超平和主義鎮守府   作:たかすあばた

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予想よりも1話ほど長くなりました。
山本アリフレッドさんすみません、もうすこしだけ提督をお借りしますね。


第17話 超平和主義鎮守府にイーグルダイブ 激突

既に幾つかの連合艦隊が、提督達が捕らえられた孤島に向けて進行する途中に敵艦隊と戦闘を始めていた。既大本営から各鎮守府に、艤装にペイントを施した深海棲艦は味方につくという電文は渡っている。

「くっ、なんて数…全機、発艦!」

蒼龍の放った艦載機が敵艦隊に攻撃する。何体かの駆逐艦を撃破するが、すぐにまた別の駆逐艦が迫ってくる。雑魚だが、数が多い。この艦隊の長門から指示が飛ぶ。

「全てに構うな、弾薬を消耗するだけだ!道を塞ぐ邪魔者にだけ集中しろ!」

それも、言うほど簡単ではない。当然背後からの攻撃にもある程度気を使わなくてはならないし、航行能力を失うような損傷は何としても避けなければならないが、敵もそれは狙ってくる。長門が目の前の敵を殴り飛ばしたその時だった。

「!長門、後ろ!」

「へ?」

「海中」から、「空母」ヲ級が現れた。そう、敵は深海に暮らす、深海棲艦。艦種に関わらず潜水が可能なのだ。不気味な艦載機が、旗艦の長門に迫る。

「くそっ…」

が、その艦載機は全て撃墜される。味方の艦載機が撃墜した様だが、蒼龍のものではないようだ。間髪入れずに一斉射撃を受け、ヲ級は沈黙した。

「あ、あれは…」

沈みゆくヲ級。その向こうの水平線から姿を現した。

大和’、武蔵’、金剛’、山城’、明石’、加賀’、雪風’、羽黒’、神通’、夕立’、阿武隈’、鬼怒’で編成された、大本営連合艦隊。

「行くぞ!この先が例の孤島だ!」

「さあ、やるわ!」

「バアアニング・ラアアアヴ!」

「よく狙って…撃てぇ!」

「当たって!」

「優秀な子たちですから」

「雪風は沈みません!」

「撃ち方、始めてくださぁーい!」

「撃ちます!」

「素敵なパーティ、しましょ!」

「阿武隈、ご期待に応えます!」

「撃ち方、始めー!」

志庵鎮守府に転属した北上、大井に替わって阿武隈’、鬼怒’が編成されているが、長門たちを驚かせたのは、改二が正式実装されている阿武隈’はまだしも、まだ研究中と言われていた鬼怒’までも、阿武隈’と同じ改二の姿をしていた。

「鬼怒改二…!?開発に成功していたのか!」

「フッフッフ、これで北上さん達にも負けないよ!ネオ・ハイパーズと呼んで!」

「さっき別の敵も相手したけど…開幕雷撃ってまじパナイ!」

「長門、私達も負けてらんないよ!」

「おう!ゆくぞ、お前達!」

 

 

 

提督達は、洞窟を進んでゆく。志庵もリンヒルも規格外の力を持っているが、この状況では椅子提督が大いに役立ってくれている。

敵の倉庫から拝借した探照灯を使って敵を引きつけたり、目くらましをしてくれていた。

「そうだ、俺を狙え!他には構うな!ふははは!」

間近に4つも携えていればサウナどころの暑さではないはずの探照灯を平然と携えているあたり相当な精神力の持ち主であるし、心配するのも野暮というもの。ありがたく利用させてもらった。ふと、横の扉から微かに男性の声が聞こえた。

「ここにも提督が捕らえられてるのか?」

「慎重に開けろよ、罠かもしらん」

リンヒルに注意を促されつつ、薄く扉を開けて中を確認する。そこにいたのは…

「はあはあ…戦艦棲鬼の胸…はあはあ、エロかったなぁ…うっ」

提督の帽子を被った全裸の男がベッドにうつ伏せになって体を揺すって

 

バタンッ、と、視覚情報を処理しきる前にリンヒルが扉を閉めた。

「何も居なかった」

「うん、なにもなかったな」

「先を急ごうじゃないか」

「付いてきてください、皆さん」

無かったことにしました。

 

 

 

