.....テヘペr《グシャァ
...遅くなって本当に申し訳ありませんでした!!
相も変わらずの深夜仕上げのチェック不足です。もし誤字脱字や、寝ぼけて書いたんじゃねーの?って個所があったら容赦なく指摘をお願い致します。
もちろん感想、批評も絶賛募集中です。
それではどうぞ!
どうも皆さんこんにちわ。届け物をするためにインドに来たはずなのになぜかストリートファイターの原作キャラクターであるダルシムと闘うことになってしまったアルトリウス・E・ヒューガー、日本名では日向涼です。なんか最近こういうパターン多い気がする。まあそうなる原因はわかってるんですけどね、
さて、ダルシムと闘うことになったのはもうしょうがないとして。俺の前にダルシムと手合わせをすることになった(というか自分から飛びついていった)サクラだが......実はもうその手合わせは終了していたりします。
「......きゅう」
「ヨーガ」
結果から言うなら───サクラの惨敗である。というか、ほとんど自爆といってもいいかもしれない。一つ言えることは、今のサクラはダルシムとの相性が非常に悪かった、ということだろうか。
「曇りなき拳は見事。踏み込みに惑いもなし。───しかしそれだけでは足りぬ。ただ闇雲に突き進むだけでは思わぬものに躓いてしまうぞ。時には争いの中にあっても凪のように心を平静に保たねばならぬのだ。勇猛と蛮勇は似て非なるものと心得よ」
「...うぅ~。まさか消えるなんてぇ...!」
ダルシムの
ダルシムの言葉はつまり『猪突猛進すぎるからもっと落ち着きなさい』ということだろう。まったくその通りだと思う。もっと落ち着いて冷静な立ち回りをしていれば結果はもう少し違ったものになったはずだ。少なくとも決定打になった最後の一撃は防げた筈だ。『消える』のは予想できなかったとしてもその突進の前にあの間合いからの攻撃を嫌というほど受けていたのだから。そのせいで焦れてしまって突進していったわけだしね。つまり、君が闘い足りないのは自業自得なのだよ。...だからねサクラ?俺を揺するのはやめなさい。悔しいのはわかるけどこれから俺の番だからね?闘う前からダメージが発生しちゃうからね?......落ち着け!
「......さて、次はお主の番であるな。その前に一つ、訊ねたき事がある。よいだろうか?」
「え?はい大丈夫ですけど...なんでしょう?」
「お主は──いったい
「......えーと、どういう意味でしょうか?」
え?いきなりどうしたんでしょうかダルシムさん?その『私今見たこともない珍獣に遭遇してます!』的な視線はなんなんです?白目で読み取りずらいはずなのにはっきりと伝わってくるんですけど。剣呑な感じは全くしないのはいいんですが『何者だ?』と言われましても困るのですが。そもそも珍獣はどちらかといえばそっちだと思うんですけど。
「......
