遊戯王ZEXAL ~単なる日常から強制転移~ 作:妖牙=飴んぼ
堕紅「・・・ん?」
手触りの良いカーペット、横から差し込む光、嗅いだことのない匂い。堕紅はいつのまにか、まったく知らない部屋の隅で倒れていた。
堕紅「うん?ううん・・・ん!?どこだここ!」
驚いて立ち上がって部屋全体を見渡すと、見たことのない光景が広がっていた。
広々としたリビングには生活に必要な家具が全て(テレビとかエアコンとか)揃っている。奥にはキッチンがあり冷蔵庫の前にはカップヌードルが積み上がっている(もっと他になかったのか)。部屋はこの他にもいくつかあるみたいで何カ所かにドアが付いている。
堕紅「うわあ・・すげぇ。」
他の部屋も気になったので、堕紅が倒れていた真後ろのドアを開けてみた。
そこは寝室のようになっていた。一人にも関わらずダブルベッドで、寝ながらデッキをいじれそうな広い机もある。奥にあるでかい窓の外には、堕紅も見たことのある遊馬たちが集う学園が見えている。
ここまで愕然とさせる環境を用意した門が、神に思えて仕方がない状況であるが、本当に驚いたのはその部屋の壁全体だ。
カードだ、何百何千何万とあるカードで壁の表面が見えないほどに埋めつくされている。それでも置けなかったカードは部屋の端の段ボールに積まれている。
堕紅「・・・。」
正直夢でも見ているのかと思った。現実でこの光景を再現するためにどれだけの金銭を必要とするだろう。一カ月千円の小遣いをもらう堕紅にとっては満足を通り越して怖いとでも思う環境である。
堕紅「・・・あ、そういえば俺のデッキ・・あ、あった。」
堕紅がよく見てなかっただけでベッドにくっついている台のようなスペースにデッキが三つとメモが一枚あった。堕紅はそのメモを手にとり中身を読み始めた。
「
新世界で生きる者へ
我が空いていた土地に家を作ってみたのだがどうだろうか、これを読んでいるという ことは寝室も見ているだろう。その部屋にあるカードは全て使って良い、この先バリアン世界の奴らが攻めてくるだろう、遊馬とアストラルを守るため全力でデッキを組むが良い。だが一つ大事なことを言わせてもらうが、お前の世界で手に入れたNo.(ナンバーズ)は、一応入れてあるがこの世界ではNo.は基本一枚だけが普通だ。怪しまれないよう、気をつけてくれ。
それと明日からお前には、あの二人のいる学園に転校生のような形で入学してもらう。二人と直接関わっても良いが、お前が別次元の人間ということも、我に頼まれたということも秘密にしてもらいたい。宜しく頼む。
」
堕紅「なるほどな、トロンやフェイカーとの関わりはなしか。」
どうやら飛ばされたのはZEXALⅡ辺りのようで、トロンやフェイカーの事件は解決した後のようだ。
堕紅「で、やっぱNo.持ってると色々と厄介になるか。」
No.はアストラルがドン・サウザントとの戦いの際、アストラルの記憶が五十枚のNo.となり各地に飛び散った。その後、遊馬とぶつかって余計No.が飛び散ったはず、そのNo.を集めるのとヌメロンコード使うことがアストラルの最終目的だった。
全てのNo.を集めたアストラルが最終回でヌメロンコードを使い、結果としてはハッピーエンドでこれからも続く展開に終わったが、この話に堕紅が入ったらどこまで変わってしまうのだろう。堕紅にとってそれが一番の心配事だった。
堕紅「・・・き、気にしてもしょうがねえか!とりあえずカードも大量にあることだし、ゆっくりデッキ編集するか。」
無理やり前向きにした堕紅は、机の上にあるデッキケースの一つを手にとりデッキを取り出した。
堕紅「俺が作ったデッキの一つがこれで良かった、最初ら辺はエクシーズが良いし一応シンクロも融合も入ってるから驚かすぐらいなら出来るしな。というわけでよろしく、陽炎獣。」
?「うん、私のことも忘れないでよね。」
堕紅「分かった分かった、忘れn・・・!?」
聞き覚えのない声に驚いた堕紅がふと後ろを振り返ってみると、そこにはどこかで見たことある女の子と赤い狐が立っていた。
堕紅「えっ!?えっと!?だ、誰っすか?」
ヒータ「何言ってるの!あんたのデッキでいつも頑張ってるヒータだよ!」
・・そう、堕紅の陽炎獣デッキにある一枚のカード、「燃え盛るヒータ」が目の前にいるのであった。
堕紅(あっれ?ZEXALってカードの精霊っていたっけ。GXなら結構いたけど?)
ヒータ「ともかく!遊馬たちを助けるんでしょ!だったらデッキ改良しないと!ほらほら!」
堕紅「急かすなって!・・・はぁ、なんでいきなり、」
ヒータ「愚痴言うなら燃やすよ。(悪意のある笑顔)」
堕紅「・・・ふい。」
いきなり出てきた上に、いちいち急かしながら脅迫するヒータに少し恐怖と不安を覚えながらも、堕紅はデッキの改良を始めるのであった。