遊戯王ZEXAL ~単なる日常から強制転移~   作:妖牙=飴んぼ

11 / 15
第十話 動き出す光と影

日が沈み、すっかり暗くなった。遊馬と仲間たちは既に帰ったが、まだ堕紅は真月を帰らせてはいない。

 

 

真月「え?見えてるって、何のことですか?」

 

 

堕紅「いやあ、お前の目線が気になってたんだよ。ちらちらと何もないところに目を向けたりして、見えてるなら言えってw・・」

 

 

真月(・・・こいつ、)

 

 

堕紅(乗ってくる、・・こいつなら・・)

 

 

 

真月「・・・はい!実は見えてました。彼女のことは。」

 

 

ヒータ「うわあ!やっぱり!?もうっ、隠さなくて良いのにw」

 

 

真月「周りの皆には見えてそうになかったから、あえて触れてないで置きました。」

 

 

堕紅「いや、そんなことないぞ。遊馬や小鳥にはヒータの姿は見えてるからな。」

 

 

真月「・・・・そうだったんですか!良かったです!自分だけ幻でも見ているのかなって心配してしまいました。」

 

 

微笑みながら朗らかに話す真月が場の雰囲気を和ましている・・・周りからはそう見えるかもしれない。だが堕紅とヒータ、恐らく真月も、互いの信頼を掴むために必死の読みあいをしているのは本人以外分からないだろう。

 

 

真月(こいつもこの精霊とやらも、やっぱアストラルのような存在なのか?だとしたら、こいつらも敵・・となるか。デュエルも中々の物だしな・・・・)

 

 

堕紅(多分真g・・ベクターは、俺とヒータを見た上で何らかは考えているんだろうな。とにかくこいつには、俺は精霊の見えるだけの普通のデュエリストってことにしとかないと・・)

 

 

ヒータ「・・・・堕紅。」

 

 

堕紅「どうした、ヒータ?」

 

 

真月「・・・(この精霊からも何かしらの情報を探っておかないとなあ・・・)」

 

 

 

 

ヒータ「お腹すいた。」

 

 

 

 

堕紅&真月「え?」

 

 

ヒータ「もう良い時間じゃん。早くなんか食べようよ、できればどっか外食でも!」

 

 

堕紅「え。ま、まあ・・・いっか。じゃあ今日はもういいわ。止めて悪かったな。」

 

 

真月「ん、ええ。僕は大丈夫ですよ。それでは!」

 

 

堕紅「おう、じゃあな!」

 

 

真月「またねー・・・・」

 

 

そう言って真月はどこかに帰っていった。

 

 

堕紅「そういや思ったけど、学校終わった後って、あいつ何処に帰ってるんだ。やっぱりバリアン世界か、それともギラグみたく何処かに寝泊まりしているのかな。」

 

 

ヒータ「そんなことはいいから・・・・どっか食べ行こ。」

 

 

堕紅「ヒータ、というかモンスターの場合って、ファミレス行っても他人から見えないから、口に運ぶ時、何もないところに吸い込まれるように見えちゃうけど?」

 

 

ヒータ「・・・・」

 

 

堕紅「・・・・」

 

 

堕紅「・・・あの・・ヒータ・・」

 

 

ヒータ「・・・コンビニ行ってきて(泣)」

 

 

堕紅「・・うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[路地裏]

 

 

男「はあ・・はあ・・」

 

 

ここは町中の路地裏。真夜中だから人の気配はないが、そんな場所を息を切らしながら走っていく男性がいた。

 

 

男「はあ・・はあ・・っく!」

 

 

その彼の後ろから誰かが着いてくる。

 

 

男「っく、来るなっ!」

 

 

彼は化け物でもみたようにひどく怯えていた。そんな彼も何者かからの逃げ場を失っってしまったようだ。

 

 

男「っ!?い、行き止まり・・。」

 

 

たまたま彼が逃げ込んだ場所が大通りまで抜けているわけではなかった。そして怯え、慌てる男性のもとに小さな足音が近づいてくる。

 

 

男「っひい!?」

 

 