「クシ...?ヤマ...?よくわからないけど、アルとファイトすればわかるってことだよね!アル頑張って!」
いや、クシティガルバって何?アスラは確かそんな感じのゲームがCAPC〇Mさんから出ていたような気がするけど、今回は関係はないだろうし。ヤマラージャもである。確か『ラージャ』は『王』って意味があったと俺のゲーム脳が告げているが、“ヤマ”の部分がわからない。『女神転生』シリーズに『ナーガ』と『ナーガラジャ』ってモンスターが出てくるんですが、違いが判らなくてGo〇gle先生に聞いてみたらそんな感じの答えだったんですよね。つまり、〇〇王みたいな感じ?そのまま日本語にすると山王だけど...余計わからなくなってきたな。まさか某高校バスケの頂点じゃないだろうし。
「...正直あまり理解はできませんが、よろしくお願いします!」
「うむ。......なに、邪気は感じられぬ故そこまで身構えずともよい。あくまでも“お主自身”を問うのみ...ヨーガ」
気にはなるが考えるのは後だ。今は目の前の相手に集中しないとね。特に、自分より強いとわかってる相手に何かを気にしながらなんて勝負にならないからな。さっきのサクラとの手合わせを見ただけでもわかる。ダルシムの実力は
「それじゃあ...始め!」
「いきます!」
サクラの開始の合図がかかった瞬間に俺は前方に踏み込んだ。本来ならば開始直後のある程度距離が開いた状態であれば、波動拳や波動壁による牽制を選択するんだけど今回はそれは悪手である。なぜなら
「ヨガッ!」
「くっ!?」
案の定先ほどまでいた位置に
「はぁ!」
「ヨガッ!」
躱してさらに踏み込みこちらも攻撃を放つが...先ほどのサクラとの闘いの時と同じくダルシムの身体を捉える前に目の前から
「ふんっ!」
「ちぃ!?」
むしろ状況は、開始時よりも悪化しているといえるだろう。振り向いた瞬間に今度は鋭い蹴りが、まるで鞭のように横薙ぎに弧を描きこちらの逃げ道を限定しつつ飛んできた。ガードは間に合ったが腕に残る確かな痺れが今の攻撃の危険度を知らせてくる。そしてダルシムの攻撃はそれだけでは終わらなかった。
「ヨガファイヤッ!」
ダルシムの口から噴出された、燃え盛る火球がかなりのスピードでこちらへと飛来してくる。火の神アグニへの信仰が成した幻影の炎、『ヨガファイヤー』である。
幻影だからといって侮ってはいけない。触れれば身体は炎に包まれ、実際に焼かれてるような感覚を確かに覚えるのだから。事実、先程の手合わせでもサクラが拳圧で振り払おうとして「熱ぅ!?うわっちゃっちゃ!?み、水はどこぉ!?」というように見事に取り乱していた。ちなみに俺からもサクラの腕が一瞬炎に包まれて燃えているように見えたのだが、すぐに火は消えてしまったし、服や髪などの燃えやすいであろう場所もどこも焦げたりといった変化は見られなかった。だが、その後のサクラの動きから判断するに、しっかりとダメージは受けていたようだった。つまり、基本的には通常の飛び道具と同じだと考えていい。...色々と無茶苦茶な気もするが、今更だよね。
「波動拳!」
俺は一度バックステップをしてから波動拳でヨガファイヤーを相殺した。え?なんでバックステップしたのかって?さっきも言ったけど、波動拳より先に相手の攻撃が届く位置だったからだ。開幕から速攻で距離を詰めにいったのに、一連のやり取りが終わってみれば、開始時よりも距離が開いていた。......いやはや、やっぱりとんでもないわ、ダルシムさん。
ファイトにおいて、相手との距離を詰める方法はいくつかある。大まかに分けると大体3つくらいだろうか。例えば、
1、先程の俺のように自分から接近する。ダッシュや跳躍などで自分から相手に近づく、恐らく最もスタンダードなもの。
2、相手から近づいてくるように仕向けて待つ。波動拳などの飛び道具で一方的に牽制して相手にこの距離だとまずいと思わせる、ダンのように挑発して相手の精神状態を揺さぶってこちらに来るようにするのもこれに該当するだろう。
3、環境、運による要素を利用する。例えば相手を壁際に追い詰めて逃げ道を塞ぐ。高所などの自分に有利な位置取りをることで相手にプレッシャーをかけたりするのだ。あとはなんらかのハプニングなどで偶然相手との距離が近くなることもあるだろう。突然相手や自分の背後で謎の爆発が起きたり、いきなり足場が崩れたり、上から丸太が降ってきたりとかよくあるでしょう?えっ?ないの?......あれ?
そ、それで、今現在俺が対峙しているダルシムはどうなのかといえば...
