泣き出しそうなほどに

ショックを受けていた。その時、

再び小屋のドアからノックの音が聞こえた。

ハグリッド扉を開けると、

マルフォイの父、ルシウス・マルフォイがいた。

 

(…ハッ)

 

(…)ガスッ

 

入ってきた、ルシウスをみて

息を飲んだハリーを小突いて黙らせた。

 

「おお、もう来ていたのか、ファッジ。

よろしい、よろしい…」

 

「お前が俺の家に何の用があるんだ?

早く出て行け!」

 

ハグリッドはやつが気に入らないようで、

怒鳴っていた。ついでに言うのもなんだが

私もあの人は嫌いだ。

 

「威勢がいいことだ…言われるまでもなくこの…

あー…これが家かね?ここにいるのは

私とて本意ではない…ただ、校長が

ここだと聞いたものでね。」

 

「ではルシウス、わしに何の用があるのかね?」

 

「残念なことだがね、理事たちは

あなたでは限界だと感じておりましてな。

ここに12人の理事が署名した停職命令がある。」

 

校長が…

アルバス・ダンブルドアがいなくなるだと…

こんな時にそんなこと…!

 

「私もそうだが…あなたが今回の件に

なんの行動も起こしていないと感じざるを得ない。

今まで何回襲撃を受けたというのか…

今日の午後にまた二人、そうですな?

このままではマグル出身者が一人もいなくなる。

それがどれだけ恐るべき損失か…わかりますな?」

 

私は杖を抜こうとしたが

ハリーとロンに止められた。

…正直、止められてよかったと思う…

あの停職命令ごとやつを

火だるまにでもしていたかもしれん…

校長のこのタイミングでの辞任はまずいと

大臣も言っているが、ルシウスは

淀みなく理事たちが全員投票したと言うだけだ。

 

「そんでいったい何人脅した?

え?何人脅迫して賛成させた?マルフォイ!

ダンブルドアをやめさせられるならやってみろ!

そんなことをすりゃあマグル生まれはおしまいだ!

この次は殺しになるぞ!」

 

ハグリッドが激しくルシウスに怒鳴った。

実際ハグリッドの言うことは正しいだろう。

継承者は諸手をあげて喜ぶだろうさ…

 

「落ち着くんじゃ、ハグリッド。

ルシウス、理事たちがわしの退陣を

求めるなら、謹んで退こう。しかし、

わしが本当にこの学校を離れるのはわしに

忠実な者がここに一人もいなくなった時じゃ。

ホグワーツでは助けを求める者には、

必ず、それが与えられる。」

 

…!

校長が一瞬こちらを見たな…

あれは気がついている目だ。

どうやって透明マントごしに私たちを

見れるのかはわからないが…

あのメッセージは私たちにも向けられたものか…

 

「あっぱれなご心境で…

我々は、あー…後任者が事件を

未然に防ぐのを願うばかりですな。」

 

やつは出て行ったか…ハグリッドも

そろそろ出て行くのか。

 

「もし…もし誰か、何か見つけたかったら

蜘蛛を追っかけりゃええ。そうすりゃ

糸口がわかる。…俺が言いてぇのはそんだけだ。

よし、今行く。ああ、それと俺がいねぇ間、

誰かファングに餌をやってくれ。」

 

そう言ってハグリッドは外に出て行き、

怪訝な顔をしてはいたが大臣も出て行った。

校長も一緒だ。

 

「おい、聞いたか?

ダンブルドアが学校からいなくなるなんて!」

 

「ああ…」

 

「まずいよ…これじゃマグル出身は

1日1人は襲われるぜ…」

 

「そういえばハグリッドが何か言ってたけど…」

 

「蜘蛛を追いかけろ、か…

今年、蜘蛛を見たか…?

気にしてもないから思い出せないが…

二人は見覚えはあるか?」

 

「あるわけないし見るわけもないだろ…

蜘蛛、嫌いなんだ…」

 

「ううん…どこかで見たような気はするけど…

あまり覚えてないや…」

 

「ハグリッド…

あそこまで露骨に私たちに言うなら

もう少し教えてほしかったが…まあ仕方ない。」

 

「とりあえず戻ろう。

ここにいるのがばれたら怒られるよ。」

 

「そうだな…」

 

…ハッ、ケーキ!

 

「アミリア、諦めて。

ダンブルドアやファッジもそのケーキは

見てたんだから…誰もいないのに

減ってたら不自然だろ?」

 

「そ、そんな…い、いや、

ファングが食べたということにすれば…」

 

「人が食べたってばれちゃうよ…

はやくマントの中に入って。」

 

「くっ…ハグリッドのケーキが…」

 

ハリーとロンに説得され、私は仕方なく

ハグリッドのケーキを諦めた。

………せっかく落とさずにすんだのに…

 




「相変わらず食べ物に関しては平常運転だね。」

「ハグリッドのケーキだぞ?
必死にならざるを得ないさ…」

「でもハグリッドのお菓子って
だいたい食べれないような…
クリスマスにもらった糖蜜ヌガーは
歯と歯がくっついちゃったし…
ハリーが温めて食べればいいって
言ってた意味がわかったよ…」

「みんな誤解しているんだ!
ハグリッドのお菓子は味は美味しいんだ。
ただ作り方や材料に問題があるだけなんだ…」

「それって料理を作る上で
かなりまずくない?」

「いや、料理は愛情だ!
ハグリッドのお菓子にはそういうのが
感じられるんだよ。」

「料理は愛情…料理…アミリア…う、頭が…」

「あ、いや…あれは正直
すまなかったとは思っているが…
私も愛情込めて作ったんだが…」

「ごめん、愛情なんて生易しいものじゃなくて
たぶん激情か何かだと思う…あれは…」

「う…」

「そもそもなんで材料が卵だけの
はずなのにスクランブルエッグで
気絶するようなの作れるの…?」

「…少し魔法を…」

「そんなの使うからじゃないの?
なんの魔法を使ったの?」

「…オリジナルの魔法…
料理を美味しく作る魔法でも
できないかと思って…」

「スクランブルエッグぐらい
自力で作れるようになろうよ…」

「いや、しかしだな…卵は
すぐに丸焦げになるんだぞ?
10分もしないうちに…」

「いや、卵を10分も焼けばそりゃ焦げるよ!
しかもスクランブルエッグだよ⁉︎
火をしっかり通したフライパンにいれて
かき混ぜながら1分も焼けば
後は余熱で十分だよ⁉︎」

「なん…だと…⁉︎」

「もう…食べるのが好きなら
作り方も覚えてよ…どうして料理は
壊滅的なの…」

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