投稿しようとしたらデータが消えてしまいました。
そのせいでちょっと遅くなってしまいました。それではどうぞ。
どうも日向涼、英名ではアルトリウス・エリオット・ヒューガーです。皆からはアルかリョウって呼ばれます。
現在は嵐を呼ぶお嬢様、神月かりんが転入してきた翌日です。カリンは結局そのまま帰ったらしく、授業には出席しなかった。それでいいのかお嬢様。......今日はヘリコプターで登校したりしなければいいが。
「おはよ~、アル。ふぁ~、昨日の試合でこうふんしすぎてあんまり眠れなかったよ~。おんぶして学校まではこんで~」
「はいはい、寝言は寝てから言いましょうね。どうせもうすぐバス停じゃないか。......バスの中で寝ればいいだろ、着いたら起こしてやるからさ。だから勝手に人の背中にしがみつくな!」
「ふぁ~い......スヤァ」
寝やがった。気の抜けた返事が聞こえたと思ったらすぐに寝息が聞こえてきた。まあ、もうすぐバス停だしそこまでの辛抱だ。『岬越寺式おぶさり地蔵くんリターンズマーク3』よりははるかに軽いしね。1年の時はスクールバスがなかったから、二度寝したサクラを遅刻させないように何度学校まで背負って登校したことか。それに比べればだいぶマシだ。
「あ、アル君おはよう!!ってサクラまた寝てるの!?......ぐぬぬ、なんて羨ましい」
「おはよう千歳さん。バスはまだ来てないみたいでよかったよ。この前なんて乗り遅れたせいで走って次の停車駅まで追いかけるはめになったからね」
「あはは......あれはすごかったわ。サクラをおんぶしたままバスの隣を走ってるんだもの」
いや人間やれば出来るもんだよね。俺もまさかバスと並走できるとは思わなかったよ。きっとお地蔵さんのご利益だな。もの凄く重たいからな、あのおぶさり地蔵シリーズ。
「あ、バスが来たみたいだよ!あれ?なんかいつもより大きくなってない?」
確かにいつものスクールバスより一回りくらい大きくなってるような。それになんか新しくなってないか?今年から出来たスクールバスの車両は中古のものだったのに、今見えているバスはまるで新車のように見える。......なるほど、ヘリの次はバスというわけか、絶対にお金の使い方を間違っていると思うぞ。
『オーホッホッホッホ!!サクラさん!お迎えにあがりましたわ!』
朝から近所迷惑な音量の高笑いがバスから聞こえてくる。間違いない、
「サクラさん!貴女のライバルのカリンが......あら?眠っているんですの?というか、貴女は昨日の情報提供者ではありませんか。何故サクラさんを背負われているので?......羨ましいですわ」
この子泣きじじいもどきが羨ましいと申すか。......というか、やっぱりカリンってツンデレ入ってるよね。もしかして昨日ライバル宣言した後にさっさと帰ったのって、サクラと友だちになるのが恥ずかしかったからだったりして。
「あの、神月さん?私達、バスに乗ってもいいのかな?ていうか、これってスクールバスでいいんだよね?」
「ええもちろん。まあ、私が乗るには少し傷んでおりましたから新しくしておきましたわ」
そう言ってようやく扉の前からカリンが移動したのでバスに乗り込む。さて、どこにサクラを置こうか。......何故かそこだけ無駄に豪華な一番後ろの神月かりん専用シートに転がしておくか。うんそれがいい、きっとカリンも喜ぶだろう。
「なっ!?ちょっと貴女!何してますの!?そこは私の席ですわよ!?」
「いいじゃないですか。スペースにも余裕がありそうだし、『サクラの隣』じゃ不服かもしれませんが」
「!!?い、いえ!私は心が広いですから!どうぞそのまま寝かせて差し上げなさいな!なんといってもこのカリンに勝利したのです、きっと疲れが残っているはずですわ!!それに!ライバルの無防備な姿を観察することでなにかつかめるかもしれませんわ!そうですとも!!これは偵察、戦略的行いなのです。......他意はありませんわ!!」
何やら必死に自分の中で正当化しようとしているが、反対する様子もないので席にサクラを寝かせる。それにしてもこれだけカリンが騒がしくしているというのに、全く起きる気配がない。本当に昨日の疲れが抜けきっていないのかもしれないな。
「ど、どうしちゃたのかな、神月さん。急にそわそわしだしたけど」
「......自分の気持ちに素直になれないだけだよ、きっと」