4、『届くまで伸ばせばいい』である。どれだけ相手が遠くに居ようが、そこまで攻撃が届くならたとえ一歩も近づいていなくとも距離を詰めることとそれは同義。そして、ヨガを極めたダルシムはそれを可能としている。
『ダルシム』
その
もちろんゲーム
そんな『遠距離型』の共通する弱点、『距離を詰められると弱い』を考慮しての開幕速攻であったのだが...さすがにそこまで甘くはなかったようだ。むしろ現実を見せられたといっていいだろう。
───この距離を詰めるのは容易なことでない、と。
「ふむ。先ほどの手合わせ、しかりと『見』が出来ておるようだ。私の動きにすら惑わされぬ良い『眼』をしておるな。だが、いつまでもそのままでは結果は変わらぬぞ?」
戦闘中だというのにそれを感じさせぬほどの静謐さを湛えた声で、ダルシムが俺へと告げる。確かにこのままは文字通り手も足も出せずに負けてしまうだろう。
──このままならね!
「波動壁っ!」
「...ほう?」
波動壁を俺とダルシムの間に発生させる。この波動壁はダルシムの視界を一瞬だけ奪うためのもの。発生の速さを重視して威力を完全に捨てることによって繰り出すことができる、中身はスッカスカの技である。直撃してもノーダメージ。ちょっと強い風に吹かれた程度だろう。本命はっ!
「─からのぉっ!閃空脚っ!!」
「ヨーガッ!」
かーらーのぉ~!!
「──そこだぁ!はぁっ!!」
「むぅ!?」
波動壁を目くらましにして放ったこれまた
ゲームではヨガテレポートには現れた瞬間に若干の硬直が発生する。サクラとの手合わせの時から観察していたが、どうやら
そして、どうやら今回は見事に勘が当たって転移して現れた瞬間のダルシムへと攻撃を繰り出すことができた。......出来たのだが。
「───ヨガッ!」
「っ!?嘘でしょ!?くぅっ!?」
なんとダルシムは上半身の中程、お腹から胸のあたりの攻撃が当たりそうな個所だけを横にグニャリと
「ヨガフレイムッ!!」
「っ!?」
咄嗟に後ろに跳び下がった瞬間、眼前には燃え盛る炎の壁が出現していた。正確にはダルシムが自身の眼前に噴出し続ける炎の塊、『ヨガフレイム』である。あと少しでも距離をとるのが遅れていたのなら丸焦げになるところだった。前方にいるはずのダルシムが見えなくなるほどの凄まじい火炎である。幻影の炎なので精神的なダメージだけのはずだが、もし喰らってしまっていたらこの組み手は終了していたかもしれないな...俺の完封負けという形で。
「ふん!」
そして炎が収まった瞬間に息つく暇もなく容赦ない拳が伸びてくる。もちろん、こちらの攻撃が届かない距離からだ。ガードすることはできたが、不完全な態勢であったためにダメージは大きい。......本当に絶望しそうになるほどに距離を支配されてしまっている。しかもここでありがたくない事実も判明した。ここのダルシム、恐らくだけど...
先程の回避といい、反撃として繰り出されたヨガフレイムの発生速度といい、明らかに
「先ほどの動きは見事だった...と、言いたいところではあるが、躱された時に少々心が乱れたようだな。それでもなお動きを止めることなく跳び下がれたのは日頃の鍛錬の賜物であろう。ともあれ...───さてどうするアルトリウスよ?」
確かに甚八郎おじいちゃん達の鬼畜じみた修行によって条件反射レベルで刷り込まれていたからこそ、さっきの攻撃を回避できたというのはあるだろう。毎度ぼろ雑巾のようになっている身としては正直ちょっと複雑な気持ちになるが、無駄ではなかったということなので喜ぶべきなのだろうが。
そして、またしても静かな、それでいて確かな意思の込められた声でこちらに問いかけてくるダルシム。確かに
───『お前はそこで止まるのか?』と。
ならば俺の出せる返答は一つである。隙が生じぬ程度に一つ大きく息を吸い...大きな声で答える。
「───推して参ります!!!」
「───見事!」
開幕の速攻にも似た勢いで返答と共にダルシムへと駆け出す。とにかく近づかなければこちらの攻撃を当てることは出来ない。もちろん自棄になったとか、サクラのように焦れてしまったという訳ではない。
手合わせという場である以上、これ以上のダメージを受ければそこでこのファイトは終了してしまうだろう。先程もダルシムが言っていたようにこのまま守勢に回ればいずれ敗北する運命は変わらないのだ。───だからこそ踏み込まねばならない。どちらにせよこの攻防が最後になるだろう。なら、今できることを出し切るまでだ!
