ハリー・ポッターと紅白の2人   作:ヴァニフィア

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「ねぇアミリアー。前書きはー?」

「ん?ないよそんなもの。」


石になった猫

(こんな所を見られるとは…

これでは疑われても文句言えないぞ…)

 

5人のすぐそばの壁に血文字、

さらには動かない猫のミセス・ノリス。

疑われるのは明白だった。

 

「なんの騒ぎだ?どけっ、どけっ!」

 

そう言って生徒をかき分けてきたのは

猫の飼い主、フィルチだった。

 

「またお前たちか。今度は一体何を…」

 

そこまで5人に向けてにやけながら言った後、

彼もまた、動かない自分の猫を見て、

恐怖のあまり顔を手で覆った。

 

「ミセス・ノリス!何があったというんだ…

お前たちだな!お前たちが俺の猫を

殺したんだな!あの子を殺したのはお前たちだ!

俺が殺してやる!俺がー」

 

「アーガス。」

 

フィルチは落ち着きを持ったその声を聞いて、

振り返り、そこにいた人物、ダンブルドアを見た。

その周りにはマクゴナガルをはじめとした、

数人の先生も一緒にいた。

ダンブルドアはするりとフィルチや5人のそばを

通り抜けて、ミセス・ノリスを松明から下ろした。

 

「アーガス、一緒に来なさい。

そっちの5人、君たちもおいで。」

 

「校長先生、私の部屋が一番近い。

すぐ上です。どうぞご自由に。」

 

そこへ、ロックハートが出て行って、

ダンブルドアに部屋を使うように勧めた。

 

「ありがとう、ギルデロイ。」

 

そして、ダンブルドアがロックハートの部屋に、

数人連れて向かっていく。

人混みは左右に分かれて、一行を通した。

ダンブルドアについていく

ロックハートは、得意げで興奮気味だった。

その後ろにマクゴナガルとスネイプも続いた。

他の先生は生徒を寮に連れて行っていた。

 

 

灯りの消えたロックハートの部屋に着くと、

周りのロックハートの写真が、

せかせかと動いていた。

どうやら髪にカーラーをかけていたようで、

それを見られないようにあたふたと陰に隠れた。

本物のロックハートはろうそくに火を灯して、

少し後ろに下がって一行を迎えた。

ダンブルドアは机の上にミセス・ノリスを置き、

どうなったのかを調べ始めた。

連れてこられた5人は、緊張した面持ちで、

互いに目を見かわしていた。

ダンブルドアはミセス・ノリスに鼻がつくほど

近づいたりして様子を見ていて、

マクゴナガルもダンブルドアと

同じくらいのところから、

ミセス・ノリスを見ていた。

後ろに立っていたスネイプは、特に

ハリーが問題を起こしたかもしれないのが

嬉しいのか、にやけそうな顔を必死に

真顔にしている様子だ。

ロックハートはその辺りをうろうろしながら、

あれこれと教鞭をとっていた。

 

「これは異形変身拷問の呪いでしょう…

私がすぐそばにいれば…

ぴったりの反対呪文がありましたのに…」

 

そうしてロックハートが、

フィルチに自分の事を言い聞かせる横で

ダンブルドアはぶつぶつ呟いてから

杖でミセス・ノリスを叩いたり

していたが、何の反応もなかった。

しばらくして、ダンブルドアは体を

起こして、優しくフィルチに語りかけた。

 

「アーガス、猫は死んでおらん。

石にされただけじゃ。どうして

こうなったかはわからんが…」

 

そのダンブルドアの言葉に、フィルチは

5人に、特にハリーの方に指を向けて怒鳴った。

 

「あいつです!あいつがやったんです!」

 

「アーガス、2年生でこんなことはできんよ。

これは最も高度な闇の魔術のー」

 

「あいつがやったんだ!

壁に書かれた文字を見たでしょう⁉︎

あいつは知ってるんだ!

私が、私が………私が出来損ないのスクイブだって

知ってるんだ!」

 

フィルチが泣いていた顔で、

さらに泣きそうになりながらも言い切った。

指を指されていたハリーは大声で反論した。

 

「僕、ミセス・ノリスに触ってません!

それに、僕はスクイブが

なんなのかもわかりません!」

 

「嘘だ!あいつは私宛の

クイックスペルから来た手紙を見やかったんだ!」

 

ハリーとフィルチが言い争っていたなかで、

スネイプが2人の間に出てきた。

 

「校長、一言よろしいですかな?