「し、仕方ありませんわね。そ、それでは失礼しますわ。......ふふふ、全く無警戒にライバルに醜態をさらすとは、サクラさんもまだまだですわね!」
そんなことを言いつつ表情がにやけている。......きっと、神月の令嬢として、友達と普通に隣の席に座ることすらなかったのだろう。初めて出来た自分と親しい存在に、どう接していいのか図りかねているようだ。
「う~ん、むにゃむにゃ。アルぅ~まくら~」
「ひゃいっ!!」
サクラが寝ぼけてカリンの膝を抱え込み、枕代わりにしてそのままの体勢で動かなくなった。ついでに枕代わりにされたカリンも奇妙な声を発すると、そのまま固まってしまった。......面白いのでこのまま放置しよう。どうせ学校まであと20分くらいだし。
そしてそのままの状態で学校に到着した。サクラをたたき起こして固まっていたカリンも現実に引き戻し、現在教室である。
「あれ?神月さんもバスに乗ってきたの?寝てたからわかんなかったよ!」
「......ふふ!ライバルである私の前で無防備な姿をさらすとは。サクラさん!ガードが甘っくってよ!」
「え!?なんのこと!?」
「次に闘う時はこの私が確実に勝たせていただきますわ。そのためにはまず相手をよく知ることが重要ですわ!ですのでサクラさん!貴女のデータは様々な方面から集めさせていただきますわ。そう、この神月かりんが完全なる勝利を手にするために。本日の通学での出来事は、その一環に過ぎませんわ!!」
おお、ツンデレ、ツンデレ。昨日は強気な印象しかなかったけど、案外可愛らしい性格なのかもしれない。かりんも小学二年生なのだし、本当は普通の女の子みたいにしたいのではないのだろうか。
「?つまり、どういうこと?」
「要するに、サクラの事がもっと知りたいんだって」
「ななな、何を言っていますの!?い、いえ、データとしての情報は確かに必要ですわ!!......あら!もうこんな時間!席につきませんと授業が始まってしまいますわ!!」
そういって自分の席へと逃げるように去っていった。というか、カリンの席だけすごい豪華になてるんですけど。机と椅子がなんか中世の貴族が使ってそうなやつになってる。いつの間に搬入したんだ。
「皆さん、おはようございます。......それでは授業を始めます。一時間目は国語ですので教科書の5ページを開いてください」
先生が入ってきて授業が始まった。一瞬カリンの席の様子をみて固まったが、なんとか持ちこたえたようだ。カリンはつまらなそうにしているものの、意外にちゃんと授業に参加していた。
その後も特に問題なく一日の授業は終了した。まあ、給食の時にカリンだけフランス料理のフルコースだったのでそれをサクラが貰いに行ってカリンが狼狽えたり、体育の時間ではカリンがサクラに執拗に絡んだりしていたが。サクラのおかげかクラスの皆ともそれなりには打ち解けてきているようだ。
そして現在放課後である。
「それでは私はこれから対サクラさん用のトレーニングがありますのでこれで失礼しますわ。サクラさん、それと皆さんもご機嫌よう」
「ばいばーい!神月さん!また明日ね!」
カリンは挨拶をすると昨日とは違う高級車に乗ってそのまま帰ってしまった。サクラに挨拶を返されて少しにやけたのを俺は見逃さなかったぞ。それにしても対サクラさん用のトレーニングってどんなのだよ、気になるじゃないか。
「じゃあ私達も帰ろう!!ケイちゃんばいばーい!」
「あ!待ちなさいよサクラ!またアルくんと手をつないで!!」
いまだに俺はサクラに引きずられながら帰宅することが多い。しかも本格的に修行し始めてから握力が上がったのか、腕の痛みも強くなっている。そのうちサクラの手形が痣になって消えなくなってしまうんじゃないかと心配になってくる。結局今日も家までそのままだった。
「アリスさん、こんにちは!!あ!アナちゃんもこんにちは~。いつ見てもかわいいよね!家の弟とは大ちがいだよ!!」
「あら、サクラちゃんいらっしゃい。ほら、アナスタシア、サクラおねえちゃんが褒めてくれましたよ~」
「あーうー?」
サクラにアナと呼ばれたのは三ヶ月前に生まれた俺の妹だ。名前はアナスタシア・エリオット・ヒューガー、日本名は日向天音(ひゅうがあまね)。確かに非常に可愛らしい。髪の色は父さんと母さんの色が混ざったのか艶のある栗色で瞳はどちらもエメラルドグリーンだ。因みにサクラの弟は春日野つくし。現在3歳でやんちゃ盛りである。