「てぇい!!」
掛け声と共にダルシムの両拳が迫りくる。ダルシムの『ダブルズームパンチ』である。ゲームでは強パンチ攻撃
として使用される攻撃だ。文字通りズームパンチがダブルで飛んでくる威力の高い通常技だが、その分通常のズームパンチよりも隙が大きい。本来ならヨガファイヤーなどで牽制しつつ相手の回避先にいわゆる『置いておく』ように出したり、ヨガファイヤーの追撃として出すのが定石なのだが...これを今繰り出してきたということは...
「はあっ!」
「ヨガッ!」
伸びてくる両拳を躱して攻撃してみれば、予想通りヨガテレポートでまたしても目の前からダルシムは姿を消してしまう。やはり先程のダブルズームパンチは当てるためのものではなかったようだ。本来なら腕を伸ばしたままテレポートなんて、いかにダルシムであろうと戦闘中にとっさに行うのは難しいはずだ。おそらく最初からこのヨガテレポートを行うつもりだったのだ。さて、問題は消えたダルシムがどこに現れるかだけ───っ!?
「ヨーガッ──」
ほんの一瞬、ダルシムの次の出現地点を予測しようと意識を周囲に向けたその瞬間。先ほどと
「──フレイムッ!!」
今までと同じように離れた位置にテレポートすると思わせて、ほぼ回避不能の至近距離からヨガフレイム。先ほどのダブルズームパンチはこのための布石だったようだ。本当にダルシムは闘いが『巧い』。完全に虚を突かれてしまった。この手合わせはダルシムのこの一手で俺の『詰み』だっただろう...───
「───はぁああっ!!」
「むう!?」
確かに想定外のヨガフレイムだった。でも俺はこの攻防で、そのヨガフレイムを待っていたのだ。
そしてこの技の性質上、
「鬼灯改(ほおずきかい)!!」
『波動を纏った突進突き』という突破力の高い性質はそのままに、威力を落とすことを代償として発生速度とリーチを大きく伸ばした『鬼灯』を放つ!これでぇっ!届く!いや、届かせるっ!!
~side ダルシム~
自身の眼前に顕現せしアグニの炎。その炎を切り裂き、蒼き光を纏いし彼の拳がせまる。たとえこの炎が幻であるとしても決して容易くなせることではない。
此度の手合わせ、確かに多少の迷いや揺らぎはあった。しかしかの
まことに面妖なオーラを纏ってはいた。しかし、
───しかし、此度は届かぬ。
見事な踏み込みではあった。しかし、その目に宿る光が私にこの一撃を予見させてしまっていたのだ。故に、
一歩、飛び下がる。
それだけで彼の拳は我を捉えること叶わず、空を切ることになるだろう。
......そのような気のゆるみを持ってしまった私は、まだまだ修練が足りていなかったようだ。次の瞬間、届くはずのない彼の拳はまるでヨーガの御業の如く
~side Out~
───『ズームパンチ』はなにもヨガだけのものではない。
確かにここがストリートファイターの世界である以上、真っ先に思い浮かぶのはやはりダルシムのズームパンチだろう......本来ならば。
しかし俺はもう一つのズームパンチを知っており、さらにはその『原作』が好きだったという理由からそれが再現できないかを何度も試行錯誤しまくったあげく、修得さえしてしまっていたのだ。正直、あまり実用性がないので今まで実戦では一度も使ったことはなかったりするのだが。だってこの技を修得したのって、ぶっちゃけただの趣味だしね。
───その技はッ!
関節をッ!関節を外して腕をのばすッ!その激痛は波紋〈波動〉エネルギーでやわらげるッ!