ポッターも他の全員も、ただその場に

居合わせただけかもしれませんな。

しかし、状況を見ると大変疑わしい。

そもそも、ミス・ブライトフォード、

それにミス・フラムを除いて他の3人は

なぜパーティーにいなかったのか?

そして先ほどの2人がパーティーをなぜ抜け出し、

他の3人と一緒に3階の廊下にいたのか?」

 

その問いに、まず、ハーマイオニーが答えた。

 

「私たちはゴーストの絶命日パーティーに

行っていたんです。たくさんゴーストがいたので

証言してくれるでしょう。」

 

「では、なぜその後パーティーに

出ようとはしなかったのかね?」

 

「それは…つまり…」

 

スネイプの問いにハーマイオニーは言い淀んだ。

そこにハリーが、

ハーマイオニーに助け船をだした。

 

「僕たち疲れたから部屋に戻ろうとしたんです。」

 

「夕食も食べずにかね?

ゴーストの食事が人間にあうとは

思わんがね?」

 

 

スネイプがそう言い終わるかどうかの時に、

ロンのお腹からゴロゴロと音が聞こえた。

スネイプは意地悪そうな顔を向けた。

 

「それで?

そっちの2人はなぜ3階の廊下にいたのかね?」

 

スネイプはそこまで言うと、今度は

アミリアとラウラの方を向いてきた。

 

「私たちは、その、談話室に向かおうとしてて…」

 

「私がカボチャパイの食べ過ぎで

苦しくなってしまって帰ろうとしていたのです。」

 

スネイプはその言い分を聞いてフンと鼻を鳴らして

ダンブルドアの方に向き直った。

 

「校長、特に、ポッターの話していることは

本当のことか疑わしいですな。

全てを正直に話すまでは彼の権利の

一部を取り上げるべきではないかと。

我輩としてはクィディッチチームから

外すのが適当と思いますな。」

 

そのスネイプの言葉に、

マクゴナガルが反応した。

 

「そうお思いですか?私には彼から

クィディッチを取り上げる理由が

見当たりませんね。ミセス・ノリスが

箒の柄でなぐられたわけでもありませんし、

ポッターや、他の4人にも、悪いことをした

という証拠は何一つないのですよ。」

 

「疑わしきは罰せず、じゃよ。セブルス。」

 

それを聞いて、フィルチが大きな

金切り声で叫んだ。

 

「そんな!私の猫が石にされたんだ!

処罰を受けさせねば気が収まらん!」

 

「アーガス、君の猫は治してあげられますぞ。

スプラウト先生が最近やっと

マンドレイクを手に入れられてな。

十分に成長すればすぐにでも

蘇生させる薬を作れましょうぞ。」

 

フィルチが、縋るようにダンブルドアに

顔を向けていた。

そこに、ロックハートが口を挟む。

 

「それなら私がお作りしましょう。

今まで何百回作ったかわからないほどですよ。

『マンドレイク回復役』なんて

眠ってたって作れますよ。」

 

そのロックハートに、スネイプが

不機嫌そうに、冷たく言い放った。

 

「あー、一つお伺いしますがね。

この学校では私が魔法薬の先生のはずだが?」

 

その言葉に、ロックハートの部屋に

気まずい沈黙が流れた。

ダンブルドアはそこで、5人に目を向けて、

優しく語りかけた。

 

「君たちは帰ってよろしい。」

 

それを聞いて、走りまではしないが、

5人とも早足で部屋から出て行った。

そして、少し話をするために誰もいない

教室に入っていった。

 

「ねぇ、アミリアとラウラはどうして

3階にいたの?まだパーティーだったよね?」

 

「…声が聞こえたんだ。」

 

「ほら、あの時いってたの。」

 

「2人も聞いたのかい?ハリーが

言ってた声ってやつを。」

 

ロンは驚いた様子で、

2人の話を聞いていった。

 

「うん。聞こえてきた。」

 

「ロン、僕たち先生にこのこと話した方が

よかったと思う?」

 

「馬鹿言うなよ。誰にも聞こえない声が

聞こえてくるなんて、魔法界でも狂気の

始まりだって思われてるんだぜ。」

 

「ロンは僕たちのこと信じてくれるよね?

…その、例え薄気味悪いとは思ってても…」

 

「そりゃもちろん信じてるさ。

でも、本当に薄気味悪いことだらけだよ。

壁になんて書いてあった?『部屋は

開かれたり』…これどういう意味だろ?