「たしか今日は道場じゃなくてお出かけするのよね?あまり遅くならないようにするのよ?」
「うん!それじゃあアルをつれていくね!アリスさん、アナちゃんまたねー!」
玄関に荷物をおろしたところでそのままサクラに外へと連れだされる。まあ、こうなった原因は俺にあるのでおとなしく連行されるが。
それはいつもの様にサクラと修行をしている時だった。咲桜拳もだいぶ形になってきた頃、サクラがこんなことを言い出したのだ。
「う~。咲桜拳は使えるようになってきたのにまだアルに勝てないなぁ。......やっぱり技が咲桜拳しかないからかな。でもほかの技はビデオにうつってなかったし」
あれからサクラはリュウの試合のビデオを何十回と見ている。構えや基本的な技(通常のキックやパンチ)は見よう見まねながらも練習し、それなりの形になってきている。しかし、リュウの試合はどれも短時間で終わっているため映っていない動きが多く、必殺技にいたっては昇龍拳のみだ。
「でもあの人とおししょうさんはどこにいるかわからないってじんぱちおじーちゃんが言ってたし。どうしたらいいんだろう」
どうやらサクラはリュウや剛拳に技を習いたいらしい。でもあの人達本当にあちこち放浪しているようで、甚八郎おじいちゃんも未だに連絡をとることが出来ないらしい。どうしようか、一応『彼』も同門だけど、気が進まないなぁ。......しょうがない、いくらなんでも何か得る物はあるだろう。
「ねえサクラ、ちょっと待っててくれる?」
「え?いいよ。どこ行くの?」
「部屋からちょっと物をとってくるよ。おそらく、多分......もしかしたらサクラの役に立つかもしれないものだからさ」
俺は自分の部屋に行き、ある一枚のチラシを引き出しから取り出した。道場に戻るとサクラはまだ悩んでいるのかうーうー言いながら腕立てをしていた。悩む時くらいじっとしてればいいのに。
「あ、アルおかえりー!ねねっ!やくにたつかもしれないものってなーに?見せて見せて!」
「落ち着きなよ、別に逃げたりしないからさ。ほら、コレだよ」
サクラに持ってきたチラシを渡す。一年ほど前、電柱に(おそらく無断で)貼られているのを見かけたので剥がして回収しておいたのだ。
「えーと......『さいきょうりゅー』?なにこれ?」
そこには汚い字で『あの火引弾が直接指導!サイキョー流門下生募集中!!今ならなんと入会費が三割引!さらに!高枝切りバサミもついてくるぞ!』と怪しさ満点の文章が書かれていた。正直、これを見て入門しようと考える人はいないと思う。
「そこに火引弾(ひびきだん)て書かれてるだろ」
「あ、これ『ひひくたま』じゃなかったんだ。その人がどうしたの?」
「実はその人、あの剛拳さんの弟子......だったことがあるらしいよ?」
ちなみに元々知っていたが、怪しまれないようにちゃんと甚八郎おじいちゃんに弟子が居たことを思い出してもらって聞き出しておいたのだ。会ったことは無いらしいが、名前は覚えていたようで助かった。
「なにしてるのアル!!ほら!早くじゅんびして!!すぐ会いにいくよ!!」
まあ、こうなるのはわかってた。別に連れて行かれるのはいいんだけど、問題は別のところにあるんだよね。
「サクラ、もう一回チラシ見てみて」
「え、なんで?早く行こ~よーー!!......あれ?」
どうやらサクラも気づいたらしく、チラシを裏返したりしている。
「場所が書いてないんだよね、それ。電話番号とかもないし、行こうにもどこに行けばいいかわかんないでしょ」
そうなのだ。このチラシ、所在地はおろか地図や連絡先等が何一つ記載されていないのだ。これでは宣伝の意味が全くない。ただの資源の無駄遣いである。
「えーー。やっとリュウさんと同じ技がつかえるようになるとおもったのに~」
「まあ、今すぐには無理だけど、おじいちゃん達に調べてもらってるからすぐにわかると思うよ」
「本当!?じゃあわかったらいっしょに行こうね!ぜったいだよ!!」
という感じで俺までついていくことになった。なぜいつも俺を巻き込むのか。まあ、悪いことばかりでは無いけど。咲桜拳の修行なんて付き合わされすぎて、昇龍拳が少しだけ使えるようになったくらいだ。猿真似の領域は出ていないから実戦には使えないんだけどね。