「───(ジョジョ式)ズームパンチッ!!」
「ぐぅ!?」
この感じッ!確実に波動(をまとったパンチ)が入ったッ!!あれだけ遠かったダルシムに、
「くぅ...!」
「......うむ。此度はこれまでのようだな」
手合わせはこれで終了ですけどね。確かに届いた。届きはしたが、まだそれだけだ。ヨガフレイムを突っ切るという無茶をしたのだから当然といえば当然なのだが、既にその時点で手合わせの終了を告げられてもおかしくないようなダメージを受けてしまっていたのだ。正直、そんな状況での先程の一撃がルール的に有効かどうかは微妙なところですよね。
い、一撃は一撃だし!(必死)
「...はい。ありがとうございました」
「そう悔いることはない。先程の一撃、じつに見事であった。手合わせとはいえ、私は触れさせるつもりはなかったのだから。お主の拳、確かに我が身と心に届いたぞ」
「ねえねえアル!いま腕がダルシムさんみたいにグイーンって伸びたよね?!どうやったの!教えて!教えて!」
ちょっ、サクラいきなり飛びついてこないでくれ!そして興奮したときに俺を激しく揺さぶる癖をやめるんだ!今せっかく一撃しか入れることが出来なかった俺を、ダルシムが励ましてくれてるんだから。あと、組手だったとはいえ原作キャラとのファイトの後でその振動はキツイから!
「...ふっ。仲の良いことだ」
「あら!ちょうど終わったところかしら?皆さーん!食事の用意が出来ましたよ~!」
「やったーー!わぁ!すっごくいい匂い!」
微笑を浮かべたままダルシムがサクラを全然止めてくれないので俺の意識がそろそろ危なくなってきた頃、ちょうどサリーさんが食事の用意が出来たと伝えに来た。瞬間、俺を揺さぶっていたサクラはダルシムの家の方へと駆け出していった。...ふぅ、助かった。
「さて、我々も行くとしようか。自慢ではないが妻の料理はなかなかのものだぞ?」
「あ、はい」
凄いナチュラルに惚気られた件。まあ、確かに先程からカレーの凄くいい匂いがここまでしてきて、ファイトの後ということもあって食欲が非常に刺激される。サクラではないけど、思わず駆け出したくなる程だ。
そうして俺もダルシムの後についていき、サリーさん特製マスールダールカレーをごちそうになるのだった。
「ごちそうさまでした~!いつも食べてるご飯じゃないカレーは初めてだったけど、すっごくおいしかったです!!」
「ふふっ!そんなに喜んでもらえると作ったかいがあったわね。はい、おそまつさまでした」
いやー、ほんとに美味しかったです。サクラの反応は決して大げさなものではない。マスールダールだけでなく、他にも数種類のカレーが用意されていたのだが、どれもこれも絶品だった。スパイスが効いていながらもどこかまろやかでコクがあり、ライス(インディカ米かな?)とチャパティというらしい薄焼きのパンに非常によく合っていて、サクラはなんと3回もおかわりしていた。まったく、遠慮のない奴め。え?俺?ちゃんと2回までに抑えましたよ。
「さて、これから二人はどうするのだ?急がぬならば此処に泊っていいってもよいが」
「いえ、おつかいも無事終わりましたし、そこまでお世話になるわけにはいきません。観光がてら街に戻りつつ適当な宿を探します」
「え~!もう一回ダルシムさんと手合わせしたかったな~!もうちょっとダッタ君と遊んだりしてみたかったのにー。ツクシとちがって可愛いし」
サクラがすこし不満そうに言いながら近くにいたダッタ君をぬいぐるみのように後ろから抱きしめる。こら!急に抱きしめるんじゃありません!ダッタ君が戸惑ってるじゃないか。最近ツクシ君(サクラの弟)がサクラに対して生意気になってきたからってよその子に手を出そうとするんじゃないよ。
「ほら、移動途中にも強い人がいるかもしれないだ「そうだった!なんか浮かんだり火を吹いたり大岩の上で片手で逆立ちしながらバランスとったりしてる強そうな人がいたもんね!ねえねえ!ダルシムさん!このあたりに強い人とか、もしくはファイトの気配がする変わったこととかなかった?」......はぁ」
俺が移動中にもしかしたらファイトができるかもといい終わる前にさっきまでの不満気な表情から一転、ダルシムに目をキラキラさせながら質問し始めた。チョロい。いや確かに浮かんだり火を吹いたり大岩の上で片手逆立ちしてるひととか実際にいたけどさ。インドでは割と普通の光景だぞ?そんなに期待しない方がいいと思うのだが。
「ム?そうだな...ここ、インドにはヨガマスターと呼ばれる者たちがいるが、生憎と近くにはおらぬからな。変わったことといってもすぐには思い浮かばぬ...」
ほらダルシムも困ってるだろ。ヨガマスターも近くにはいないらしいし、急にファイトの気配がする変わったこととか聞かれても普通はすぐに出てこないだろ。まあ、目の前に一人
まあ、確かにダルシムはシャドルーに狙われても不思議ではないほどの実力を持っているから変わったことが起こっていてもおかしくはないけど。......そう考えると、なにか起こっていたとしたらシャドルーの可能性が高いってことでヤバいんじゃないか?