ん?ちょっと待って…何か思い出しそう…」

 

そう言って、ロンは難しそうな顔をして

少し唸りながら口を開いた。

 

「うーん…誰かがそんな話をしてくれたような…

ビルだったかもしれない。

ホグワーツの秘密の部屋のことだ。」

 

「何か知ってるのか?」

 

「ううん、本当に話を聞いたのかも

あんまり覚えてないんだ。」

 

「そういえばロン、スクイブってなんのこと?」

 

「あー、ハリーそれ聞いちゃう?」

 

ハリーの疑問に、まずラウラが苦笑いをこぼし、

ロンはそのことかと、クックッと

嘲笑を噛み殺していた。

 

「本当はおかしなことでもなんでもないんだけど…

まさかフィルチがそれだなんてね…

スクイブってのは魔法使いの家に生まれたのに

魔力がない人のことを言うんだ。」

 

「ああ、それなら管理人の彼が

どうして生徒を目の敵にするのかがわかるな。

妬いてるだけみたいだな。」

 

「ぶふっ!ア、アミリア、

そんな、はっきり、ははは!」

 

アミリアが言った言葉に、

ロンは笑い転げてしまった。

ちょうどそのときどこかから鐘の音が聞こえた。

 

「ちょっと、ロン。

先生に見つかるわ。ちょうど零時の鐘が

なったし先生…特にスネイプに

見つからないように部屋に帰りましょ。」

 

そうしてその日はそのまま

それぞれの部屋に戻った。

アミリアとラウラも自分の部屋についた。

その時、リューナクがラウラにすり寄ってきた。

 

「ミ〜、ミャ〜」

 

「あ、リューナク。どうしたの?

よしよし。」

 

「ラウラの帰りを待ってたんだろう。

賢いじゃないか。」

 

「…ねぇ、アミリア。さっきの事件って

もし狙われたのが猫ならリューナクも

危なかったかもしれないんだよね?」

 

「まあ、猫を狙ったなら対象に入るな。」

 

「確かにフィルチさんは私も好きではないけど、

もしリューナクがミセス・ノリスみたいに

なったらとても悲しいと思うの。

そういうところではすごく可哀想だと思う。」

 

「…そうか。」

 

「犯人、捕まるといいね。」

 

「ああ、そうだな。」

 

「ミ〜?」

 

そんな話をしていたアミリアとラウラに、

そんな話はわからないとばかりに

ひたすらすり寄ってくるリューナクに、

2人は頰を緩めた。

 

 

事件から数日、アミリアとラウラは

図書室にいた。

 

「アミリア、前言撤回してもいいかな?」

 

「…何があった?」

 

「目の前で教科書を落としただけで

処罰されそうになった…」

 

ラウラが例の廊下を通ろうとした時、

血文字をなんとか落とそうと、

フィルチが『ミセス・ゴシゴシの魔法万能

汚れ落とし』でこすっていたが、

全く消えずにイライラしていたらしく、

誰彼構わずに罰則を受けさせようとしていた。

 

「あー、まあ今はあの人には近づかないほうが

いいだろう。ミセス・ノリスがあんなことになって

色々気が立ってるんだろ。特に私たちには

スクイブだとバレてしまってるし

一番疑わしいからな。」

 

「あれからなかなか3人と会わないなぁ。」

 

「まあ、ハリーは暇ができれば

クィディッチの練習に引っ張られていくし、

ロンもついて行ってるんだろ。

で、ハーマイオニーはあれだ。」

 

そう言ってアミリアは今座っている席から、

さらに奥の方にいて、本の山を端から端まで

読んでいくハーマイオニーを指した。

 

「あの一件以来、

ハーマイオニーはずっとあの調子だ。

私たちが話しかけても

ろくに取り合ってくれない。」

 

「確かにね。

『明日の天気は何?』って聞いたら

『朝の9時よ?』って返されたし。」

 

「ああ、あれか。意味がわからなかった。」

 

そんな話をして、2人で笑いあっていると、

後ろからマダム・ピンスに騒ぐなら出て行けと

追い出されてしまった。

周りからはひそひそと囁かれた。

 

「…行こう、ラウラ。」

 

「…うん。」

 

居心地が悪かった2人はそのまま

図書室の前から離れ、部屋まで帰った。

移動中も、図書室の前ほどではないが、

避けられたりしていた。

 

「はぁ…やっぱり疑われてるのかなぁ…」

 

「そうだろうな…」

 

「ねぇ、アミリア…」

 

「なんだ?」

 

ラウラがアミリアに、

困ったような顔を向けた。

 

「………ううん、やっぱり何でもない。」

 

「?…そう、なのか?何か言いたい事があれば…」

 

「もう、なんでもないってば!