利根率いる志庵鎮守府連合艦隊は、他の助けを借りずに猛進を続ける。

「どうしたどうしたぁ!そんなものか貴様ら!」

「骨のある相手はいねぇのかよ!俺たちを沈めるつもりならACでも持ってこいっつの!」

「まったく、そんなことを言って本当に出てきたらどうするつもりだ…」

特に頭にきている利根と天龍に半ば呆れ、半ば共感しつつ海原を進んでいく。

この調子ならすぐに提督を取り戻せそうだ。

「艦載機からの情報だ!島まであと少し!それと、大本営の連合艦隊も近くまで来てるって!」

「よし!」

隼鷹がもたらす情報に、皆気合を入れ直す。

「え…?」

「隼鷹?」

「島が…」

突然青ざめた隼鷹に、皆首をかしげる。

「島が…真っ黒って…」

「どういうことなの?」

「深海棲艦で…数え切れないくらいの数…」

やがて、島の様子が観察できる距離に到達した。その様子を見てそこにいる全員が戦慄し、先程までの余裕は消し飛んだ。

海底火山が浮き上がってきたような形状の孤島の頂上から外周の海までを埋め尽くす、深海棲艦。それはまるで地面に転がった飴玉に群がる小アリのように蠢いていた。

「おえっ」

「川内、大丈夫!?」

「ご、ごめん。ちょっと集合恐怖症の気があって…」

「まあ、分からなくもないけど…」

幾ら何でも、多過ぎる。誰もがそう感じた。

「来ます!」

赤城の叫びを皮切りに、皆が戦闘態勢に入った。

隼鷹と赤城、艦載機によるドッグファイト。曙と不知火が攻撃を引きつける。天龍と川内は機動力で敵に張り付く。利根、那智、加古は弾着観測射撃で確実に削る。榛名、陸奥、扶桑は強火力で敵を沈めていく。見事な連携は一切の隙を作らないが、それでもいかんせん数が多い。いつか誰かの放った言葉である、「戦争は数が定石である」という事実を、彼女たちはここにきて実感していた。

 「このままじゃ島にたどり着く前に弾薬が尽きちゃうわ!」

 「クッ…もう島の洞窟も見えるところまできているのに…!」

 「沈みたい船はどこかしら~?」

 「!?」

 編成には加わっていないはずの声と共に、どこからか新たな砲撃が敵を襲った。

 「どの子も撃たれ弱すぎ~。少しはウチの提督を見習ってほしいわぁ~」

 「どいつもこいつも…私たちで不幸を運んであげるわ…ねぇ?山城」

 「提督までしっかり届けてあげなきゃね、姉様…」

 「部下を心配させるいけない提督にはた~っぷりお仕置きしてあげないとね。大和さん、今日も資材のことは気にせずに撃ちまくってくださいね?」

 「はい!なんとしても、提督を取り返して見せます!」

 「この子たちの実力は提督で実証済みよ…!第一攻撃隊、発艦始め!」

 「座り心地の良い椅子なのよね~。返してもらえますか?」

 「執務もこなしてくれる便利な椅子よね?」

 「まだまだ見下したりないのよ!」

 「提督に海底で改修してもらったこの艤装…今こそ、恩を返すときね」

 「この間のオムライスもまだ改良中なのよ!提督にチェックしてもらわなきゃ!行くわよ、磯風!」

 「はい、比叡さん」

 利根たちは少し安堵する。

 「増援じゃな!ありがたい!」

 「貴方たち、志庵提督の艦娘さんね?お噂はかねがね~。ここは任せてちょうだ~い」

 「ソナーに感有り!これは…!」

 磯風が叫ぶと同時に、海中から大量の深海棲艦が現れる。

 「こんなに…!」

 「いや待て!様子が変だ!」

 深海棲艦は同士討ちを始める。よく見ると、戦艦ル級が普通は付けていないはずの髪飾りを付けている。そして艤装には味方を示すペイント。

 「お主たち!」

 そう、志庵鎮守府に出入りしている深海棲艦達だ。

 「待タセタナ」

 「ココハ私タチニ任セテ!オ姉チャンタチハ提督ヲ助ケテアゲテ!」

 「あら…噂の深海棲艦さん…ですか?」

 「ええ、できる限り誤射しないであげてくださいね」

 不思議そうに尋ねてきた香取に、赤城が応える。

 「気を付けます」

 「それじゃ、お言葉に甘えて私たちは島を目指しましょう!」

二つの連合艦隊が共に陣形を組み、孤島に向かって進行し始めた。

「貴様ラ…敵ヲ見逃ストハ、深海棲艦ノ誇リヲ捨テタカ…?」

「ナアニ?私タチノ誇リッテ」

「闘争本能。強サヲ求メルソノ姿コソ、我ラノアルベキ姿ダ」

「争ウコトデシカ見イダセナイ誇リナンテ、コッチカラ願イ下ゲヨ。人間タチニ教ワッタ戦イ方、見セテアゲルワ」

 

 

 

武蔵’たちも深海棲艦の大艦隊と戦闘を始めていた。

「武蔵’さん、北西4㎞の方角に志庵鎮守府と椅子鎮守府の連合艦隊を確認!まもなく島の周辺に出撃した全艦隊が揃います!」

「よし!聞いたなお前たち!日本中の高練度艦隊に志庵提督のイレギュラー艦隊も揃ったんだ!敵がいくらいようが万が一にも負ける要素などない!」

「「「おおー!」」」

日本海軍再運営開始以来、未曽有の戦いが幕を開けた。

 


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