「......ああ、そういばここより北西の地に、何やら奇妙な塔のようなものが現れたとか。プロレスなどの格闘技で用いられる
よしサクラ、今すぐ南東に向かおう。ダルシムさんも近づかないでいてくれるみたいだしね。リングだけならともかく、塔のように積み重なっているということは高確率で『あの二人』が揃っている。ある意味、シャドルーが関わっている状況よりも厄介だ。絶対に遭遇したくない。
「あ、アル?急にどうしたの?ダルシムさんがちょっと引くくらい変なオーラ出てるよ?」
「......おっと。すみませんダルシムさん。ちょっとその状況にはいい印象がなくて」
「いや、どうやら本当に近づかぬほうがよいようだ。助言に感謝しよう。......よほどに傷が深いとみえる」
......さて、内容はともかくダルシムからの情報によってはからずも向かう方向は決定した。そろそろお暇するとしよう。
「それではサリーさん、ダッタ君、お世話になりました」
「うん!カレー!とっても美味しかったです!ダッタ君もまたねー!」
「あら!ありがとう!インドに来ることがあれば是非またいらっしゃいな!ね、ダッタ?」
「う、うん。またね、おねえちゃんたち」
ダルシム家の三人がわざわざ全員で見送りに出てくれた。ダルシムにいたっては近くの町まで送ってくれるそうである。本当にいい人たちだ。ウル父さんからの頼まれごとでちょっと、いや、かなり嫌々訪れたインドであったのだが、この出会いは非常に有意義なものだった。カレーも絶品だったしね。作り方をサリーさんから少し教わったので、帰ったら味の再現にチャレンジしてみよう。日本でスパイスとかが全部揃えばだけども。
「それでは二人とも、参ろうか」
ダルシムに促され、俺たちはダルシムの村を後にしたのだった。来るときに通った道とは少し違う経路を15分ほど進むと、ダルシムの村よりは少しい大きいといった規模の町に到着した。宿泊施設とかもあるそうなので、今日はここで宿をとってもいいかもしれないな。送ってくれたダルシムには感謝である。
「さて、ここが一番近い『町』だ。此度は妻への届け物、感謝する。先の手合わせは私にとっても意味のあるものであった。妻も言っていたが、またインドに来ることがあればよるといい。歓迎しよう。今は案内ぐらいしかできぬがな。...さて、この街にはそれなりに武術に重きを置いている修験者もいると聞く。探してみるのもいいかもしれんな」
「え!ダルシムさんそれ本当!?アル!私ちょっと行ってくるね!ダルシムさんまたねーー!!」
「あ!?おいサクラ!ちょっと.....行っちゃたよ」
こうしちゃいられねぇ!とばかりにダルシムとの別れの挨拶もそこそこに駆け出していくサクラ。あのバトルジャンキーめ、神月特製の通信端末で連絡ができるからっていきなりどっか行きやがった。やれやれ、いくらなんでもダルシムに失礼だろう。後で説教だな。
「...はぁ。すみませんダルシムさん。あとでしっかり言って聞かせておきます」
「ふっ、よいのだ。お主には言っておかねばならぬことがあったゆえ、あのように言ったのだ。確かに、ここまでの勢いとは思わなんだが」
「そういっていただけると助かっ...はい?」
どうやら先程のサクラを焚きつけるような発言は、狙ってのものであったらしい。サクラの行動が失礼にならなかったのはいいが、わざわざそうやって二人きりにしてまで言っておかないといけない事ってなんなんですかね?なんだかヤバそうで怖いのですが。
「───アルトリウスよ。拳を交えた時に、僅かではあるが視えたものがある。その身にまとう混沌としたオーラ故か、はたまたお主自身の性質がそうさせるのか......お主のゆく道はひどく険しく、容易きものでは決してないだろう。立ち塞がる