あんまり気にしないで!」

 

「そ、そうか?ならいいが…」

 

「とにかく追い出されてまだ終わってない

宿題をしよう!」

 

そうして、いつものような顔に戻った

ラウラは、図書室から追い出されて

終わっていなかった宿題を始めた。

しかし魔法史の宿題で羊皮紙を1メートル以上

書かなければならないにも関わらず、

ラウラは30センチしか埋まらず、

どうやって量を増やすかに四苦八苦していた。

 

(…ラウラ、どうしたんだ?

魔法史ができないのはいつもの事だが

ラウラがあんな困った顔をしたのを見るのは

初めてかもしれん。

私にも言ってくれなかったし…

ラウラ、何を考えているんだ?)






「えー…今日はエミリーさんの紹介を
しようと思っていたのだが…」

「お母さーん、起きてよう。」

「すぅ。すぅ。うふふ…もう食べられないわ〜…」

「ご覧の通り寝てしまっていて
30分ほどラウラが起こそうとしているが
全く反応が無い。」

「アミリア、やっぱりこの状態のお母さんを
起こすのは無理だよ。
テンプレみたいなこと言ってるし。」

「だろうな。
さて、それなら今日はどうするかな…」

「それなら少し説明がいるかもしれないことの
説明とかどうかな?
後書きの本来の使い方だと思うよ?」

「そうだな…そうしようか。」

「じゃあこの箱から出してみて。
説明が微妙なだったものが
書かれた紙が入ってるから。」

「なんでそんなことしなければ…
…一つしか入ってないじゃないか。」

「まあそういう仕様だから。」

「これか。え〜、クイックスペルのことか。」

「管理人のアーガス・フィルチさんが
私たちに隠したかったものだね。」

「これの説明か…そうだな。
少し具体的な話をしようか。」

「どんなかんじに?」

「まず、想像してほしい。
夜中にテレビを見ていて、適当に
色々な番組を見ようとすると、
テレビショッピングがあるな?」

「あー、色んな商品を紹介されて
電話で注文するやつだね。」

「うん、それだ。さて、まあ普通の
掃除機などを実演などをして紹介するならば
まあ多少は信じられると思う。
しかしだ。例えばこれを3食の食事の飲み物に
混ぜるだけで太らない、
これを使って痩せた、と紹介されて買いたいと
思うかどうか。まあ私は太らないから買わないが。
クイックスペルとはそんなかんじのものだ。」

「怪しさ満点だね!」

「もっと言えば、この壺を買うだけで
運気アップ的な事を信じるかと言うことだ。」

「あはは!そんなの引っかかる人なんて…
引っかかる人なんて…」

「ん?ラウラ、どうしたんだ?」

「い、いや、うちの家に
そんな壺なんてないよ!」

「何も聞いていないが…
まさかラウラの家にあるあの壺って…」

「…うん。あの壺、かなり昔にきた
訪問販売の人が売りに来たやつなんだ。
お母さんしかその時いなかったのが
運の尽きだったよ…私は小さかったし…」

「エミリーさんが騙されて買ったのか?」

「いやぁ、あれは騙されてたのかな…
あの時の人は満身創痍だったし…」

「何があったんだ。」

「お母さんと会話が成り立たなかったみたい。
最後にはやけくそ気味に
『とにかく買って!役に立ちますから!』
って叫んだらお母さんが『あらそうなの〜?
なら買うわ〜。』ってあっけなく
商談成立、訪問販売の人は
『今までの、時間は、なんだったんだ…
あんな人の、相手は、
もう嫌だ…ちゃんと、働こう…』って
泣きながら呟いて帰って行ったんだ。」

「そこまでか…
どこまで精神的に追い詰められたんだ…?」

「えっとねー…たしかお母さんと一対一で
2時間49分だったね。
アミリアならどれほど恐ろしいかわかるよね。」

「…合掌。
というかよくそれだけ保ったものだな…
やったことは押し売りでも
その精神力には敬意を表する。」

「えっと…じゃあ、とりあえずもう一つ。」

「ん?なんだ?」

「作者がアミリアを描いてみたみたいなんだよ。」

「私を?」

「うん。この紙に。」


【挿絵表示】


「「…………」」

「ああ!アミリア!泣かないで!」

「これは…ひどい…誰だこの男女は…
私の…私の髪が…密かな自慢なのに…
白黒にされるなんて…」

「あわわ、とりあえず今日はこれで終わろう!
ほら、アミリアも一緒に!」

「「今回も見てくれて
ありがとうございました!(…ぐすっ)」」

「…アミリアが描かれてるってことは私も…
いや、この絵が不評ならまだ助かるかも…!」

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