それは小さな子供、見た目七・八歳ぐらいの女の子だ。息が切れかけている男性の目線はなぜかその女の子に向けられている。見た感じ怖いとか恐ろしいとか、そんな感情はその女の子を見ただけでは感じ取れない。ただ、今の男性は彼女とある事をしている最中だ。

 

 

女の子「・・私のターン、ドロー。」

 

 

そして男性には見えている。モンスターも伏せカードもない彼のフィールドの先、小さな女の子の後ろに赤く光るオーバーレイユニットが回るモンスターが居すわっている。紫色の細長い体、辺りを弾け飛ぶ電撃、不気味な雰囲気を漂わせるモンスターの姿は彼は今まで見たことがなかった。

 

 

女の子「・・・攻撃、かな?」

 

 

キュエエエエエエエエエエッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[家]

 

 

ヒータ「ああああっ!!お弁当おいしいなあああ!!このとろとろのクリームがかかったパスタ最高だなあああっ!!」

 

 

堕紅「そ、そうだな・・・(今度、ヒータが実体化したときように、ヒータの私服でも買ってあげよう・・・)」

 

 

ヒータ「あああっ!!最高!こんな食事が毎日できるなんて、私は恵まれてるよねええ!!(涙)」

 

 

堕紅(うん、買ってあげよう。そうしよう。流石に一年中弁当や出前を食べさせてられないわ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、今日も学校のため食パンにジャムを塗って食べながらニュースを見ていた。堕紅がぼーっとテレビ画面を見ていると気になるニュースが流れてきた。

 

 

ヒータ「んーーっ、おはよぉ、ってニュース見てるの?」

 

 

堕紅「あ、おはよヒータ。なんか昨日の夜、感電事件があったらしいんだ。」

 

 

ヒータ「感電事件?」

 

 

堕紅「街の路地裏で電撃くらった焼死体が見つかったんだと。雷が落ちたわけでもないし、近くに電気系統の機械があるわけじゃないから、誰かがこいつを襲ったっていう結論になったらしいな。」

 

 

ヒータ「感電ね・・、ちょっと怖いわね。」

 

 

堕紅「この世界でもデュエル以外で死ぬことってあるんだな。気をつけないと。」

 

 

堕紅(・・・あれ、デュエルで人って死ぬっけ?・・・慣れって怖い。)

 

 

そう思いながらふと壁の時計に目を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

AM:8:23

 

 

 

 

 

 

 

堕紅「・・・・やっば!じかっ時間!!」

 

 

ヒータ「急ぐのは良いけど下着姿で出るのはどうかと思うわよ。」

 

 

堕紅「了解了解了解了解(焦)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[学校 教室]

 

 

先生「よーし、時間だ。出席取るぞ。」

 

 

小鳥「先生。堕紅君がいませんが、またお休みなんですか?」

 

 

先生「何?欠席の連絡は届いてないg[堕紅]「遅れましたーー!!」

 

 

焦る堕紅が教室のドアに肩をぶつけながら教室に入ってきた。

 

 

先生「何だ、遅刻か?今回は良いが遊馬みたいにはならないようにな。」

 

 

そういえば教室の中に遊馬の姿がない。

 

 

堕紅(あー・・遅刻か。いつも通りなんだろうな。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が刻々と過ぎた一時限目の授業中、眠そうな目を擦りながらやっと遊馬がやってきた。その後ろで冷静な顔をしたアストラルもいる。

 

 

皆「ww」

 

 

遊馬「あー、遅れた遅れたw、昨日のデッキ調整で疲れちまったww」

 

 

先生「遊馬君!何度目の遅刻ですか!!」

 

 

遊馬「す、すいません。」

 

 

皆「www」

 

 

堕紅(・・いつもこんな感じなのか?)