「え、えっと。...ハイ、ガンバリマス」
ガチで未来とか視える系の人から、『お前の未来、ヤバそうなトラブルだらけやぞ。頑張れ』的な事を言われてしまった件。え?なにが視えたの?ねえなにが視えたの!?...で、でもほら!最後には助かる的なことも言ってくれてるし大丈夫だよね!(無理矢理なポジティブ思考)
......大丈夫だよね!?(ガチビビり)
「うむ。...引き留めてしまってすまなかったな。そろそろサクラの方に向かうがよかろう。......なにやら向こうの方が騒がしくなっておるようだが?」
「っは!?サクラの奴、もう誰かにファイトを吹っ掛けたのか!?すいませんダルシムさん!これで俺も失礼します!送っていただいて本当にありがとうございました!インドに来ることがあれば、また寄らせていただきます!それでは!」
「うむ。達者でな。......ヨーガ」
そうして案の定さっそくファイトを挑んで一騒動起こしていたサクラと合流するために、俺はダルシムにあわただしく別れを告げると、騒ぎの中心へと駆け出したのだった。ダルシムの言葉に不思議なほどに揺れる心を誤魔化すかのように。
───そうして、ダルシムとの遭遇という色々な意味で印象に残ったインドへの旅が終わってから数日後。日本に帰った俺に、知っている番号からの、
───それが、
『君が日向涼......アルトリウス君だね。───落ち着いて聞いてほしい。ナッシュは......ナッシュ中尉は、MIA(作戦行動中行方不明)になったんだ』
嗚呼、心が折れそうだ。
── 時を少し戻して、インドのとある街はずれ ──
アルがサクラを追って走り去ってしばらくして、いまだダルシムは静かにそこに佇んでいた。
「───いつまでそこに隠れておられるつもりですかな?」
「......にょほっ!なんじゃい、やっぱり気づいとったのかお主」
不意に、ダルシムは誰もいないはずの背後へと声をかける。すると、すぐ近くの樹から人間ほどの大きさの蓑虫のようにも見える何かがまるで
「それで?あの二人との手合わせの時からわざわざここまでついてきたのです。いったい何用ですか?」
「なんじゃいなんじゃい久しぶりじゃというに風情のない奴じゃのぉ~。なに、ちいっとばかし
「ムゥ......それで、貴方から視て彼らはどうでしたか」
ダルシムからの問いかけに、弟子候補の勧誘が上手くいかないからと、気分転換の為にわざわざインドまできたと答える蓑虫のような何か。無意味にプラプラと揺れてみたり、ちょっと上下に浮いたり沈んだりしているのが何気にウザいが、ダルシムは気にした様子もなく蓑虫のような何かに再び問いかけた。あの二人、アルとサクラがその蓑虫のような何か───『仙術の怪老 オロ』の目にどう映ったのかを。
「うむ。女の子の方はええのう!才能もバッチシじゃし、ありゃあ将来別嬪になるぞい!磨けば磨くほど光るタイプじゃろうな!まあ、今はアヤツ───リュウがおるでな。いくらなんでも未熟過ぎじゃて弟子にとる気はおきんがの。もうちょっと落ち着いてきたら考えてもええがの。どちらかいうとワシは年上がタイプじゃし?」
「貴方の女性の好みはどうでもよろしい」
この仙人、オロの素性を考えればその評価は非常に高評価といえるものであった。ダルシムは冷静にツッコミをいれつつ流したが、世の格闘家のその殆どに『駄目駄目』の評価を下す人物である。春日野さくらの秘めた才能の凄まじさが改めて確認された瞬間である。美人がどうとかの下りはわかりにくいが仙人流のジョークであるらしい。バッサリ切られたが。
「話の腰を折るでないわい。それでもう一人の男の娘の方じゃが......才能はあんまりないのぉ......