そんなやりとりから数日。甚八郎おじいちゃんが場所を突き止めたらしく教えてくれたのだ。父さん達は都合がつかなかったが、案外近い場所だったので俺達だけで行く事になった。
「このあたりなんだよねー!あ!あれじゃない?」
近所の川の河川敷の近くにそれはあった。一見すると普通の道場だが、近づくにつれてだんだんと貧相さが浮き彫りになってくる。
「......なんというか、これは酷い」
壁にはところどころ穴が空いているようだし、周辺の草は伸び放題で、玄関の上に掲げられた無駄に大きな『サイキョー流道場』の看板がなければ空き家のようにさえ見える。その看板の文字も、自分で作成したのか墨がたれたりしていて非常に下手くそだ。
「見かけなんてかんけいないよ!道場の人が強ければいいんだよ!!」
その道場の人も酷いんですけどね。
『オラオラどうしたぁ!!そんなもんか!!』
道場の中からダンのものらしい声が聞こえてくる。誰かと対戦中なのだろうか、道場からは人の動きまわる物音が聞こえてくる。
「だれかと闘ってるのかな?」
『ナメんじゃねぇぞ!!いくぞオラァ!!』
「......それにしては一人の声しか聞こえないような」
『ヒャーホーッ!!......ちょー、余裕っす!!!』
お、やっと静かになったな。どうやら終わったようだ。サクラも待ちきれないのか、既に玄関の前で俺を待っている。
「終わったみたいだね!早く入ろーよ!」
言い終わると同時にサクラは道場の扉を開けた。おい呼び鈴はなくてもノックくらいしろよ。
「......来ねぇ。あのチラシを貼ってもう1年も経つってぇのに!!何で入門希望者が来ねぇんだよ!!来るのは電気の差し止めの通知とかばっかだし!ちくしょぉ~!なにがいけなかったんだ!......やっぱり三割じゃなくて四割にしとくべきだったか?それともサイキョー流Tシャツもつけるべきだったか!?」
ストン。サクラは何も言わずに扉を閉めた。そりゃそうだろう。憧れの人の同門がいると期待して扉を開けてみたら、床に転がってなにやらみっともない事をのたまうピンクの道着の男がいたのだ。心なしかさっきまで期待で輝いていたはずの瞳から若干ハイライトが消えている気がする。
「......ウン!イマノハナニカノマチガイ!キットソウダヨ!」
サクラが少し混乱して扉を開けないので、しょうがなく俺が開けて中に入ることにした。開けた先はさっきと変わらない光景だった。とりあえず、声を掛けてみるかな。
「ごめんくださーい」
その声に反応したのか、もぞもぞと緩慢な動きで床に転がったままの男がこちらに振り返る。うん、かなり若いけど間違いなく火引弾だな。というか、涙ぐらい拭いて欲しい。
『火引弾』、ストリートファイターZEROシリーズから登場した原作キャラクターだ。ムエタイの帝王サガットに試合で父親を殺されており、その復讐を目的に行動していた。リュウやケンと同じく剛拳に師事していたが、その復讐心からくる殺意を捨て去る事ができずに破門されたという経歴を持つ。これだけみると重い過去をもったダークなキャラクターのようにみえる。
しかし実際は、『多彩な挑発を何度でも使える』、『中途半端な性能の必殺技』、『判定の弱い通常技』、『無駄に自信に満ち溢れた性格』などの要素から、ゲーム中ではコメディーリリーフとして扱われ、酷い目にあったり弄られたりする所謂ネタキャラである。
見た目はいまいち冴えない顔に、長髪をオールバック風にして後ろで束ねたピンク色の道着姿の男性である。それなりに鍛えられた体をしているが、ストリートファイターⅣでは少し腹が出ていたり、生え際が後退してきていたりとやっぱりネタキャラである。
「なんだぁ?電気代なら来月には必ず払うって......誰だ?お嬢ちゃん達?見せもんじゃねぇぞ?用がないならさっさと帰んな!」
「あ、いえ。このチラシを見てき「よく来たな!!入門希望者か!!もしかして二人共!?サイキョー流は女子供だろううと誰だって大歓迎だぜ!!!月謝さえ払ってくれればな!!よーし!今なら特別サービスでサイキョー流Tシャツもつけちゃうぞ!!ほら!ここに名前書いて!あ、住所もな!!」あ、あの、ちょっと待って!少し落ち着いてください!」
チラシを見たといった瞬間に猛烈な勢いで復活して詰め寄ってきた。しかもその手には入門用紙が既に握られていた。いつの間に出したんだ。