 

 

遊馬「お!来たのか堕紅、吐き気は無くなったか?」

 

 

堕紅「ああ、もう大丈夫だ。」

 

 

遊馬「そうか、それじゃ!今日は堕紅もいることだし寝ないでしっかり授業受けるとするか!」

 

 

真月「さすが遊馬君!遅刻した代わりに授業を受けようとする心!」

 

 

堕紅(それが普通のはずなんだけどな・・)

 

 

クラスの皆がそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十分後

 

 

「Zzz」

 

 

堕紅&ヒータ(うん、知ってた)

 

 

孝「皆さん、聞いてください。今回も学級委員長を決める時期がやってきました。」

 

 

堕紅(おっ、そうなんだ・・あれ、学級委員って・・・)

 

 

その勘は割と早く当たった。

 

 

孝「誰も立候補や推薦がいなければ今回も僕g[真月]「僕は遊馬君が学級委員長が良いと思います!」

 

 

 

孝&堕紅&ヒータ「・・・え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

堕紅「・・・おい、起きろ遊馬。」

 

 

遊馬「Zzz」

 

 

堕紅「・・・・仕方ない、ヒータ、頼む。」

 

 

ヒータ「はあ、魔法発動。「火の粉」」

 

 

遊馬の額に小さな炎弾が直撃した。

 

 

遊馬「うおわあっ!あちちちっ!!何だよいきなり!」

 

 

堕紅「遊馬・・、お前が寝てる間に面倒なことになったぞ。」

 

 

遊馬「え?」

 

 

遊馬が顔を上げ教室のモニターを確認する、そこには等々力孝と九十九遊馬の名前が映っていた。それぞれの名前の上にはゲージがあり、遊馬の方のゲージは孝のを上回っていた。

 

 

遊馬「何だこれ?」

 

 

堕紅「あれは・・」

 

 

 

 

孝「・・・・次の委員長は、九十九遊馬君に・・決定しました。」

 

 

 

 

遊馬「・・・はあああっ!?!?」

 

 

堕紅はクラスのことも考えて孝に入れたが、最近の出来事もあり遊馬の票が孝を大きく上回ってしまった。

 

 

 

小鳥「遊馬が多数決で等々力君に勝っちゃったの。」

 

 

真月「僕が遊馬君を推薦しておいたんです。」

 

 

アストラル「遊馬、私には君が集団のリーダーとなる資質はない・・。」

 

 

ヒータ「同感。」

 

 

クラスの角で色々話す中、モニターの前の孝は少々落ち込んでいた。

 

 

孝(僕が委員長で無くなった今、僕は一体・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[生徒会室]

 

 

神宮寺「九十九遊馬。度重なる遅刻、臆面もない早弁、不可解な独り言、校内の風紀を乱しているあいつが委員長だと!?」

 

 

ギラグ「そうだ、あり得ねえ!」

 

 

神宮寺「ギラグ様。」

 

 

ギラグ「おう、副生徒会長。」

 

 

神宮寺(キング・オブ・生徒会長と呼ばれてきた、この神宮寺 守。今は副生徒会長の身ではあるが、九十九遊馬なんぞ、私が)

 

 

神宮寺「ギラグ様より授かったこのカードを使って必ず・・。」

 

 

生徒会役員達「バリアン世界のために!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[休み時間 屋上]

 

 

堕紅「あ」

 

 

太陽に照らされながら横になっていた堕紅は、ふとあることを思い出した。

 

 

ヒータ「どうしたの堕紅?」

 

 

ヒータは今、購買で堕紅に買わせた焼きそばパンを横で食べている。ただパンを持つ、食べることができるのは実体化しないとできない、だから人のいない屋上なら大丈夫だろうと思ってここに来ていた。

 

 

堕紅「いや、さっき委員長が遊馬に決まっちゃったじゃん。あの場面はアニメでもあって、生徒会がギラグに洗脳されるってのがあるんだ。」

 

 

ヒータ「へえ、そしたら洗脳された生徒たちが襲いに来たりとかするの?」

 

 

堕紅「そうじゃない、委員長の役目がなくなった孝も含めて、風紀コマンダーとかいう奴になったんだ。」

 

 

ヒータ「何それ?」

 

 

堕紅「要は校則をやけに気にする風紀委員みたいな。」

 

 

ヒータ「うわあ、めんどそう。」

 

 

堕紅「俺としては、ヒータが見つからなければ何の被害もないと思うがな。」

 

 