「......やはり貴方にも視えましたか」
「視えぬわけがなかろうて。まあ、さすがのワシでもちょいとばかしたまげたがの。いやはや、まさか
「...ヨーガ」
才能はあんまりないと少しばかり残念な評価を下された少年であるが、はたして何年生きているのかもわからない仙人から『変ってる』認定されてしまった。本人が知れば『お前が言うな』とツッコんでから大いに嘆いたことであろう。
「まあ、なんにせよオヌシもわかっておるのじゃろう?すべては
「......彼、いや、彼等ならば、きっと」
少年へと迫る、大いなる厄災の予兆。しかし、ダルシムは自身へとその拳を届かせた彼に希望を見出だし───少しだけ空を見上げると静かに眼を閉じるのだった。
~ おまけのミニコーナー ~
勝手に勝利セリフ
VS高嶺清麿&ガッシュ・ベル
(出典:金色のガッシュ!!)
敗北時
「ウ、ウヌ!あ、あぶなかったのだ!まさか魔物ではなく自分をつよくする術をつかうとは!まるでウォンレイのようなみのこなしであったのだ!それにフォルゴレみたいに不死身だったのだ!...それにしても魔物はどこにいるのだ?む?どうしたのだ清麿?」
「お、おいガッシュ。この女の子、もしや王を決める戦いの参加者じゃないんじゃないか?何処にも魔本が見当たらないんだが」
「な!?そ、それはマズいのだ清麿!?われわれその人に術を何度もぶちこんでしまったのだ!!やさしい王様になるどころかそれでは悪者になってしまうのだ!!」
「と、とにかく今すぐ救急車、いや恵さんとティオを呼んで治療を...って普通に起き上がった!?え?『お気になさらず』っておい!ちょっと待てよっ!!...は、走ってどっか行っちまいやがった」
「な、なんであったのだ?いったい?」
勝利時
「電撃って喰らうとこんな感じなんですね。え?本をめぐる戦い?魔物の子?何のことです?...ああ、謝らないでください!別に気にしないでも大丈夫ですよ!...これから先、電撃を喰らう可能性が高いのでいい経験になりましたし!それでは失礼しますね!...『やさしい王様』になれるといいね!」
~こぼれ話~
・今のサクラとダルシムの相性が悪い。
サクラのように真っ直ぐな闘い方で倒すにはダルシムの格闘スタイルは鬼門。実力と経験の差で『遠距離型』の恐ろしい所にもろに嵌ってしまった。
・(ジョジョ式)ズームパンチ
前世からジョジョが好きだったアルが、ほとんど趣味で再現、修得した技。おそらくゲームだと特殊技扱い。確かにリーチは伸びるが、本家のズームパンチ程ではない。威力も通常攻撃と変わらない程度。むしろ、波動を纏っているはずなのに少し威力は落ちている。ちなみに関節を外した痛みを波動で和らげる!とか言っているが、波動にはそういった効果はあまりないので、実は普通に痛い。要するに我慢しているだけ。趣味で覚えた技なので正直実用性は非常に微妙。
おまけのミニコーナーにリクエストあれば活動報告の所にお願いいたします。
さて、次回はちょっとシリアス(?)になるかもしれません。導入になるのでそこまででないとは思いますが、苦手な方はお気をつけ下さい。
あ!次回もちゃんと原作キャラがでますよ!本当です!
......インディアン嘘つかない。
「ホゥ!!」