「......ねえねえ、オジサン」
あ、サクラが復活したみたいだ。ダンに何やら話しかけている。
「俺はオジサンなんて歳じゃないぜお嬢ちゃん!呼ぶならおにーさ、いや、待てよ、そうだ!サイキョー流に入門したからには火引師匠と呼ぶがいい!弾師匠でも可!大先生とかでもいいぞ!!」
まだ入るって言ってないのに、もう入門した扱いして師匠と呼ばせようとしてくる。ダン必死だな。
「ヒビキさんって本当に剛拳さんの弟子だったの?」
ピシィッ!!と硬直するダン。どうやら剛拳の名前は彼にとってはタブーだったようだ。破門されてるしそらそうだよね。
「お、お前らどこでそれを!?いや、待て!お前らはサイキョー流に入門しに来たんじゃないのか!?なんでアイツの名前がでてくるんだ!」
「えーとですね、実は剛拳さんの現在の弟子の闘い方にこっちの子が憧れていまして。でも剛拳さんもそのお弟子さんもどこにいるかわからないので、同門だったヒビキさんなら何か教えてもらえるんじゃないかって思って来たんです」
「なんだと!?......だがなぁ、俺は......」
ダンはなにやら戸惑っている。確かに教えられるかっていったら微妙なとこだもんね。しかも自分の流派じゃなくて、破門された流派を教えてって言われたら誰だって戸惑うと思う。
「私、昇龍拳じゃない技もしりたいの!......私、もっと強くなりたいんだ!あの人みたいに!!だから、おねがいします!!!」
「うっ!し、しかしなぁ......」
ふむ、後ひと押しといったところか。サクラの真摯な視線にダンは押され気味だ。
「ヒビキさん」
「な、何だいお嬢ちゃん?」
「どうか教えていただけませんか?......勿論、月謝はお支払いしますよ」
「よし、わかった!!サイキョー流じゃないのが残念だがこの火引弾に任せとけ!!」
チョロい。お金が発生するとわかった瞬間快諾しやがった。
「そうと決まれば、さっそくお前らの実力を見せてもらおうか!あ、名前も教えてくれよな。いつまでもお嬢ちゃん呼びじゃ紛らわしいからな!」
「やったーー!!私、春日野さくら!よろしくね!ヒビキさん!」
「おう!よろしくな!サクラ!ついでにサイキョー流も教えてやるぜ!」
元気を取り戻して挨拶を交わすサクラとダン。正直サイキョー流は断空脚以外は微妙な性能なんだけどね。あ、でも波動拳の打ち方の参考にはなるかもしれないな!今まで修行続けてきたけどまだ我道拳くらい(2、3歩分くらい)しか飛ばないんだよね。威力も弱いし。
「それで、もちろんもう一人のお嬢ちゃんも入るんだろ?名前はなんていうんだ?」
「名前は日向涼、英名がアルトリウス・エリオット・ヒューガーです。リョウかアルって呼んでください。他の流派を既に習っていますが、サクラと同じ修行は受けるつもりです。あと、俺は男です。お嬢ちゃんはやめてください電気だけじゃなく水道も止めてやろうか?おい?」
「ひぃっ!す、すまねえ!リョウ......はちょっと知ってる奴と同じ名前だからアルって呼ばせてもらうぜ!よろしくな!で、どっちから先にするんだ?」
ここに来た時からずっとお嬢ちゃん呼ばわりされて流石に少しイラッときてしまった。慣れているとはいえ、嫌なものは嫌なんだ。
「はーい!私がやるーー!さいしょから全力でいくよーーー!」
俺が自分のコンプレックスを再認識していると、サクラが名乗りを上げた。いつものことながら気合入ってるな。
「よぉーし!ならば最初に一発打ってくるがいい!!オレは動かないからよ!遠慮せずに来いよ!」
ダンが調子にのってそんな事を言い出した。まあ、小学二年生相手だし舐めてかかるのはわかるが。
「せぇーのぉっ!!咲桜拳!!」
「ごほぉっ!!」
サクラの咲桜拳が身長差のせいでもろに鳩尾に入った。油断していて無防備な急所に攻撃されたダンは堪らず膝をついた。
「や、やるじゃあねえか。よ、よーし、合格だ。今日はここまでにしとこう。アルの方は明日見てやるからな。ぐ、ぐぉぉ......」
「......ねえ、アル。だいじょうぶかな?私、ちょっとふあんになってきたよ......」
これがこの世界でのサクラと、ついでに俺との火引弾の出会いだった。
次回は意外なアイツが登場!
......正直、最新作に参戦が決定したと聞いて誰得だよ!?って思いました。
???「俺のチェーンのサビにしてやるぜぇ!!」