ヒータ「確かに。」

 

 

ヒータは持っていたパンをまるごと口に放り込んだ。

 

 

ヒータ「ほうふぁ、ふぁふぁうひっふぁふぉうふぉ(それじゃ、はやくいっちゃおうよ)。」

 

 

堕紅「まず全部飲み込んでから話そう。あっ、よく噛めよ。」

 

 

ヒータ「ふぉおふぇー(おっけー)。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[生徒会室]

 

 

遊馬「ったく!なんでもかんでも違反違反って冗談じゃねえ!」

 

 

神宮寺「だが九十九遊馬、君が校則に従えば良いんじゃないか。それになぜ君がそんなことを言えるのかい?」

 

 

遊馬「なぜって・・、い、委員長だからだっ!!」

 

 

孝(・・!)

 

 

神宮寺「よし、分かった。生徒会長に代わって、生徒会副会長、神宮寺 守が君とのデュエルに勝利したら、君は退学です。では、特命風紀コマンダー。デュエル中の校則違反のチェックを。」

 

 

孝「・・・はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[室内プール]

 

 

 

神宮寺&遊馬「デュエル!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[生徒会室前]

 

堕紅は神宮寺が生徒会長なのかを確認するため生徒会室前まで来ていた。

 

 

ガチャ(扉を開ける音)

 

 

堕紅「失礼します・・・あれ?」

 

 

生徒会室には今、誰もいない。恐らくは風紀コマンダーとして校舎を巡回してるのだろうが、生徒会長や副会長はあまりいなくなる事はないはずだ。堕紅が生徒会室の壁を見ると、生徒会のメンバー表が張ってあった。

 

 

ヒータ「神宮寺 守・・・この人、副会長って書いてあるけど?」

 

 

堕紅「・・・今の生徒会長は、違うっぽい。」

 

 

ヒータ「え?でも、アニメではこの人が生徒会長なんでしょ?」

 

 

堕紅「そのはずなんだけど・・・、やっぱもう一度会って確かめないといけないかもな。」

 

 

 

生徒会長 霧島 水季

 

 

 

ヒータ「霧島・・って誰?」

 

 

堕紅「どうやら、ここの生徒会長らしいね。アニメと違って。」

 

 

ヒータ「ふうん、どんな人なのかしらね。」

 

 

堕紅「・・・あ、そういや昨日、ヒータは家に居たんだっけ。色々ありすぎてて忘れてた。」

 

 

ヒータ「何のこと?私がエリアとデッキ構築してる間に何かあったの?」

 

 

堕紅は昨日会った霧島先輩について話した。と言っても、話したことは少なく、彼女自身が生徒会長であることを自白したこと、ライトロードデッキでこの世界では強い方のデュエリストであること、そのくらいだ。最も堕紅が知ってる彼女の情報がそのくらいしかない。

 

 

ヒータ「じゃあ、霧島さんは生徒会の中で神宮寺より上の立場であり、デュエルの腕も中々のデュエリスト、そしてアニメにはいなかったキャラクターってこと?」

 

 

堕紅「そうなるな。」

 

 

ヒータ「へえー。」

 

 

堕紅「うん。」

 

 

ヒータ「・・・」

 

 

堕紅「・・・」

 

 

話すことが無くなった。

 

 

堕紅「とりあえずそろそろ遊馬と神宮寺がデュエル始めてるだろうし、そっち行ってみるか。」

 

 

ヒータ「ええ、そうね。」

 

 

そうして堕紅とヒータは生徒会室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室の机の裏、そこには汗だくになった女子の姿があった。

 

 

水季「・・・見つかってない・・よね?」

 

 

水季(いきなり誰か入ってきたから、誰かと思って隠れたけど・・今の声って、堕紅君だよね。)

 

 

水季「でも隣に居た子って、誰なんだろ?」

 

 

 

 

 

?「たぶん、僕と同じ「精霊」なんじゃないかな?」

 

 

水季「ああ、なるほど、・・てことは、まさか!?」

 

 

?「まさか!?・・・なに?」

 

 

水季「まさかあの子も・・・堕紅君もなの!?」

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。